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映画「遠いところ」を観て欲しい

去る6月9日に沖縄先行公開となった衝撃作「遠いところ」

予告編の時点から気になっていたのもあり、先行公開初日に観に行ってまいりました。

まず観て率直に出た感想が「重い」「沖縄のリアル」この二言でした。

是非多くの方々に観て欲しい作品なので、なるべくネタバレを含まないよう感想を書いていきます。
もしよろしければ読んでいただけますと幸いです。



◇あらすじ


沖縄県のコザで幼い息子を抱えて暮らす17歳の女性が、社会の過酷な現実に直面する姿を描いたドラマ。

沖縄のコザで夫と幼い息子と暮らす17歳のアオイは、生活のため友達の海音と朝までキャバクラで働いている。建築現場で働く夫のマサヤは不満を漏らして仕事を辞めてしまい、新たな仕事を探そうともしない。生活が苦しくなっていくうえに、マサヤはアオイに暴力を振るうようになっていく。そんな中、キャバクラにガサ入れが入ったことでアオイは店で働けなくなり、マサヤは貯金を持ち出し、行方をくらましてしまう。仕方なく義母の家で暮らし、昼間の仕事を探すアオイにマサヤが暴力事件を起こして逮捕されたとの連絡が入る。

映画.comより


◇俳優陣の演技力が凄まじい程にリアル


主人公の「アオイ」を演じた”花瀬琴音”さんを始めとしたメインキャスト達が県外出身者でありながら、コザの町に3ヶ月程滞在して方言のイントネーションを練習したと仰るとおり、”間違いなく身近にいそうな若い子達”になっていました('Д')

最初らへんは本気で県内の俳優さん達なんだろうな~と思ってしまったぐらいです(^^;)
県民なら絶対共感されると思います(笑)

映画本編では目をそむけたくなるような17歳の子の”売春”のシーンであったり、夫から受ける”DV”のシーンもじっくり表現されています。

また、夜仕事をする家庭でありがちな小さいお子さんが一人で遊んでいる状況もしっかりとコマ割りが組まれていて、映し出される度に胸が詰まる思いでいっぱいになります。

大人ですら耐えられないはずの状況にたった17歳の女の子が奮闘し、もがく姿は、なんともやるせない気持ちが溢れ出てきます。

沖縄という世界でも有数の観光地の”その裏”で、現実に起きている問題をしっかりと落とし込んでいるため、前述した部分も含めて深いこだわりを感じる作品だったと思います。


あまり知られていないこの島の”閉鎖感”


沖縄の方言で”ゆいまーる”という言葉があり、皆さんにも当然知られている「助け合い」を表した言葉ですが、現代の沖縄においてその精神性は薄れつつあると個人的には感じています。

この作品ではそういった側面を忠実に表現し、親族間での金銭的な支援をしてあげないといった点や主人公アオイの家庭が問題だらけが故に見放され、忌み嫌われるといった悲しい現実を目の当たりします。

「助け合い」の心を謳う沖縄でも、実際は本土の一部で今も存在すると噂される”村八分”に似たようなことが行われているわけです。
また、それを加速させているのが沖縄の根底にある”貧困”に繋がってくるのではと感じました。

表現が難しいところですが、沖縄も本土も結局親族で起きてるトラブルには蓋をしたい”、”恥ずかしい”と捉えてしまう点は変わらないのかもしれません。

さらに離れ小島である以上各家庭の噂の広まりは早いですし、意外にも”逃げ場所がない”ことへの恐ろしさを深く感じます。

主人公にとっての「遠いところ」とは何を表すのか___。



◇私にできることとは


個人的に実際に作品を観ていて考えたのが、”自分ならどう支援してあげられるのか”といった部分。

やりようのない悲惨な現実が映し出されていくのを観ていると、金銭面含めて保護してあげたいと思わず考えてしまいます。

しかし、現実でそういった場面に直面した時、前述したような支援を覚悟を持って行えるかと言われれば答えは”NO”
単なる机上の空論。
所詮は私なんてその程度の人間。

ですが、この作品を通じて”自分の身近に起きていることなんだと理解を深め、常に「想像力」を働かせることが最低限大切”だと考えております。

今薄れつつある近隣との付き合い(挨拶だけでもいい)を持ちつつ、何か起きているかもしれないと思った時は適切な関係機関などに繋げるよう動きたいと思いました。
もちろんそういった行政機関等がすぐに動ける状況でないことも想定して、自らちょっとでも様子を見に行くといった勇気を持ち合わせていたいですね。(頑張ってみる)

ニュースに取りざたされている”赤ん坊の遺棄事件”も、なかには本作品と同じ状況がためにやむを得ずのケースもあるかもしれない。
殺人行為である以上やむを得ずで許されないのは当然であるが、実際にどういう状況だったのか、自身に落とし込んで”想像を張り巡らせる”ことは時に必要だと感じています。
ただ、本作品ではそこまで重たいケースに至ったわけではないことを申し添えます。


※あくまでも”私個人としてこう動いていきたい”と考えた部分であり、決して推奨しているのではありません。



◇ぜひ観て欲しい


沖縄を題材にしておりますが、実際のところ日本が抱える”貧困問題”現代人の特性と言える”閉鎖的”な側面を色濃く描き、挙句の果てに10代の子が違法なビジネスに手を染めてしまう危険な状況啓発している本作。

沖縄県内に限らず、特に私と同じ”20代”の皆さんに観て感じ取って欲しい作品です。

政治的な側面を踏まえて私自身が堂々と意見をここに記載することは非常に難しく、危険なため控えさせていただきますが、ただ一つ言えることとして、”自分の目に映る身近な人をとにかく大切にしよう”

最後になりますが、本作の序盤あたりで、沖縄のトップに立つ”あのお方”ラジオを通して演説するシーンがございます。
本作で取り上げるテーマを踏まえればかなりパンチの効いた皮肉を感じるシーンとなっており、非常に秀逸です。

この作品が多くの方々に観られることを心よりお祈り申し上げます。


-fin-

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