見出し画像

ファレリ・アウレリアさん(60回優勝) インタビュー Vol.4−1

 動画審査を勝ち抜いた出演者がパフォーマンスを行い、観客の審査によって優勝者が決まるコンペティション形式のミュージカルオーディションショー、スマッシュキャバレー。

 2022年11月25日夜に行われた第60回大会では、ミュージカルの1場面を再現したような歌唱から、フリップを駆使し、R-1グランプリさながらに会場を笑いの渦に巻き込む異色のパフォーマンスまで、正に八人八色のステージが展開された。
 今回はそんな中、本年6月の第56回につづき2度目の優勝に輝いたファレリ・アウレリアさんに再びお話を伺うことができた。

今回はその前編をお届けする。(後編はこちら

ファレリ・アウレリア Valerie Aurelia

インドネシアのジャカルタ出身。小さい頃からディズニー作品が大好きで、高校生の時にミュージカルに出会った。2019年に国費留学生制度で来日し、日本語学校を卒業後、専門学校でイラストを学ぶ。現在は桜美林大学でデザインを専攻しながら、音楽の勉強もしている。母国にはミュージカルの舞台があまりなかったため、日本に来て初めてミュージカルを生で観劇し、さらに本格的な音楽学習を始めた。


1 マインドセットが変わったなと思いました

本番に対する意識の変化

 前回の優勝後のインタビューでは、感激で息を弾ませながらインタビューに答えて下さったファレリさん。2度目の優勝となった今回は、初優勝の時とは異なる複雑な思いもあったという。

「優勝して嬉しかったというところもあったんですけど、私が優勝しなかったらグランプリに進めた人もいるので、ちょっと申し訳ない気持ちもありました」

喜びと戸惑いが入り混じった表情を浮かべる様子から、彼女がもつ謙虚な人間性が垣間見えた気がした。一方で、本番に対する意識も前回から大きく変化したようだ。

「前回は3回目(の出演)でやっと優勝したので、“やったー!”という気持ちがあったんですけど、今回はあまり期待していなくて。でも、“優勝したい”とそんなに考えていなかったからこそ集中できた。自分のベストを尽くしたいという気持ちの方が強かったので、マインドセットが変わったなと思いました。
結果発表の前にも、“いい歌を届けたな”と感じて、“結果はどうなっても大丈夫”みたいな気持ちになりました」

 優勝という目標を持って挑んだ前回。そして、結果そのものよりも、ベストパフォーマンスを届けるという表現者の真髄ともいえる意識を持って臨んだ今回。同じ優勝という結果でも、彼女にとって、その意味合いは異なるものであるのかもしれない。


2 マザーゴーテルは現実にいないからこそ自由度が高い役

初のヴィランズ役のナンバーで迫力ある歌声を響かせるファレリ・アウレリアさん。

 今回、準決勝でファレリさんが挑戦したのは、『塔の上のラプンツェル』のマザー・ゴーテルが歌う「Mother knows the best」だ。これまでスマッシュキャバレーでプリンセスの曲を数多く歌ってきた彼女だが、なんと、ヴィランズ(ディズニー作品における敵役・悪役)の曲は今回が初挑戦だったそう。そこで、4回目の出演にして新境地を開拓した感想を伺ってみた。

「ヴィランズはやっぱり楽しかったですね。たとえば、エヴァン・ハンセン(決勝曲の役名)だと現実に近いキャラクターになっているので、演技を想像することがなかなか難しい。
でも、マザー・ゴーテルだと、魔法使いは現実にはいないので想像力を使って。現実にいないからこそ自由度が高い役だと思ったので、意外に最初から入りやすかったです。2曲目(決勝)と比べるとやりやすかった気がしました」


3 ヴィランズを歌うにあたってのこだわり

 そして、これまで多く歌ってきたプリンセス役との一番の違いについて尋ねると、「表情」という回答が返ってきた。

「プリンセスだとすごいキラキラの笑顔が多いんですけど、ヴィランズだとシリアスな顔をしていると思います。私、緊張している時は笑っちゃうので、緊張していても(笑顔が)出ないように・・・それが一番違うところでした」

 また、役作りの中で特に工夫したのは「声」だという。

「動画や映画を観たりして、“声をどうやってヴィランズっぽく濃くするか”みたいなことを意識しました。この間、初めて「Into the Woods」のオリジナルキャストの映像を観たんですけど、魔法使いのキャラクターもいるので、それも観てちょっと比べたりして。
皮肉な声にしたかったんですよ。(歌詞自体の)意味は別に悪くなくても、トーンとかイントネーションで、(ニュアンスは)実は逆で・・・みたいな」

 単に何かを真似るのではなく、明確なイメージを持ち、そこに近づくために研究を重ねるところにも表現者としての彼女なりのこだわりが感じられた。

★インタビュー後編(スマッシュキャバレー編Vol.4-2)はこちら♪


文章・企画構成:Tateko
協力:SMASH CABARET https://smashcabaret.com/
   中目黒TRY

※記事、写真の無断転載はご遠慮ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?