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自分に根が生えてきた話

今日、5年ぶりに映画の美術スタッフ時代の師匠から電話が掛かってきた。仕事の話に格好をつけて、近況を聞くために連絡をくれたのだった。

「声が聞きたかった。」と親でもないのに言ってくれる存在のありがたさにジーンときた。

師匠は、昔堅気の絵に描いたような映画屋で「酒さえ飲まなけりゃあ、いい美術監督なのに。」とよく人に言われたりしていた。仕事机の引き出しに酒を隠しては、私たち助手に怒られていた。(コソコソするのが憎めないからまた困る。)

仕事の件はと言うと、半年間中国でドラマの仕事しないかとのことだった。田舎暮らしを始めて、仕事や地域活動をし結婚までしてあっという間に5年。もはや、映像の仕事で飛び回っていた頃のことは、前世の記憶のように感じる。

仕事があれば、地方だろうが海外だろうが飛んで行って1ヶ月でも半年以上でも仕事のみに没入する生活。フリーランスで10年以上働いてきて、フットワークの良さが信条だったし、移動して暮らすのは結構好きだった。

でも、もう今はそんな働き方はできない。

自分の暮らしに根っこが生えてきたからだ。

思えば飛び回っていた頃も、いつか何処かに根ざした暮らしを漠然と夢見てた。親の代から東京生まれ育ちで、帰る田舎がないのでなおさら憧れた。

立っているステージがこんなに変わったか!!

と気付かされるのは、こう言う話が来た時に即答で動ける自分であるか否か。動けない、動かないのが根が生えてきた証拠だなと感じた。

もちろん、時々は移動したい気持ちにも駈られるけれど、それはたまの旅行で十分。


はてさて、これからどこまで根を深く張れるか楽しみだ。



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