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ONE PIECE FILM REDから世相を読む

新時代とは何か? 

ウタの言うところの、海賊が憎いーーはシャンクスに対したものではなく、自己嫌悪を避けるための、否定しようのない暴力に当てられた言葉だ。

近代において国民国家が成立したのは、人々が暴力への自由を自ら放棄したからではない。まず人々に暴力行使を禁止することができるだけの力を集中させた統治権力ができて、その統治権力が強制的に暴力行使を禁止することで、近代の国民国家は成立した。
このように近代国家は内外から生じる諸暴力を抑え込むための合法化された暴力を保持しており、まさに暴力性を内包した存在なのである。
戦争原因の研究III ―国民国家の成立と経済的要因―/岩木 秀樹

序盤、ウタウタの能力は上記の条件を果たし、ウタは国家の主導者として理想郷を作ることに成功する。ウタの築き上げたコミュニティは一種のシェルターであり、ウタ自身の己の内に潜める暴力性を平和利用するという核に似た側面もある。そのトットムジカは触れてはならないものとして描かれているが、一概に勧善懲悪でないところもまた議論を呼ぶところだろう。よって専守防衛的な対応で、かつ野蛮な性(海賊)を定住させるという思想を五線譜に音符として留める表現は優れたビジュアルだ。

しかし、ここで一つの矛盾がある。国家は戦争をするための装置であり、平和である世界では意味を失い、分断が起こるのは必然だ。平和を維持するために独裁をしかなければならないところも実に皮肉だ。そこで戦争に代わるものが必要となってくる。それが歌である。

こうしたスタンスは日本らしくてよく共感が得られるものだろう。アジア太平洋戦争以後、他国の戦争や紛争で自国が介入することも世論が反応を示したこともない。実質、第二次世界大戦以後はコスパとしても戦争が有用でないことは示されてしまい、防衛費をアメリカに肩代わりしてもらい、ただ乗りをしていた日本には無用の長物だ。そんな中でも日本の戦争はサブカルチャーなど底流を通じてガラパゴス進化を遂げた。

文明が進歩するにつれて、戦争に訴えるための正当化は、 より抽象的にまた客観的になる傾向を持っている。つまり国民国家以前、特に初期人類の戦争では、食物や人間、土地などを奪うために、集団構成員のほぼ全員の要請により戦った。しかし近代以降では、 宗教、イデオロギーなどのより抽象的な概念により戦う場合が多くなったのである。
ナショナリズムや国家への忠誠心が信条価値的なものに組み込まれ、他者、他国への憎悪が駆り立てられた。過去の人類史に見られたように食物、土地のために戦うのではなく、憎悪やイデオロギー、 自国への忠誠心により戦うようになり、戦争がより激烈になった。
戦争原因の研究III ―国民国家の成立と経済的要因―/岩木 秀樹

いわゆる海賊はこの初期人類の戦争の象徴であり、この映画で語られるところの新時代とは近代化以降の戦争やその先を予感させる。途中、海軍による狂乱化した市民の虐殺が描かれるが、トロッコ問題に見せかけてこれはナショナリズムの問題だ。
いわゆる理想郷エンドは「NARUTO」の無限月読や、「鬼滅の刃」の無限列車編などに代表するように現実逃避を現実的に実現することだ。ちなみに戦時下においてはナショナリズムの高揚による帰属意識が自殺率を下げるという話もあるが、平和でありながらも孤独は否定するという矛盾の果てに辿り着く、みんなで夢堕ちするという思考停止は形骸化したもう一つの国家のあり様である。

また今回、他に類を見ない表現として興味を惹かれたのはハードパワーとソフトパワーが共存する歌の存在だ。エンタメは時として不要不急と真っ先に切り捨てられるものだが、これらがもたらす経済効果は周知の通りだ。そして経済力が軍事力の差になる構図は平和を謳う歌が戦争の勝敗を分つとして大変皮肉なことである。メタ的にこの映画が興行収入100億を突破することにも大きな意味がある気がする。
また時流のメタバースや、より人らしい生き方への移行は反体制な姿勢に繋がり、天竜人に対する対応からもわかる。反抗というよりは無関心やギャップ、スルーといったほうが近いかもしれない。Adoのデビュー曲の精神は今作にも色濃く反映されている。
分断を作らず、敵も味方もない世界でドラマは果たして生まれ得るのか、エンタメは常に試されている。

日本アニメがたどり着いたミュージカル映画

話は変わって今作がとったミュージカル方式についてだ。
インターネットやスマホの普及はアニメ映画において音楽の重要性をますますにした。ストリーミング全盛により画面サイズは縮小し、画質や迫力はスクリーンに比べると当然物足りない。よって制約を問わない音質、音楽がより求められていると考えられる。
あるいはミュージカルものは実写で行うとフラッシュモブ的な違和感をどれだけドラマの面白さに取り込めるかが勝負になる。しかしダンスや演劇の文化がそもそも輸入である日本が手がけるそれはコメディに振れがちというのが私の所感だ。そうした難しさをクリアするのがアニメーションだ。「アナと雪の女王」で再確認されたのは、人が描いたものはミュージカル要素が浮かないということだ。実写よりも表象が日常非日常の境界を円滑にしている。日本においては「君の名は。」が大きな転換点と言える。今までは引き立て役だった音楽が映像をリードする様は、MVと称されるように新鮮であった。劇中歌を中心に添えたアイドルものや、通常シリーズものに歌手要素を入れるという意味では「SAO オーディナル・スケール」も流れにある。その他「竜とそばかすの姫」や「アイの歌声を聴かせて」や「犬王」なども記憶に新しい。今作は特にJ-POPを牽引する気鋭の作曲家らが参加し、一曲一曲の主張もビビットで、物語に沿った自然な取り入れ方は新たな日本アニメ史に刻まれる成功例と言えるのではないだろうか。

歌詞を読む

新時代

新時代はこの未来だ
世界中全部 変えてしまえば 変えてしまえば…

ジャマモノ やなもの なんて消して
この世とメタモルフォーゼしようぜ
ミュージック キミが起こす マジック

目を閉じれば未来が開いて
いつまでも終わりが来ないようにって
この歌を歌うよ

Do you wanna play? リアルゲーム ギリギリ
綱渡りみたいな旋律 認めない戻れない忘れたい
夢の中に居させて I wanna be free
見えるよ新時代が 世界の向こうへ
さあ行くよ NewWorld

新時代はこの未来だ
世界中全部 変えてしまえば 変えてしまえば
果てしない音楽がもっと届くように
夢は見ないわ キミが話した 「ボクを信じて」

あれこれいらないものは消して
リアルをカラフルに越えようぜ
ミュージック 今始まる ライジング

目をつぶりみんなで逃げようよ
今よりイイモノを見せてあげるよ
この歌を歌えば

Do you wanna play? リアルゲーム ギリギリ
綱渡りみたいな運命 認めない戻れない忘れたい
夢の中に居させて I wanna be free
見えるよ新時代が 世界の向こうへ
さあ行くよ NewWorld

信じたいわ この未来を
世界中全部 変えてしまえば 変えてしまえば
果てしない音楽がもっと届くように
夢を見せるよ 夢を見せるよ 新時代だ

新時代だ


私は最強

さぁ、怖くはない
不安はない
私の夢は みんなの願い
歌唄えば ココロ晴れる
大丈夫よ 私は最強

私の声が
小鳥を空へ運ぶ
靡いた服も踊り子みたいでさ
あなたの声が
私を奮い立たせる
トゲが刺さってしまったなら ほらほらおいで

見たことない 新しい景色
絶対に観れるの
なぜならば
生きてるんだ今日も

さぁ、握る手と手
ヒカリの方へ
みんなの夢は 私の幸せ
あぁ、きっとどこにもない アナタしか持ってない
その温もりで 私は最強

回り道でも
私が歩けば正解
わかっているけど
引くに引けなくてさ

無理はちょっとしてでも
花に水はあげたいわ
そうやっぱ したいことしなきゃ
腐るでしょう? 期待には応えるの

いつか来るだろう 素晴らしき時代
今はただ待ってる 誰かをね
繰り返してる 傷ましい苦味
火を灯す準備は出来てるの?
いざ行かん 最高峰

さぁ、怖くはない?
不安はない?
私の思いは 皆んなには重い?
歌唄えば 霧も晴れる
見事なまでに 私は最恐

さぁ、握る手と手
ヒカリの方へ
みんなの夢は 私の願い
きっとどこにもない アナタしか持ってない
その弱さが 照らすの

最愛の日々
忘れぬ誓い
いつかの夢が 私の心臓
何度でも 何度でも 言うわ
「私は最強」

「アナタと最強」

逆光

散々な思い出は悲しみを穿つほど
やるせない恨みはアイツのために
置いてきたのさ

あんたらわかっちゃないだろ
本当に傷む孤独を

今だけ箍外してきて

怒りよ今
悪党ぶっ飛ばして
そりゃあ愛ある罰だ
もう眠くはないや
ないやないや
もう悲しくないさ
ないさ
そう
怒りよ今
悪党蹴り飛ばして
そりゃあ愛への罰だ
もう眠くはないな
ないなないな
もう寂しくないさ
ないさ

逆光よ

惨憺たる結末は美しさを纏うほど
限りなく、体温に近い
「赤」に彩られていた
散漫な視界でも美しさがわかるほど
焼き付ける光を背に受ける
「赤」に気を取られている

もつれてしまった心は
解っている今でも
ほつれてしまった。
言葉が焦っている。

怒りよ今
悪党ぶっ飛ばして
そりゃあ愛ある罰だ
もう眠くはないや
ないやないや
もう悲しくないさ
ないさ
そう
怒りよ今
悪党蹴り飛ばして
そりゃあ愛への罰だ
もう眠くはないな
ないなないな
もう寂しくないさ
ないさ

逆光よ

もう、怒り願った言葉は
崩れ、へたってしまったが
今でも未練たらしくしている。
あぁ、何度も放った言葉が
届き、解っているのなら
なんて、夢見が苦しいから

もう怒りよまた
悪党ぶっ飛ばして
そりゃあ愛ある罰だ
もう眠くはないや
ないやないや
もう悲しくないさ
ないさ
そう
怒りよさぁ
悪党ふっ飛ばして
そりゃあ愛への罰だ
もう眠くはないな
ないなないな
もう寂しくないさ
ないさ

逆光よ

ウタカタララバイ

ひとりぼっちには飽き飽きなの 
繋がっていたいの 
純真無垢な想いのまま Loud out 

Listen up baby 消えない染みのようなハピネス 
君の耳の奥へホーミング 逃げちゃダメよ浴びて 
他の追随許さないウタの綴るサプライズ 
リアルなんて要らないよね? 
後で気付いたってもう遅い 
入れてあげないんだから 
手間取らせないで Be my good boys & girls

誤魔化して強がらないでもう 
ほら早くこっちおいで 
全てが楽しいこのステージ上 一緒に歌おうよ 

I wanna make your day, Do my thing 堂々と 
ねえ教えて何がいけないの? 
この場はユートピア だって望み通りでしょ? 
突発的な泡沫なんて言わせない 
慈悲深いがゆえ灼たか もう止まれない 
ないものねだりじゃないこの願い 

I wanna know 君が欲しいもの 
本心も気付かせてあげるよ 
見返りなんて要らない あり得ない
ただ一緒にいて? True heart 
Oh my “F” word 

全身がふわふわっと不安などシャットアウト ~Bye~ 
半端ない数多のファンサは愛 
ずっと終わらない You & I ここにいる限り 
Trust me 超楽しい That’s all 
心奪われてうっとりと 
道理もなくなってしまうほど渇望させちゃう 
一抜けも二抜けもさせない させない︕ 
I got a mic so you crazy for me forever 

迷わないで 
手招くメロディーとビートに身を任せて
全てが新しいこのステージ上 一緒に踊ろうよ 

I wanna make your day, Do my thing 堂々と 
ねえ教えて何がいけないの? 
この場はユートピア だって望み通りでしょ? 
突発的な泡沫なんて言わせない 
慈悲深いがゆえ灼たか もう止まれない 
ないものねだりじゃないこの願い 

この時代は悲鳴を奏で救いを求めていたの 
誰も気付いてあげられなかったから 
わたしがやらなきゃ だから邪魔しないで お願い… 
もう戻れないの だから永遠に一緒に歌おうよ 

直に脳を揺らすベース 鼓膜ぶち破るドラム 
心の臓撫でるブラス ピアノ マカフェリ 
五月雨な譜割りで Shout out! Doo wop wop waaah! 
欺きや洗脳 お呼びじゃない 
ただ信じて願い歌うわたしから耳を離さないで 
それだけでいい Hear my true voice 

Tot Musica

ᚷᚨᚺ ᛉᚨᚾ ᛏᚨᚲ ᚷᚨᚺ ᛉᚨᚾ ᛏᚨᛏ ᛏᚨᛏ ᛒᚱᚨᚲ 

雨打つ心 彷徨う何処
枯れ果てず湧く願いと涙
解き放つ 呪を紡ぐ言の葉

ᛗᛁᛖ ᚾᛖᚷ ᛟᚾ ᚷᛁᛖᚲ ᚷᛁᛖᚲ 
ᚾᚨᚺ ᛈᚺᚨᛋ ᛏᛖᛉᛉᛖ ᛚᚨᚺ 
死をも転がす救いの讃歌
求められたる救世主

祈りの間で惑う
唯 海の凪ぐ未来を乞う

その傲岸無礼な慟哭を
惰性なき愁いには忘却を
さあ 混沌の時代には終止符を
いざ無礙に Blah blah blah!
無条件 絶対 激昂なら Singing the song
如何せん罵詈雑言でも Singing the song
有象無象の Big Bang 慈しみ深く
怒れ 集え 謳え 破滅の譜を

ᛗᛁᛖ ᚾᛖᚷ ᛟᚾ ᚷᛁᛖᚲ ᚷᛁᛖᚲ 
ᚾᚨᚺ ᛈᚺᚨᛋ ᛏᛖᛉᛉᛖ ᛚᚨᚺ 
誓い立てし自由 手にして謳歌
平伏されたる救世主

逃亡の果て望む希望
忘れじの灯火を纏う

その身が尽きるまで奏でよ
夢見うつつ崇めよ
全てを照らし出す光を
いざ無礙に Blah blah blah!

その傲岸無礼な慟哭を
残響激励すら忘却を
さあ 混沌の時代には終止符を
いざ無礙に Blah blah blah!
無条件 絶対 激昂なら Singing the song
如何せん罵詈雑言でも Singing the song
有象無象の Big Bang 慈しみ深く
怒れ 集え 謳え 破滅の譜を

ᚷᚨᚺ ᛉᚨᚾ ᛏᚨᚲ ᚷᚨᚺ ᛉᚨᚾ ᛏᚨᛏ ᛏᚨᛏ ᛒᚱᚨᚲ 

世界のつづき

どうして あの日遊んだ海のにおいは
どうして すぎる季節に消えてしまうの

またおんなじ歌を歌うたび
あなたを誘うでしょう

信じられる? 信じられる?
あの星あかりを 海の広さを
信じられる? 信じられるかい?
朝を待つ この羽に吹く
追い風の いざなう空を

どうして かわることなく見えた笑顔は
どうして よせる波に隠れてしまうの

またおんなじ歌を歌うたび
あなたを想うでしょう

信じてみる 信じてみる
この路の果てで 手を振る君を

信じてみる 信じてみるんだ
この歌は 私の歌と
やがて会う 君の呼ぶ声と

信じられる? 信じられる?
あの星あかりを 海の広さを
信じてみる 信じられる
夢の続きで また会いましょう
暁の輝く今日に

信じられる? 信じられる?
あの星あかりを 海の広さを
信じられる 信じられる
夢のつづきで 共に生きよう
暁の輝く今日に

風のゆくえ

この風は どこからきたのと
問いかけても 空は何も言わない

この歌は どこへ辿り着くの
見つけたいよ 自分だけの答えを
まだ知らない海の果てへと 漕ぎ出そう

ただひとつの夢 決して譲れない
心に帆を揚げて 願いのまま進め
いつだって あなたへ 届くように 歌うわ
大海原を駆ける 新しい風になれ

それぞれに 幸せを目指し
傷ついても それでも 手を伸ばすよ

悲しみも強さに変わるなら
荒れ狂う嵐も越えていけるはず
信じるその旅の果てで また 会いたい

目覚めたまま見る夢 決して醒めはしない
水平線の彼方 その影に手を振るよ
いつまでも あなたへ 届くように 歌うわ
大きく広げた帆が 纏う 青い風になれ

ただひとつの夢 誰も奪えない
私が消え去っても 歌は響き続ける
どこまでも あなたへ 届くように 歌うわ
大海原を駆ける 新しい風になれ

ビンクスの酒

ヨホホホ ヨホホホ × 4

ビンクスの酒を 届けにゆくよ
海風 気まかせ 波まかせ
潮の向こうで夕日も騒ぐ
空にゃ 輪をかく鳥の唄

さよなら港 つむぎの里よ
ドンと一丁唄お 船出の唄
金波銀波も しぶきにかえて
おれ達ゃゆくぞ 海の限り

ビンクスの酒を 届けにゆくよ
我ら海賊 海割ってく
波を枕に 寝ぐらは船よ
帆に旗に 蹴立てるはドクロ

嵐がきたぞ 千里の空に
波がおどるよ ドラムならせ
おくびょう風に 吹かれりゃ最後
明日の朝日が ないじゃなし

ヨホホホ ヨホホホ × 4

ビンクスの酒を 届けにゆくよ
今日か明日かと宵の夢
手をふる影に もう会えないよ
何をくよくよ 明日も月夜

ビンクスの酒を 届けにゆくよ
ドンと一丁唄お 海の唄
どうせ誰でもいつかはホネよ
果てなし あてなし 笑い話

ヨホホホ ヨホホホ × 4


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