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野球少年を襲う病魔〜痛くない野球肘がある?part5〜

前回に引き続き上腕骨小頭部離断性骨軟骨炎についてお伝えしたいと思います。今回は分離期後期の病態・症状についてです。part1からお読み頂き、次に進まれると理解しやすいかと思います。

※離断性骨軟骨炎は疾病です!病院で経過をしっかり診てもらいましょう!(整骨院の先生やトレーナーの方々は、発見、疑いある選手がいた場合、病院と連携をとり対応しなければなりません。スポーツ障害ではなく、疾病ということを理解してください。)また、医師でも見解が異なりますので、より野球肘に詳しい医療機関を受診されるのが望ましいです。

症状・病態〜3つの期分け〜
透亮期(外側期・中央期)
分離期(前期後期
遊離期(病巣内期・病巣外期)

遊離期(病巣内・外)
遊離期は14歳前後に多くなります。この期になると母床との連続性はなくなり、母床から離れた組織は関節遊離体と呼ばれ、手術で遊離体を取り除かなければなりません。特に症状がない場合は経過観察する例もある様ですが、野球少年の場合、多くは手術が選択されます。遊離体の別名は関節ネズミとも呼ばれます。関節ネズミという名前は知っている指導者、保護者の方はいらっしゃるのではないでしょうか。※関節ネズミになるものは離断性骨軟骨炎だけではなく様々あります。
投球や打撃を継続してきた場合や運動を中止しても病巣部の状態が良くない場合はそれなりの治療が必要になります。競技復帰を目指すために遊離体の除去だけではなく、自分の膝や肋骨などから骨軟骨片をいくつか採取し病巣部へ移植したり、骨に穴を開けたり、ダメージを与えるなどの再生を促す治療が必要になります。
※次回こちらをお伝えできればと思っております。
遊離体(ネズミ)は関節の間に挟まると正常な関節軟骨、滑膜ひだ、脂肪体など関節内組織を傷付けます。そうすると、関節炎、関節水腫、ロッキング、可動域制限などがでてきます。最終的に、関節は変形し、顔を両手で洗えない、髪の毛が上手く洗えない、歯磨きが上手く磨けないなどなど、日頃の生活ですら支障をきたす様になります。
筆者がみてきた野球少年の中には、遊離期になっても近隣の整形外科や整骨院で「治ります」と言われ何ヶ月も悩んでいた選手もいます。そもそも、発見されないケースも多々あります。野球肘に詳しい先生の元に足を運ばれることを願います。

遊離期(病巣内・外)↓

母床との連続性がなくなり遊離体となります(イメージ)

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遊離期(病巣内・外)↓
遊離体が正常な関節軟骨を傷付け毛羽立った様にモヤモヤしたりと正常な組織を傷付けてしまいます(イメージ)

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ロッキングとは?・・・
ロッキングは、関節を動かした際に急に関節が動かなくなるもので、離断性骨軟骨炎の遊離体によってなる事もあります。ロッキングを繰り返すと関節軟骨を傷付けてしまいます。

最終的にどうなる?・・・↓
最終的には、変形性関節症へと移行し、肘の曲げ伸ばしなど可動域が著しく低下します。日常生活に支障がでます。変形した骨(イメージ)

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エコーで遊離体を確認↓
この様に病巣内にあった殻が剥がれ遊離体へと変わります。

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まとめ
離断性骨軟骨炎の最終段階である遊離期(病巣内・外)についてお伝えさせて頂きました。この期では遊離体となってしまうため、治る可能性はありません。遊離体は正常な組織を傷付けてしまう可能性があります。そのままにしていても遊離体が無くなることはありませんので手術が選択されます。症状としては、関節炎、関節水腫、ロッキング、可動域制限、引っ掛かり感などがあります。
小学生、中学生で投球・打撃時に肘の外側に痛み、違和感などの異変を感じた際は速やかに、専門の医療機関を受診してください。病態・症状によってはレントゲン、エコー、MRI、CTなど様々な検査が必要です!
指導者、保護者はこの離断性骨軟骨炎を知り、選手を良い方向へと導いてあげてください。周囲で指導者、保護者がいらっしゃいましたらシェアしてくださると嬉しです。

参考文献



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