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噂が現実になるサイコサスペンス

噂 荻原浩 新潮文庫

推理小説は大きく分けて、本格派と社会派に分類される。(小説も多様化し必ずしもこれに分類されるわけではないが)
極端に説明するが本格派は探偵が出てきて、犯人を論理的に推理してその推理の内容や過程を楽しむもので、社会派は警察が科学捜査や聞き込みで犯人を追いかけていくリアリティーを楽しむものである。
それぞれの分類の性質上、驚きの結末や知的好奇心を満たしてくれるのは本格派の作品であることが多い。しかしこの荻原浩の「噂」は、がっつり社会派に分類されるが驚きの結末を楽しむことができる。

あらすじ
香水の新ブランド「ミリエル」の販売戦略のため、「ミリエルの香水をつけると足首を切断するレインマンから狙われない」という噂を女子高校生のモニターを利用され広まった。狙い通り香水「ミリエル」は大ヒットするが実際に足首のない少女の遺体が発見された。

驚きの結末も魅力的であるが、この作品はキャラクター達に血が通っており作品への没入感もかなりある。特に主人公であるベテランの刑事・小暮と小暮より階級が上だが若い女性の名島のコンビは人間らしい、葛藤や感情の揺れが描かれており、とても感情移入しやすい主人公達となっている。

あわせて読みたい本
ハサミ男 殊能将之 講談社文庫
同じく警察が活躍するサイコミステリー。こちらは犯人目線であるが。紹介不要の有名・名作・傑作である

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