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【想像させて】サケの仲間。

「金子さん、サケのポスターって9種類でいいんすよね?」
「おお。そこにある資料をさA3に拡大コピーして、左に4種類、右に5種類になるようにラミネートして」
「わかりました!」
「明日のオープンまでにあればいいから」
「クリオネが終わり次第すぐやります!」

海沿いの科学センターは、いよいよ明日オープン。
準備は整っていたが、サケの種類がわかるポスターを
急遽用意するよう言われた三浦くん。

「よし! これでOK!」

クリオネの水槽が整ったため、
三浦くんはサケの資料を持って
事務所にあるコピー機へと急いだ。

オープンを迎えた翌日、
市のお偉いさん方が出席する記念式典で
テープカットが執り行われると、列を作っていた
地元民や観光客が一気に化学センターへと流れ込んだ。


「へぇ〜! サケってこんなに種類があるんだね!」
「しゅごいねー!」

さっそく昨日三浦くんが作ったポスターを見ながら
1組の親子が楽しそうに話しはじめた。

それを見た金子は、三浦くんの元へ急いだ。

「お前の作ったポスター見てるぞ! 良かったな」
「あっはい! 嬉しいす!」


「ねーねーパパー!」
「ん? どうした?」
「あたしコレ読めるよ!」
「え? 本当?」
「だってね! だってね! これカタカナだもん!」
「カタカナだって難しいぞ? よし! じゃー」

そう言うと、
ポスターの見やすい位置に父親は娘を持ち上げた。

「じゃーこれは?」
「シロサケ!」
「これは?」
「サクラマス!」
「これは?」
「ベニザケ」
「これはどうかな?」
「ギンザケ!」
「すごいじゃん! カタカナ全部読めるようになったの?」
「なったよ! みんなわかるよ!」
「じゃーこれは?」
「カラフトマス!」
「これは?」
「ヤマメ?」
「そう! ヤマメ」
「豆?」
「豆じゃないよ(笑)   ヤマメもサケの仲間。次は?」
「ヒメマスー!」
「じゃーこれは?」
「マスノスケ!」
「マスノスケ!? 本当だ! 面白い名前だねー!(笑)」
「マスノスケ! マスノスケ! 伊之助みたい!」
「本当だね! 鬼滅の刃に出てきそうだね!」
「うん!」
「じゃー最後のこれは?」
「…………わかんない!」
「わかんない?」
「だってね! だってね! 名前がないの」

三浦くんは静かに金子の側からいなくなった。

※この物語は想像です。登場する人物名、団体名は実在のものとは関係ありません。

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