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有限会社うまのほね 第1話「学校の七不思議」 Part5

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前回までのあらすじ
 機械修理工・飯島ハルキは、"ドローンのお化け"にさらわれた少年を救出するため、依頼人の少年・カンタと共に小学校へ乗り込んだ。捜索を続ける中、二人は理科室で最新式の人体模型に出くわした。心臓が飛び出すほど驚いた結果、カンタが盛大にチビってしまった。

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 3号棟1階、少し手狭な男子トイレ。

 俺はジャンパーを脱ぐと、カンタの眼前の洗面台に置いた。

「拭いたらこれを腰巻きにしとけ。フルチンよかマシだろ」

「う゛ん゛……」

 タオルで身体を拭きながら、カンタはボロクソに泣いていた。怖いやら恥ずかしいやら情けないやら、色々な感情が爆発したのだろう。

 時刻は16時を回り、俺たちが秋小に侵入してから2時間が経とうとしている。周囲は徐々に薄暗くなってきた。タロウの捜索も急ぐべきだろう。

 ──不意にその音が響き始めたのは、そんなことを考えていた時だった。

 ジジジジジ……カリカリカリカリカリ……

 木の板を、鉄の棒で引っかくような音。

 不意にトイレ内に響き始めたその音に、俺は首をかしげて辺りを見回す。グズグズと泣いていたカンタは、青い顔で辺りを見回して口を開いた。

「おっちゃん、もしかしてここって……3号棟の隠しトイレ!?」

「ん? あー……」

 確かにこのトイレの入り口はわかりづらかった。階段と他の教室の間に人ひとり分くらいの細い通路があって、その先に入口があったのだ。

 しかも突き当りは壁なので、一見するとただの行き止まりの通路にしか見えない。俺はガキの頃ここのトイレの掃除当番なんかをやらされていたので知っていたが、知らない人は気付かないだろう。

 言われてみればなるほど、確かに「隠しトイレ」といった様相だ。

「そうかも?」

「そんな冷静に言ってる場合じゃないよ! やばい、逃げなきゃ!」

 そう言うカンタは俺のジャンパーを腰に巻こうとするも、うまく行かなくて泣きそうな顔をしていた。

 カリカリカリジジジジカリカリ……

 カリカリ音は徐々に大きくなっていく。

 俺は「なんで?」と聞きつつ、カンタのジャンパーを巻いてやる。途中までファスナーを上げて、残りは袖と共に腰で結ぶ。カンタの尻でうちの会社のロゴが輝く。

 カリカリカリジジジジジジカリカリカリカリカリジジジジカリカリ……

「ここのトイレは、いるんだよ……」

 一瞬、カンタはトイレの奥に視線を送った。2つしかない個室の片方、一番奥の扉が閉じている。カンタは叫んだ。

「……"カリカリさん"が!」

 カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ……

「……カリカリさん?」

「もっとびっくりして!? とにかく出るよ!」

 カンタはツッコミと共に俺の手を取り、扉を開け放った。

(つづく)

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