![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/76186550/rectangle_large_type_2_d7bc17d0658fa42a877c6a9e3b981fed.jpeg?width=1200)
話がどんどん変わる話
絶望の中をゆらゆらゆらゆら生きている。
タコみたいなもんだ。
絶望の中なんて言ったら、タコに失礼か。
タコを美味しいと思うようになったのは大人になってからだ。子供の頃はなかなか噛みきれなくて喉に詰まるし、どうも苦手だった。
喉に詰まるといえば、3歳ぐらいの頃、初めて死というものを意識する大事件があった。
親父が買ってきてくれたカバヤのジューシーを飲み込んでしまい、喉に引っかかって大パニックに陥ったのだ。
あの時は、俺は死ぬ、と本気で思った。洗面台に向かって泣きながらオエオエやってたら、親父が俺の背中をドンと叩いた。
そしたら本当に、唾液にまみれたカバヤのジュージューシーが、コロンと音を立てて流しに転がり落ちた。
ジューシーはレモン味だった。
あれからどうもレモン味は苦手だ。苦手だからとて、嫌いなわけではない。食べれないわけでもない。
でも、こういう話をすると過剰反応する人がいる。「あ、まっさんてレモンだめだったよね?」
その人は悪くないんだけど、食えないなんて言ったことはない。カラアゲに絞るレモンは最高なんだから、好きに絞れば良い。
きっと俺の伝え方が下手なんだな。
好きだと面と向かってストレートに伝えたら「重い」と言われ、口を閉じていたら「あなたは私に真剣にぶつかってこなかった」とかぬかしやがる。
うまくいかねえな。
うまくいかねえと言えばクルマの運転だ。運転好きを助手席に乗せた時に限って、うまくいかない。隣からあーしろこーしろひっきりなしに口を挟まれると調子が狂う。
断言していい。あなたが隣にいないほうが、ひとりで運転してるほうが、俺はスムースに運転できてただろう。
運転免許を取ったのは学生時代。自宅アパートから徒歩1分の自動車学校だった。クルマのハンドルって、こんなにも繊細に反応するんだなと思った。
ちょっとしたカーブで、これぐらいかなと思ってハンドル切ったら、おもくそ路側帯に乗り上げてしまった。
「おいおい。なにやってんの?ハンドルきりすぎ」教官の娘は俺と同い年の学生らしく、きみは親から仕送り幾ら貰ってんのとか、根掘り葉掘り聞いてきた。
◯万円ですと素直に答えてしまった。作り話で適当に答えるということが出来ない。
今まで出会ってきた人の中で、作り話の達人は、自称ボディビルダーの女だ。
本当にボディビルダーだったのかは定かでない。しかし、彼女の話に惹き込まれてしまった。
「ボディビルダーってね。みんなナルシストなのよ。人に見られると興奮するから、その快感が忘れられなくて、それがトレーニングのモチベーションになるの」
ケツの筋肉って、どうやって鍛えるんですかと聞いたら「そりゃあなた、あれよ、裏技よ」と彼女は言った。
裏技?
なんすか裏技って?と聞いたら、彼女曰く、ケツの穴に乾電池を挿し込んで、キュッキュッと締めるらしい。
へーなるほど、そんな鍛え方があるんすねと感心したところで、彼女は急に不機嫌になり「あんた鈍いわね」と席を立ったしまった。
当時は、なんだあのババアと思っていたが、今考えると誘ってたんだろうな。
愛は過ぎ去ってから気づくもの。
사랑은 떠난 후에야 아는지 サランウン トナン フエヤ アヌンジ
愛は去ったあとに分かるものなのか。韓国語の勉強を始めた頃、勉強がてら初めて訳してみた歌の歌詞だ。
ソウルは近代的で日本と何も変わらなかったが、造りが日本と比べると、ちょっと粗いかなと思った。
都会の歩道でも、ところどころ陥没した穴が空いていた。
が、
よくよく考えてみると、日本でも大規模な陥没事故は起こったりしてるし、自国だけ優れているなんて考えはやめたほうがいいな。
なんで他人の悪いところばかり探して、自身の欠点は省みないのだろう。
プロのコメディアンでもないのに、他人をいじって笑いを取る人間が本当に増えた。国民総ツッコミ時代の到来だ。
俺はボケでありたい。ツッコまれるなら、せめてプロにツッコまれたい。なんの実績もない、自分ではボケようともしない無印にはツッコまれたくない。
無印良品が拡大していった時期の勢いはすごかった。
さいたま屋という つけ麺屋もちらほら見かけるようになり、他店舗展開してるのかなと思った矢先、あまり見かけなくなった。
さいたま屋のつけ麺は本当に好きだった。美味しくて安かった。牛丼の吉野家みたいな感じで拡大する予定だったのかな。
上京したばかりの頃は、東京近郊、油そばブームの真っ只中。そこかしこ油そばの看板だらけ。
汁のないラーメン、油そば。当時は斬新で一大ブームが巻き起こっていた。「体調が悪い人は食べるの控えてください」なんて掲げてたが、今となっては油そばほどあっさりした食べやすいラーメンはないな。
これだけラーメンが好きなのに、ラーメンの世界に身を投じなかったのが悔やまれる。
人生が二度あれば。井上陽水も歌ってた。井上陽水はいかれてる。およそ常人には思いつかない歌詞ばかりだ。
昼寝をすれば夜中に眠れないのはどういうわけだ。
そんなの当たり前じゃーん、と一笑にふす連中など、井上陽水はハナから相手にしてないんだろう。
よく、売れる人はどんな世界でも成功するとか言うけど、井上陽水はミュージシャン以外ありえないと思う。
でも、
井上陽水が作るラーメンは美味しいかもしれない。
やっぱりどんな世界でも成功するのかな。
陽水はさておき、近所の細い用水路。
特大の野鯉が沢山泳いでる。あんな細い用水路なのに。ゆらゆらゆらゆら、群れをなして泳いでる。
あんな狭くて、何もなくて、楽しくなさそうな用水路なのに。
絶望の中をゆらゆらゆらゆら生きている。
絶望の中なんて言ったら、
鯉に失礼か。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?