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伊上 申
2023年10月31日 07:07
9話 訪れた村 カインと別れたジャスティスは、彼の言うように東へと足を進める。 ジャスティスが進む道はファルフォム丘陵に続く道でその手前には小さな村があり、そこで今後の旅 (大陸の北側から真南まで一人旅になる)の準備をするべく立ち寄ることにした。 もしかしたらここでも脱獄の話は届いてるかも知れない―― そう思い、首に巻いたスカーフを外し頭に巻き付けるようにして後ろで括りベストはその
2023年10月30日 07:01
8話 港で落ち合おう ジャスティスは焚き火の火を絶やさないように薪を焚べる。パチパチと爆ぜる音を聞きながら、黄色に近い赤の炎をぼんやりと眺めた。(カインさん、大丈夫かな? 余計な事、言っちゃったかな…) 随分と驚いていたカインを横目にジャスティスは密かにそう思った。 ――ロウファの話をしたら彼の事を思い出してしまう。『残念だよ、ジャスティス』 冷たく突き放す声―― 濡れ衣
2023年10月30日 02:20
7話 ディザイガ城地下道にて ――牢獄の通路から容赦なしに落ちてきたカインとジャスティス。「…痛ッてぇ!!」 カインは腰を思い切り地面に打ち付けたようで苦痛に顔を歪めている。「大丈夫ですか? カインさん」「そう言うお前は何でピンピンしてんだよ?!」「え、咄嗟に受け身とりました」『あの状況で受け身とれるお前の身体能力がすげーわ!』 と、カインは腰をさすりつつ言う。「
2023年10月28日 08:42
6話 カイン「―…と。お前、名前聞いてなかったな」 薄暗い牢獄を入り口まで戻ろうとする最中――男性がジャスティスを振り返り聞いてくる。「ジャスティスです。ジャスティス・グランヌ」「そうか。俺はカイン、宜しくな」 と、握手をするように手を差し出されたので、ジャスティスは少し照れながら、「…宜しくお願いします」 手で答えるのと一緒に頭まで下げてしまった。「ははは。お前、変な奴
2023年10月27日 14:00
5話 試験のあと『―…なぁジャスティス。俺は騎士団長になるのが夢なんだ』 いつだったかロウファはそう話してくれたっけ。 お互い友として良きライバルとして切磋琢磨し、たまには手合わせし、身体を重ね、いつだって一緒にいたよね。 僕はキミより頭は良くないし魔力だってないし、どうしよかなって迷ってたら、『お前も騎士になって俺の側にいろ』って、笑いながら言ってくれたよね。 キミとずっと一
2023年10月26日 06:07
4話 レッドウルフとの闘い しばらく歩みを進める度に、湿気はもちろんのこと、進む度に徐々に辺りの空気が暑苦しくなってきていた。 ロウファもジャスティスも先程から気温の変化には気付いていたのだが、蒸すような暑さが充満しているようで――茹で蛸になった気分だ。「…暑い……」 小さく呟くジャスティス。「俺も……」 ロウファは立ち止まり、皮袋から水筒を取り出し水分を補給した。ジャスティ
2023年10月25日 18:16
3話 ロウファ ――お互いの行為を済ませて、二人は何事もなかったように洞窟の奥へと歩みを進める。 洞窟もまた一本道だったため湿気が入り混じる中を二人して進む。しばらく進むと円形の、広い空間に出た。 地面と岩壁の隙間に所々生えている『ヒカリゴケ』のお陰なのだろう、本来薄暗い洞窟がほのかに明るいのはこのヒカリゴケがあるからだ。「これ、『ヒカリゴケ』だね。こんな所に生えてるんだ、初めて見
2023年10月25日 05:55
2話 実施試験という名の冒険 道は――来た時よりも随分と幅が細くなり、並んで歩くとお互いの肩がぶつかるほどだった。「もう道が無いんじゃないのか?」 人ひとり分くらいの幅になってしまったため先立って歩くロウファが後ろにいるジャスティスを振り返る。「…そうだね」 頷いてジャスティスは一旦歩みを止めるとロウファもまた歩みを止めた。「道、合ってるのかな?」 腰の皮袋をまさぐり案内地図
2023年10月24日 21:33
1話 イヨーカの森 ――世界の北側に位置する大陸にディザイガ城がある。 ディザイガは数々の騎士団を所有し育成もする。その城下町である城都ディズドは大きな騎士学校を構えている。「――おい、早くしろよ」 騎士学校寄宿舎の門前で、騎士学校の制服を着た淡い赤髪の少年が振り返った。「うん。今行くよ」 それに返答したのは赤髪の少年と同じ制服を着たもう一人の少年。プラチナブロンドの髪が襟足
2023年10月24日 21:25
プロローグ ――辺り一面真っ白な空間に佇む一人の男性。 男性の足元にはポッカリと穴が開いており、その穴の先から覗くのは『とある村』。 男性は徐に右腕を正眼に構える。少し開かれた手の平から淡い黄色の光球が産まれる。「……ごめん」 光球を握りしめるかのように拳を作る。「…君に託すよ」 言いながら、拳を足元の『とある村』に向け、ゆっくりと開いた拳から眩い光が放たれた。 放たれた
2022年11月20日 21:36
はじめに本作品の主人公は勇者ではありません。また『転生』とありますが転生もしません。勇者でもなければ転生もしないし、転生した訳でもない主人公です。だがしかし。彼は紛れもなくこの物語の主人公です。また主人公は私であり、私は主人公です。主人公と私は一心同体です。なので。私は必ず主人公と一緒に物語のエンディングを迎えます。また掲載は長編完成版として掲載しますのでかなり長いかと思