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雲の出る地に行った話三-二

 少し遅れてやってきた単線に乗り込み、出雲駅へ戻る。外に出るなり、すぐに大社行きのバスで出雲大社へ再び向かった。
 台風の過ぎ去ったオオクニヌシのお膝元は、昨日よりも大賑わい。あちこちから人の声が聞こえて、青い空には大きな雲。昨日までの厳粛で幽玄な雰囲気とは打って変わって、厳かさを残しつつもどこか温もりのある場所になっていた。
 拝殿でもお参りをすませ、本殿の門でも人々の列に混じって前日同様に挨拶する。またまたやって来ました。よろしくお願いします。
 顔を上げて本殿の敷地内を見ると、袴姿の人がお宮の中でなにやら仕事をしているのが見えた。
 ここには本当に、オオクニヌシ達がいる。今さらだが思った。

 さて今度こそ裏に回る。オオクニヌシの妻神であるスセリビメやタキリビメ達にも挨拶しなくてはならない。
 神在月にはカプセルホテルになる西十九社や氏神社を眺めて手を合わせつつ、まずはタキリビメのいる筑紫社に手を合わせる。それから本殿の裏に回ると素鵞社。スサノオの社だ。
 後ろから娘婿見てるのかしら、怖い。ふと本殿の囲いに目を向けると、ここにもウサギ像が本殿の屋根を見上げていた。


こちらには聞こえない音に耳をすませているのか。

 しかし大社回りは本当に緑が豊かだ。私の地元も自然が残ってはいるが、ここより南の方であるのでなんとなく山の雰囲気が違う。しゅっ、として厳めしいのだ。八雲山は大社の本当の御神体という話を聞いたせいかもしれないが。

 もう少しでぐるりと一周になる地点で、御向社に捧げる賽銭箱が見えた。スセリビメにお参りできる地点だ。小銭を捧げ何度目かわからない拝礼をする。さっきはお世話になりました。

門に囲まれているのであまり見えない。

 想像以上に小さいお社なので、ここで寝泊まりしているとかではなく、スセリビメのワーキングスペースなのかもしれないとも思う。夜お社が閉まった時には本殿に帰るのだろう、きっと。
 ところで、神様がたの仕事もパソコンが導入されているのだろうか。落ち着いたとはいえまだコロナが流行っていた時期だから、リモートもやってたりするんだろうな、とも思ってしまった。

 そこから横にそれた位置にあるスクナビコナ(オオクニヌシの元相棒。なんかちいさくてかわいい神様)のお社にもご挨拶すると、もうすぐお昼時という時間だった。
 スターバックスの横にお蕎麦屋さんがあったから、入ってみよう。ひとまず大社を後にした。


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