陽向 未/連続140文字小説頑張る
書いたり作ったりしたあれやこれやです
短歌のまとめです。暇潰しにどうぞ
長崎を舞台にしたオリジナル140字小説を連続で公開します。 ファンタジー・変身ヒロイン・ヒーローもの
長崎を舞台にしたオリジナル140字小説を連続で公開します。 ファンタジー・変身ヒーローもの
創作に関するあれやこれやを集めたもの
※ホラー注意 8月下旬ですが、まだまだ暑いのでAI生成でできたホラーなイラストを載せます。今回も2枚あります。 OKな人、下へどうぞ
喧嘩後 葡萄飴を貪り食う 果汁で口汚す 私は人でなし
※ホラー注意 8月下旬ですが、まだまだ暑いのでAI生成でできたホラーなイラストを載せます。今度は2枚あります。 OKな人、下へどうぞ
※ホラー注意 8月下旬ですが、まだまだ暑いのでAI生成でできたホラーなイラストを載せます。 OKな人、下へどうぞ
4月初旬、某日午後。 長崎は今日も晴れだった。 そして、 「はぁ? ふざけんなってアンタ板チョコしか食べんやろうが!」 「うるさい、それ以外のスイーツも食べるわ」 十亀コハクと久貝アコヤは、今日も今日とて争っていた。 ** 長崎県長崎市。九州の西端にある港町。 古くは交易で栄え、現在は観光に力を入れているこの街の南側──正確にはオランダ坂の下──にある長崎市立みなと中学校では、もうすぐ午後の授業が始まろうとしていた。 ** コハクたち2年生
光がおさまった瞬間、ふたりで化物に突進し、化物の手に蹴りを入れた。 化物は叫び、ぎやまんとびいどろを放り出した。手分けして受けとめ、静かに名乗る。 「賢者らでん」 「賢者べっこう」 声を揃えて、告げる。 「海のすひあが賢者、参上」
アコヤも石を持っていた。螺鈿のような水色の虹の光を放つ、丸い石。 流れるままに、コハクもアコヤもふたつの石を合わせた。 すると。 体が光に包まれ、何も見えなくなった。 しかし怖さは感じなかった。むしろ清らかな感じがして、力が漲る。
瞬間、何かがコハクの顔を掠めた。 それは、鼈甲色をした、輪っかの形の石だった。コハクは思わず立ち止まった。 石はコハクの目の前までやってくると、淡い光を放ってふわふわと浮いた。 コハクはためらいもなくつかみ、なぜかアコヤを見ていた。
なんで忘れとったとやろ。ヒーローを助ける人間になりたかと思うたこと。 ああそうやった、辛かったけんか。 今でも悲しかし、辛か。 ばってん今は── 「うちは、ふたりを助けたか!」 コハクは心の底から叫んだ。隣でアコヤも走っている。
空中に浮かんでいたびいどろとぎやまんをはっしとつかみ、握りつぶそうとする。 「ああっ!」 コハクは思わず悲鳴をあげ、駆け出していた。体が勝手に動いていた。 そして、あの時のことを──父の葬儀のことを思い出していた。
「必殺技!?」 なぜかアコヤが目を輝かせる。コハクは信じられないものを見るような目で──具体的にはUMAに遭遇したような目でアコヤを見た。 ところが。 体中に穴が開きながらも、化物は立ち上がっていた。
ふたりは息ぴったりに怪物をひっくり返すと、手を繋ぎ声を揃えて、 「スタースフィア・ローズウィンドウ!」 ぎやまんとびいどろの頭上に、大浦天主堂のバラ窓に似た紋様が浮かんだ。 そこから瑠璃色と銀色の無数の星が放たれ、化物に降り注ぐ。
ふたりはひらりひらりとかわしているが、怪物の腕に邪魔されなかなか攻撃出来ないようだった。 しかし怪物がぎやまんとびいどろを叩き潰そうと拳を振り下ろした瞬間、ふたりが腕をつかんだ。 「とった!」 コハクは声をあげた。
コハクは素直に従った。アコヤも同様だった。 駆け足で校舎裏に避難すると、戦いが始まったらしく轟音が響いた。 コハクは思わず振り返った。仮面の怪物は、よくしなる鞭のように腕を振り回してぎやまんとびいどろを襲っている。
同時に、さっき助けてくれたのはこの人だと、コハクは悟った。 「お願いします」 びいどろと名乗る少女の言葉に紳士はうなずき、 「おふたりとも、こちらへ」 と促した。その言葉にコハクは我に返った。 そうやった、こいつもおったとやった。
なにせそこにいたのは、自分より一回り年上と見受けられる、若々しくもダンディさ溢れる渋い紳士だったからだ。 眼光鋭いエスプレッソの目と、それと同色の整った髪が、ロマンス映画のワンシーンのようにコハクの心をがっちりつかんだ。