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【想像させて】緊急自動車に。

「そろそろ看板立てないとダメだな」
「そうですね。数百メートル置きに設置しましょう」


市の開発建設部では、
緊急車両が通る際のマナーがなっていない
ドライバーたちへの注意喚起のため、道路沿いに
「お願い看板」を設置することを決定した。

「文言はお前に任せた。どこかに定型文があるはずだ」
「わかりました」
「俺は設置に必要な許可と申請をやっておく。来週中に30枚看板を用意しておいてくれ」

部長の岸山は、
三年目の期待のホープ・藤井に看板を依頼すると、
申請に必要な書類の作成にとりかかった。



週明け火曜日。
朝一番、藤井が岸山のもとを訪れた。

「今日の午後には看板が到着します!」
「おう、そうか。一応申請した設置期間が明日からだから、さっそく明日から設置開始しようか」
「はい!」


午後1時すぎ、出来上がった看板が到着した。

「じゃ、一応確認しよう」
そう言うと、岸山は藤井と共に、
看板が運ばれた会議室へと足を運んだ。


「おい!!」
「はい!」
「お前これ何やってんだよ!」
「え? なんですか!?」
「何見て書いた?」
「定型文が見つからなかったので、なんとか三行に収まるよう自分で書きました」
「わからなかったら何で聞きに来ないんだよ!」
「なにか、おかしいですか?」
「これじゃまるで……

"緊急自動車から逃げれるもんなら逃げてみな?"

って言ってるようなもんじゃないか!」
「え? どういう……考えすぎじゃないですか?」
「おおおおおおい! この言葉はな! 『極力追いつかれないでね』って言ってるようなもんなんだよ……

"はい! ここでは現在『追いつかれたら失格ルール』でやっておりまーす! はい、あなたも、そこのあなたも左によって停車してくださーい。追いつかれたら左によって停まってくださいねー! あーそこの車、そんなスピードじゃ緊急自動車に追いつかれちゃいますよー! さぁ! 緊急自動車が迫っております! みなさんどんどんアクセルを踏んでー踏んでー踏んでー! レースは終わりませんよー! しっかり逃げ切ってくださーい! はい! はいはいはい!そこのあなた失格!!"


じゃねーんだよ!!」
「めちゃ元気ですね」
「ぅおおおおおぉぉぉぉおおい!」

※この物語は想像です。登場する人物名、団体名は実在のものとは関係ありません。

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