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店主のひとりごと #02

このnoteは、新潟県上越市にある「たてよこ書店」という小さな書店の店主によるnoteです。『たてよこのあれこれ』と『店主のひとりごと』という2つのマガジンを更新しているのですが、『店主のひとりごと』では、店主の日常やまちのこと、読んだ本や見た風景などを記録していきます。
『たてよこのあれこれ』はこちらから。


お店を始めてから9ヶ月が経ちました。2022年12月にオープンしてからあっという間にもう9月。早いものですね。
明確なオープン日を決めていない中での開店準備中の取材でうっかり「12月にオープンさせます。」と言ってしまったばっかりに、ありあわせの棚に少しの古本を並べて、バタバタとオープンとも言い切れないオープンを迎えた12月。ポツポツとお客さんが来るようになり、古本の売り上げから少しずつ新刊も仕入れ始めています。

お店を始めて9ヶ月と言っても、店主が東京と新潟の二拠点生活で、書店を開けるのは毎月上旬の10日間程度。数えたところ、これまでの総営業日数は76日でした。まだ2ヶ月ほどしか営業していないんですね。

最初はどこか怪しげに思っていただろうご近所さんも、少しずつご理解いただいているようで、毎月新潟に行くと「あぁ今日からお店開くのね。お帰りなさい。」と言ってくれるようになり、10日間ほど営業して東京に帰る頃には「じゃあ気をつけてね。いってらっしゃい。」と言ってくれるようになりました。昨日なんて、近所で開催されたお祭りに行っていた向かいの家の方が、「お店開けてると遊びに行けないでしょう」ということで出店のご飯を買ってきてくれたんです。嬉しいですよね。

僕には漁師をやっている友人がいます。市場や飲食店を回っても引取り手がおらず、行き先のない魚をたまに譲っていただくんです。数日前も例に違わずたくさんの魚をもらいました。これは僕の家だけでは食べきれないということで、魚が入った発泡スチロールを抱えてご近所さんにお裾分けに回りました。朝に獲れたばかりの新鮮な魚に皆さんとても喜んでくださり、思い思いに好きな魚(アジやイカ、エイのヒレやカレイなど)を手に取っていきます。お礼にコーヒーや車麩をもらったりして、なんだかお裾分けをしている僕も嬉しくなりました。近所のお酒が飲めるお店には、魚に加えてお礼にもらった車麩もプレゼントしました。

夏の雁木通りには、風鈴が設置されます。僕はそれを知らず、新潟に来たら周りの皆さんが軒先に風鈴をぶら下げているのを見てびっくり。急いでホームセンターに走りました。
お店の前は日中こそ車の往来が多いのですが、夜になるとひっそりと静かになります。そこに風鈴の音が響き渡るのです。想像しただけでもいい情景ですよね。9月になったら皆さん撤収したようだったので、お店の前の風鈴も片付け。また来年が楽しみです。

そんなこんなで、書店の売り上げは未だ安定せず、増減の激しい日々が続きますが、やるべきことを粛々と実行していくのみ。背伸びすることなく、地道に事業を進めていく強さを大切にしたい今日この頃です。
雁木通り周辺でも空き家の増加だとか、人口の流出だとか、少子高齢化だとか、様々な社会課題が叫ばれる昨今ですが、誤解を恐れずに言うとそういうものを解決したいとはあまり思ってはいません。まだまだそんな力がないことも事実です。
何気ない日常を大切にし、それをちょっと豊かに、ちょっとおもしろく、ちょっと楽しく、ちょっと幸せにするような取り組みを続けていけば、結果的に先に述べた社会課題と言われるようなものが解決されているんじゃないかな、と思っています。書店も然り、これから展開していく事業もそういうことを大切にしていきます。
甘いこと言ってんじゃないよと思われた方もいるかもしれませんね。でも現時点で僕は本気でそう思っているし、その思いをカタチにしていきます。

そういえば、魚と一緒に持って行ったお裾分けの車麩は、数日後にお通しとして提供されているのをSNSで見かけました。そして偶然にも、隣町にいる高校の同級生がその日にそのお店に行ったようです。

車麩、美味しく食べてくれたかな。

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