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コント「ねろねろねろね」

ウェイター: 秀山様、いかがでしたか、こちらの真鯛のポワレは。

秀山: いやはや、非常に精巧に造られており、感激あるのみですな。
ウェイター: ありがとうございます。
秀山: 特にこのソース。材料はアンチョビにレモン果汁、バルサミコ酢に岩塩、それと...以前食したことがあるのだが...これはユーカリの実だな。
ウェイター: 流石でございます。わずか一欠片混ぜただけなのですがね。
秀山: やはりユーカリの実であったか。バルサミコ酢の酸味を和らげつつ、それでいて全体に香ばしさを加えるとは、見事。

栗山: すごい美味しいですねぇここのお料理。ねえ、谷岡さん。
谷岡: 一つ一つの料理にかけられる情熱が素晴らしい。それにどれも複雑かつ繊細で、それでいてまろやかだ。
栗山: 真鯛のシコシコとした歯触りにユーカリの実の噛み締めるたびにドピュッとした食感がアクセントになって...最高です。
谷岡: これは極限のメニューの一つに入るかもしれないな...
栗山: あ、次デザートですって!

ウェイター: ドルチェの「ねろねろねろね」でございます。
秀山: ほぅ。ねろねろねろねとは。これはまた珍妙なものを。
ウェイター: 京都府福知山産から今朝仕入れたものでございます。どうぞ。
秀山: ではいただくとしよう。

秀山: このねろねろねろねを作ったのは誰だぁっ!!

ウェイター: どうされました?秀山様。

秀山: この秀山に向かってこの程度のねろねろねろねを出すとはっ!貴様!一体どういうつもりなんだっ!
ウェイター: 申し訳ありません!おいっ!シェフを呼べ!

シェフ: 本日のドルチェを担当しました、林原でございます。
秀山: 貴様...

シェフ: お味の方がお気に召しませんでしたか?確かに最高級のねろねろねろねを調理したのですが。

秀山: このねろねろねろね。確かに今朝仕入れたものだと言っておったな?
シェフ: はい。
秀山: では、調理をするまでの間、一体どこに置いていたんだ?
シェフ: もちろん常温でございます。...はっ!

秀山: 今日は7月の下旬。昼間の気温は30度を超えていたな。それに調理場というものは窯やコンロの熱を発する器具がある。それだけじゃない、人が密集して気温は40度近くまで登ることも珍しくない。ねろねろねろねの取り扱い方を知らんわけではあるまい。
シェフ: 直射日光を避け、涼しい場所に保存...!!
秀山: さよう。
シェフ: しかし今日は200人ものねろねろねろねの準備があり
秀山: ええい!言い訳をするか!料理人の風上にもおけないクズどもめ!
シェフ・ウェイター: 申し訳ありませんっ!!

谷岡: やれやれ。ねろねろねろねの味一つで怒号を飛ばすとは了見が小さい男だ。
栗山: 谷岡さんっ。

秀山: 何ぃ?なんだ貴様か...三郎。
谷岡: 五郎だよ。
秀山: 了見が小さいだと?
谷岡: ああそうさ。自分の完璧主義を他人に押し付けるその傲慢な態度、味覚倶楽部のトップとしていや、それ以前に人間としてこっけいだと言っているんだ。
秀山: 言うようになったじゃないか六郎。
谷岡: 五郎だよ。ねろねろねろねはそんな型にハマった堅苦しいデザートじゃない!もっと自由な精神で造られるはずさ。
秀山: ではお前に私たちが用意するモノ以上のねろねろねろねが作れるというのか?
谷岡: 何?!
秀山: 3日後の14日の晩、会場はAPAホテル石山通ロビーにて、我ら味覚倶楽部と貴様ら南東新聞のねろねろねろね対決をしてやろうではないか!
谷岡: 望むところだ。その傲慢な鼻っ面をへし折ってやる!
秀山: せいぜい腕を磨いておくことだな。ワッハッハッ

栗山: 谷岡さん!
谷岡: ん?
栗山: あんなこと言って本当に大丈夫なんですか?
谷岡: さあね。
栗山: 何か隠し玉が...
谷岡: 無いよ。さあてと、セパタクローの中継がそろそろだな。
栗山: ちょっとぉ!谷岡さぁん!もう...知りません!

えんど

好評ならば続く?...かも。

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