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43通目 じいちゃんの戦闘服である帽子

 落ち込んでも、放り投げないように。今は、やってみてはどうだろうかと思っていることを、やってみるとき。

 何も感じなくなった日々の、空虚さを日々憶えています。痛過ぎて何も感じなくなったあの寒々しい精神、痛くも痒くもなくなってしまった心。

 知っていれば良い気がするから、忘れずにいるです。
 あの人には「絵描きは見つかったでしょうか」と訊ねてる。

 祖父を思い出しました。風呂から上がって体を拭くときに。彼は毎朝乾布摩擦をして、パンツ一丁からズボンを穿き、上半身は裸のまま逃げるように家から出掛けておりました。上半身は裸でも、必ず兵士時代の国民帽らしき帽子は被って行きます。めかしているときはシャツを着るだけ。

 陸軍にいた彼は作業中に足に被弾して、歩き難そうに歩くのを、わたしが不思議そうに見ていると、母が被弾したことを説明してくれました。
 自分でわけは言わない爺様。だけど出掛けるときはいつも戦いだったかも知れない。

 上が裸でもいつも帽子を被っていた。
 被ると少し誇らしげに見えた。

 わたし、人を弱い心にするようなことは、わざと言ったりしたくないと、心底思っている。(自分が)弱ってしまっても、じいちゃんのあの帽子的な存在は、わたしにとっては何だろうか。 草々不尽

 二〇二一年十二月十二日付



 11.729光年彼方へ枯渇しても愛を湧かす 43

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