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四谷怪談の現場を歩く(6)

二つの殺人現場

浅草裏田圃、浅間神社

 浅草寺の裏は今ではビルが隙間なく建ち並び想像もつかないが、江戸時代は一面田んぼが広がっていた。俗に浅草裏田圃と呼ばれ、新吉原遊郭もここからよく見えたことだろう。

浅草寺の裏通り(言問通り)
昔は田んぼが広がっていた
赤いバスの停まっている道が富士通り

 言問通りから富士通りに入ってしばらく進むと、通りの名の由来になった不二権現こと浅間神社が見えてくる。浅草裏田圃、そしてこの浅間神社が事件現場になる。

浅間神社

 日の暮れた浅草裏田圃に、乞食のなりをした奥田庄三郎が登場。庄三郎は赤穂義士である。そこへ地獄宿の提灯を下げた与茂七が来る。与茂七は義士仲間の名を記した廻文状をもって、京都山科の大星由良助と会うために、これより出立するという。
 昼間浅草寺境内で、高野方家臣の伊藤に見咎められていた与茂七を、そのまま行かせては危険だと、庄三郎は自分と衣装を取り換えようと提案。二人は着物を取り換えて、与茂七は去る。

 一方、浅間神社の境内。直助が与茂七を殺してやろうと潜んでいる。そこへ地獄宿の提灯を持った小間物屋姿の男が。与茂七と確信して襲い掛かり、出刃包丁で刺し殺す。それが奥田庄三郎とも知らず、被害者の身元がばれぬようにと、顔の皮をはぎ取った。残酷シーンも観客サービス。

 すぐそばの浅草裏田圃では、伊右衛門が四谷左門に斬りかかり、神社まで追いかけとどめを刺した。伊右衛門と直助は顔見知り。お互いの犯行を知ってもさして驚かないどころか、直助を真似て、伊右衛門も左門の顔を剝ごうとする。

 その時、お岩が父親を捜しにやって来た。そこへ妹のお袖も来る。伊右衛門と直助は隠れて様子を見ている。
 お岩は父親を、お袖は与茂七と同じ着物の顔の無い死骸を発見する。死骸の側には地獄宿の提灯が落ちている。姉妹が驚いていると、そこに偶然を装って伊右衛門が現れる。また、直助も現れ、二人して左門と与茂七を殺したかたきを探して、一緒に仇討ちをしようと説得する。
 そしてまんまと、伊右衛門はお岩と復縁し、直助はお袖と共に敵を討つための形ばかりの夫婦になることに成功した。 

上:江戸切絵図(国会図書館蔵)
下:google map



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