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ヴィクトリア・クレアさん(第72回優勝) インタビューVol.13

 動画審査を勝ち抜いた出演者がステージに立ち、観客審査によって優勝者が決まるミュージカルオーディションショー、スマッシュキャバレー。
 2023年12月21日。年内最後のショーは大盛況の熱気あふれるステージとなった。今回はそんな第72回スマッシュキャバレーで優勝に輝いたヴィクトリア・クレアさんにお話を伺った。

◾️Victoria Clare(ヴィクトリア・クレア)

アメリカのメリーランド州出身。2021年夏に来日し、現在は福生市在住。日米で数々のミュージカルに出演。インプログループImprovazillaに所属。
舞台は自分の人生であり、舞台そのものが人生だとも思っている。
・主な出演作 【日本】『I Love You You're Perfect Now Change』(東京インターナショナルプレイヤーズ)。【アメリカ】『Legally Blonde』(ワシントンDC地域初演)エニッド・フープス役、ポーレット役(アンダースタディ)。



1 舞台に立って良い演技をお見せしたいという思い

― 優勝おめでとうございます!

「ありがとうございます。Thank you!」

- 優勝者として名前を呼ばれた瞬間のお気持ちはいかがでしたか?

「友人と夫から、“舞台に上がって!”と言われるまで、ずっと信じられなかったです!とても驚きました」

 出演にあたっては、「勝ちたいという気持ちではなく、舞台に立って、とにかく良い演技を皆さんにお見せしたいという思いがありました」と語るヴィクトリアさん。今回の応募のきっかけは友人の勧めだったという。

「実は先月、多才な方々が集まる東京インターナショナルプレイヤーズ(※)という劇団のミュージカル公演に出たんですが、そこで出逢った友人に勧められたんです」

優勝者発表時のヴィクトリアさん。

 ミュージカル出演を通じて芽生えた演じることへの貪欲な姿勢が、新たなパフォーマンスの機会と、優勝という最高の結果を引き寄せる原動力となっていたのかもしれない。

※註:ミュージカルをはじめ、多くのエンターテインメントを提供する在日の外国人コミュニティで構成された劇団。1896年設立。過去にも多くの出演者が、スマッシュキャバレーに参加している。
【参考ホームページ】https://www.tokyoplayers.org/about (2024/2/5参照)


2 エモーショナルな準決勝でのパフォーマンス

 準決勝から、その煌びやかな出で立ちに負けずとも劣らない存在感と豊かな声量で場内を包み込んだヴィクトリアさん。

準決勝では、ヒロインが歌うナンバーを感情豊かに歌い上げた。

 そんな彼女が披露した1曲目は、朗らかで優しかった夫が急によそよそしくなってしまったことへの戸惑いと切なさを吐露するナンバー。感情に沿って大胆にテンポを揺らし、ラストはたっぷりと間を取って込み上げる思いを表現するなど、情感溢れる演技で強い印象を残した。

― 準決勝はとてもエモーショナルに歌ってらっしゃる印象でしたが、どのような心持ちで臨まれましたか?

「まずは深呼吸してから、客席の中に思い伝えたい人を設定しました。そして、歌詞を口ずさむことで、自分がどんな気持ちになるのかをしっかりと感じて、その気持ちに集中して表現していきました」

 パフォーマンス前のMCで、この曲への思い入れを熱く語っていた彼女。聴き覚えのイメージをなぞるのではなく、あくまでも自らの感情をベースに、劇中の1シーンのようなドラマティックなステージを展開し、一気に観客を曲の世界に没入させた。


3 呼吸とストーリー、そしてテクニックへの意識

 一方、決勝で選んだのはコメディーソング。準決勝とのコントラストを考えて選曲したそうだ。

― 決勝では、準決勝とは全く色が異なる曲を歌われていましたが、何か意識されていたことはありますか?

「歌う前、MCの方に曲の説明をする時は少し慌ててしまったのですが、やはり深呼吸をして、自分の呼吸とストーリーに集中できるように努めました」

 また、豊かな高音を響かせ、ミュージカルナンバーならではの醍醐味を感じさせたラスト部分では、テクニック的な面も意識したという。

「裏声で高音をきちんと出すために必要なのは、口を大きく開けること。でも、緊張すると開けづらくなるので、本番では口の形にも気をつけながら歌っていました」

 準決勝と決勝で曲のジャンルは異なれど、両曲共に、ミュージカルナンバーを表現する際のベースとなる自らの感情と技術の基本に忠実に演じ抜いたヴィクトリアさん。

 本番には緊張や予期せぬハプニングがつきものだ。しかし、何があろうと、自らのベースに立ち返る意識を持つことで、地に足のついたパフォーマンスを届けることができる。ヴィクトリアさんのお話からは、彼女の揺るがない意思を窺うことができたように思う。


4 パフォーマンスは筋肉と同じ

これからも舞台に出て成長していきたい

パフォーマンス前のトーク中の1コマ(左はMCの西岡舞さん)。

― 優勝者発表の時、他の出演者の方々に感謝の気持ちを伝えていらっしゃいましたが、日本のアーティストの方々と共演されてみて、いかがでしたか?

「はじめは緊張もあって、とても怖かったのですが、同時に、私と同じように歌や演技が好きな皆さんと仲良くなりたいという思いがあったので、今回、出演できて本当に良かったです」

― 最後に将来の夢や展望などあれば、お聞かせください。

「パフォーマンスは筋肉と同じで、トレーニングをしないと衰えて出来なくなってしまうもの。だから、鍛えるために舞台に立ちたいんです。これからも舞台に出て成長していきたいので、一生、パフォーマンスを続けていきたいです!」

ー どうもありがとうございました!

 100回の練習より1回の本番とよく言われるように、高揚と緊張、そして観客との一体感があいまった生の舞台でこそ味わえる感覚、得られる経験というものは確実に存在するように思う。

 ミュージカルを通じてパフォーマンスのチャンスを次々に掴み、初出演にして見事優勝を手にしたヴィクトリアさん。その果敢な精神と本番に臨む真摯な姿勢で、今度はどんな扉を開いていくのだろうか。今後の彼女の活動の広がりや、パフォーマンスの進化に期待は高まるばかりだ。

(Tateko)


企画構成・編集:Tateko
写真:中山駿
通訳・翻訳協力:Joan Chen

協力:SMASH CABARET https://smashcabaret.com/
   中目黒TRY

※記事、写真の無断転載はご遠慮ください。

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