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コロナ下のリモートワークのマネジメント【第36回マスクの向こう側】

<まえがき>コロナ以後、在宅でのリモートワークへと切り替える会社が増えつつあります。その評価については、プレイヤーから賛否両論聞こえていますが、今回はリモートワークの実務を管理する「管理職」の方にお話をお聞きしました。リモートワークのマネジメントってどうなんでしょうか。

●リモートのマネジメントは、ここが大変!
●今の新卒はいわゆる「何世代」でしょうか?
●お世話になってるけど……zoomのここが嫌!

―自己紹介をお願いします。
広告制作会社で管理職をしています。部署の人員は20名程度。20代、30代が中心で、平均年齢は30歳くらい。若い人が多いですね。

―どんな広告を制作しているんですか。
企画からデザインまで。グラフィックからWebまで。スチールから映像編集まで。クライアントの業種にも縛りがなく、頼まれれば幅広く手掛けています。予算・納期も様々で、短いもので今日の明日という場合もあります。正直、“便利屋”みたいなところもあると思います。

―コロナ前後の動きや、変化について教えてください。

クライアントの大半を、結婚式場や商業施設、旅行代理店など接客・サービス業が占めます。4、5月はクライアントの多くが休業に入ったため、それに合わせて休業していました。6月からは、リモートで業務を再開しています。まだ客足が戻らず苦戦が続いているクライアントが多いですが、その分、コロナ後の“新しい生活様式”に対応した新しいプロモーション企画を求められることが多くなりました。顕著に増加しているのが動画配信です。たとえば、「これまでリアルで開催していたセミナーをオンラインで生配信したいので、その企画・運営をお願いしたい」などの依頼にも対応しています。

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―リモートワークのマネジメントというのは、オフィスワークのマネジメントと比較して、難しいですか。
現在、メンバーは自宅で作業しながら、必要に応じて、チャットツールを使って連絡を取り合っています。オフィスで働いていた時に比べると、気を使うことが多くなりましたね。たとえば、メンバーが作ったものに対して「ここはこうした方がいい」と直しを入れるとして、オフィスであれば相手の表情や仕草がリアルタイムで見えるので、冗談交じりで言ったり、大げさに伝えてみたり、その都度、言い方や表現を変えることができます。でも、リモートはそういうわけにもいきません。送られてきたデータをモニターで見て、時間を置いて、直しを伝えることになります。相手の表情や反応が分からない中で「どういう言い方をしたら伝わるか」「相手のやる気を損なわないか」考えないといけないので、すごく気を使います。チャットはどうしても長文になってしまうし、電話やオンラインでも、探り探りになってしまいます。

―メンバーの皆さんは、どうなんでしょうか。やりやすいのか、やりにくいのか。
オフィスにいる時は、冗談を言い合ったり、雑談をしたり、適度にガス抜きできますが、リモートはそういう訳にはいきません。そういう意味では、ストレスを抱えていることも多いと思います。オンラインでも、もう少しくだけた雰囲気で絡めるといいのですが、なかなか、そうもいかなくて…。たとえば、zoomの場合、参加者に応じて画面が均等分割されますよね。一定数を超えると、表情がよく見えないんですよ。僕みたいに、人の顔色を伺ったり、空気を読みながら話す人間にとっては、どうもやりにくいですね。できれば、メンバーにはもっと大げさにアクションしてほしいって言ってます。アメリカ人並みに、肩をすくめたり、頭を賭けたり(笑)。
あと、zoomって、発言すると自分の画面が青く光るじゃないですか。あれが曲者で、青い枠がついている間は喋らないといけない気分になるし、他の人はそれを見て、様子を伺ってしまいます。青枠以外の人が話すと音割れするし、何か発言して、青い枠が自分のところにくると嫌だから、みんな相槌も打たなくなるわけです。結果として、あまり会話が弾まなくなる(笑)。あの青枠やめてほしいですね。

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―マネジメントする上で、心がけていることはありますか。
二つあります。一つはチームビルディングです。たとえば、自分が直接メンバーと接するのではなく、できるだけ間に課長を挟むようにしています。メンバーが20人いると、細かいところまで見ていたらきりがありませんし、それに、私が絡まない方が、課長もメンバーをまとめやすいでしょうし。メンバーには不平・不満があれば、必ず課長を通すようにと言っています。課長にも「君達に任せる」と言って全面的に頼っています。「君達がいないと、俺は上手くやっていく自信がない」って(笑)。これは私のモットーですが、一番上に立つ人間が必ずしも一番優秀である必要はないんですよね。むしろ、リーダーは完璧じゃない方が、チーム全体のパフォーマンスもモチベーションも上がるような気がします。実際、僕が上に立つようになってから、うちの部署、右肩上がりで業績がいいですし、どこの部署より離職率が低いんですよ。

もう一つ心がけているのは、若い世代との接し方です。パワハラ、モラハラ、セクハラ…問題行動は慎むのはもちろん、プライベートに関しても、あまり突っ込まないように気を使っています。何せゆとり世代、ミレニアル世代ときて、一番若いメンバーは「Z世代」と言われている世代ですから。SNSの利用法や今何が流行っているかなど、頼りにする部分もありますが、笑顔で「分かりました」と言っていても「SNSで何か言ってるんじゃないかな…」と怖くなることもあります(笑)。恋人とか、趣味とか、彼らが話すのを聞くことはあっても、自分からは一切聞きません。もちろん、仕事上、叱るべき時にはきちんと叱りますよ。でも、何を言うかより、今の時代は、どういうトーンで言うか、言い方の方が大事だと思います。できるだけきつい言い方にならないように心がけています。

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―管理職として、今、一番課題だと思うことを教えてください。
勤務格差ですね。業務を再開したと言っても、元の通りになっているわけではありません。仕事をしている人としていない人が、はっきりと分かれており、勤務格差が生まれてしまっています。たとえば、営業はそれほど忙しくありません。コロナの影響もあり、クライアントのもとに足を運ぶことができないからです。動きが封じられた営業がどうするかと言うと、受注するためにこれまで以上に私達クリエイティブを頼るようになります。「クライアントに何か新しい企画を提案したいので、作ってほしい」と。おかげさまで、今はとても忙しい状態です。

また、うちの会社は比較的に女性に優しい環境ということもあり、産休明けの女性の復職率はほぼ100%を誇ります。うちの部署にも多くのママさんスタッフが働いています。しかし、在宅でのリモートワークとなると、子供が家の中にいる状況では、なかなか思うように働けません。その分、他のスタッフに業務が偏ってしまっています。「同じ給料なのにどうして自分だけこんなに働かせられるんだ」と不平・不満を持ってしまう人もいるようです。
でも、困った時はお互い様です。安易に仕事をしていない人の給与を減らしたり、待遇に格差をつけたりして、無理矢理解決することもできますが、できればそういうやり方はとりたくありません。いつか来た道、いつか来る道。せっかく組織で取り組んでいるわけですから、一時の格差に左右されず、メンバーには各々違いを認め合って、助け合って働いていってほしいと思います。(Yさん/管理職)

コロナ前後で大きく世界は変わると思います。1年後、5年後、10年後、「あの時、何があったのか」をしっかり振り返ることができるように書き残していきたいと考えています。フォローしてもらえるとすごく嬉しいです。twitterもやっています。

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