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ぶつかる〔本科第7回課題〕

もう年の瀬ですね。
今年のはじめにシナリオチャレンジを始めて、もうすぐ1年が経とうとしています。
これが今年の19本目です。
来年は何本書けるのでしょうか?そろそろ目標も立てたいなと思いつつ。

最近の課題は、主人公が周りに翻弄され、コロコロと転がるようにお話が進んで行っている気がしたので、今回は主人公の望み・目標を作ろうと思ってお話を考えてみました。
そもそもドラマというと、主人公が目的を達する経緯を描くものだそうなので、本当はこうやって構成を考えないといけないのですが。
目標と、それを妨害するものをぶつけて、話の流れを変える。
このポイントをもうちょっと掘り下げていきたいです。

もう一つ、最近「話の奥行き」という言葉を考えていて、画面に出現しない大事な設定がその奥行きを形作るのではないかな、と。
今回はじいちゃんの話を入れています。


第7回の課題はススキ
秋の風物詩的植物ですが、秋じゃなくても成立してしまいそうな使い方をしてしまいました。
だけどススキらしさはきっと生かされている…はず。
今回で小道具課題はひとまず、おしまいです。
次回から3回分(前期終了まで)は場所の課題になります。


添削前のシナリオを全文掲載をしていますが、掲載している全ての作品において著作権は放棄していません。
引用される場合は引用元を明記(こちらのページ、もしくはツイッターなど)してください。
「映像化したい」と思われた方(ありがとうございます)はご連絡ください。


秋寂ぶや

人物
鈴木賢人(32)元会社員
ルイス(28)フランス人
鈴木春子(62)鈴木の母
足立圭介(32)鈴木の旧友
前川彩子(29)足立の恋人
居酒屋店主


○ビル・共有トイレ・個室内
清掃の行き届いたトイレ。
スーツ姿で跪き便器に吐いている鈴木賢人(32)。呼吸がどんどん荒くなる。

○駅・表(夕方)
片田舎の無人駅。
スーツケースを持った鈴木が出てくる。
駅前に白い軽トラックが止まっている。
軽トラの横にかっぽう着姿の鈴木春子(62)が立っている。
鈴木、立ち止まり春子を見る。
春子「おかえり」
春子は運転席に乗り込む。
鈴木、スーツケースを荷台に乗せ、助手席に乗り込む。

○軽トラ・車内(夕方)
走行中の軽トラ。運転席に春子、助手席の鈴木は窓の外を見ている。
ラジオから交通情報が流れている。
春子「前帰ってきたんはばあちゃんのお葬式やったな」
鈴木、無反応。
春子「駅前のじいちゃんの駐車場、貸しとるとこ。ススキが伸び放題なんよ」
春子、鈴木を一瞥して
春子「明日刈ってきてや」
鈴木「はあ?なんで俺が」
春子「ばあちゃんがススキ好きやったやろ。じいちゃんが見とると辛いで抜こう言うて。父ちゃん腰まだ治っとらんし、あんたどうせ工場手伝わんで暇やろ」
鈴木、大きくため息をつく。
鈴木「…はいはい」
鈴木、また窓の外を見る。

○駐車場
白い軽トラ1台を含め、自動車が数台並んでいる。脇にススキがたくさん生えている。
しゃがみこんでススキを抜いている鈴木。
鈴木の横には抜かれた束のススキ。
鈴木「これ今日1日で終わんねーよ」
駐車場の前をルイス(28)が横切る。
ルイスはカメラを首から下げている。
ルイス「だめだよ!」
ルイス、鈴木に駆け寄る。
ルイス「ぬいちゃダメ!」
鈴木「は?」
ルイス「スズキ!」
鈴木「はあ?」
ルイスが、ススキを指さす。
ルイス「スズキだめ」
鈴木「ススキだよ」
ルイス「だめって言ってる」
鈴木、不機嫌そうに立ち上がる。
鈴木「あのねえ、ここウチの土地なの。どうしようとうちの勝手。お前誰だよ」
ルイス「やくそくした」
鈴木「意味わかんねえ。しつこいよお前」
鈴木、抜いたススキの束を軽トラの荷台に投げ込み、運転席に乗る。

○軽トラ・車内
鈴木、エンジンをかけ、軽トラを駐車場から出す。
サイドミラーに映る不満そうなルイス。そのまま車を進めていく。

○コンビニ・表(夜)
コンビニの前に軽トラが停まっている。
鈴木がコンビニから出てくる。
道の反対側にある居酒屋からルイスがビールケースを持って出てくる。
ルイス、積んであるビールケースの整理を始める。
店主の声「おい、これも!まだ運んでなかったのかよ」
ルイス、店内に向かって
ルイス「すみません、ただいま!」
店主の声「返事だけだよな、ほんとお前は」
ルイス、額の汗を拭い、ビールケースを運ぶ。
鈴木、ルイスを見ている。

○駐車場
停めた軽トラの運転席に座っている鈴木。
カメラを持ったルイスが歩いてくる。
ルイス、ススキの近くに座り、カメラを構える。
鈴木、運転席から降りる。
鈴木「おい」
ルイス、鈴木の方を見る。
鈴木「約束って何」
ルイス「しゃしんとるってやくそくした」
ルイス、ススキの写真を撮る。
鈴木「じゃあ写真撮ったら抜いていい?」
ルイス「だめ。おばあさんにあげないと」
鈴木「いつあげんの」
ルイス「わからん。夏はここでまいにちあってたのに2か月まえからあわなくなった」
鈴木、ため息をつく。
鈴木「それ、たぶんうちのばあちゃんだよ。2か月前にしんじゃったよ」
ルイス「え…?」
鈴木「ばあちゃんが好きだったススキ見るとじいちゃんが泣くから抜いちゃうの。全部」
ススキを見つめるルイス。
ルイス「…かえる」
トボトボと歩いていくルイス。
鈴木、ため息をつき、しゃがむ。
ススキを抜きかけた手を止め、ススキを見つめる。

○鈴木家・表(夕方)
鈴木が軽トラからススキの束を下している。
鈴木、ススキを一本手に取る。
道を走っていた軽トラが止まる。
足立圭介(32)と前川彩子(29)が乗っている。
足立「あれ、鈴木じゃん。久しぶり」
鈴木「おー、足立」
足立、彩子を指さしながら
足立「あ、これ彼女。今度結婚するんやあ。おまえ何してんの?おっきな会社就職した言うてたやろ。クビんなってへんやろうな」
足立、笑う。
鈴木、視線を落とす。
彩子「圭介!6時までに帰るて言うたやん。(鈴木に)すんません」
足立「あ、せやった。じゃまた同窓会しよな」
去っていく軽トラ。
春子が家から出てくる。
春子「誰か来とったん?」
鈴木「あー、足立」
春子「足立くんかあ。今度お嫁さんもらうらしいなあ」
春子、家の中に戻ろうとする。
鈴木「なあ、ススキ、全部抜かないかん?」
春子「なして?」
鈴木「ばあちゃん好きだったんやったら、少し残しといてもええかな思って」
春子「そうやねえ…じいちゃんが全部抜けて言ったけん全部と思ったけど、賢人がそう言うならじいちゃんも納得するかもね。…あ、お鍋」
春子、家の中に戻る。
鈴木、手の中ススキを見つめる。

○コンビニ・表(夜)
コンビニの前に軽トラが停まっている。
鈴木、コンビニから出てきて運転席に乗り込む。
缶コーヒーを開けながら、道を挟んだ反対側の居酒屋を見ている。
居酒屋からルイスがビールケースを持って小走りで出てくる。
ケースの中身を整理し、新しいケースを持ってまた店内へ入っていく。
軽トラのエンジンをかける鈴木。

○駐車場
ススキの横に座っている鈴木。
ルイスがやって来る。鈴木の横に座り、封筒を出す。
ルイス「これ、やくそく」
鈴木、封筒を受け取り、開ける。
老女がススキを見ながら笑っている写真が数枚、段々と黄金色に変化するススキの写真が数十枚入っている。
ルイス「ぼくもすきだ。けどおじいさんかなしいなら、もうとめない」
鈴木、写真を見ながら
鈴木「もう抜かないことにしたよ」
ルイス「え?」
鈴木「ほとんど抜いちゃったけど、おまえの言うこと一理あるなって。なんでばあちゃんが好きやったんに全部抜いちゃうんかなって」
ルイス「うん。それがいい。それがいいよ」
ススキを見て微笑む鈴木。

○鈴木家・居間(夕方)
こたつに入って座っている鈴木。
台所で夕飯の支度をしている春子。
鈴木「母さん」
春子「うん?」
鈴木「明日から工場手伝い行くわ」
春子、手を止める。
春子「急がんでええんよ」
鈴木「うん、大丈夫」
春子「そう、父ちゃんに言うとくわ」
鈴木「うん」

○鈴木家・仏間(朝)
仏壇のお鈴の音。
鈴木が部屋を出て行く。
仏壇にはススキが1本と黄金色のススキの写真がお供えされている。


おしまい

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