見出し画像

実践で一番使えるクレーム対応法【動画付き】

セール中

〜11月12日 22:00

はじめに

本書は、実践を主体としたクレーム対応研修講師としてのキャリア38年の気づきをまとめた本です。
紹介する技法は、簡単かつ即効性があり、いろんな場面に応用が利く技法です。

内容は、次の拙著「一番つかえるクレーム対応のやり方がわかる本」(日本実業出版社)等の見直し内容をベースにしたもので、文章とイラストにYouTubeショート動画(限定公開)を加えて紹介しています。
テンポよく解説していますのでスイスイお読みいただけます。

お読みいただくと、「こんな簡単なことで?」と思われるかもしれません。
ご心配なく、その効果の大きさは実践によって実感していただけます。

私はこれまで、研修では「実践で使える技法(成果につながる技法)」を体得していただくことを第一にしてやってきました。
ここでは、「講師ではなく、パートナー」として「答えをお教えするのではなく、拠り所を提示して押さえどころを答えてもらう」といったスタンスをとってきました。
お相手がその分野の専門ですから当然ですが。

実は、講師を始めたころにはシチュエーションごとの技法を丁寧に解説していました。
ある段階で、「これでは実践で使いづらいな」ということを実感しました。
それからは、前述のスタンスに変えています。

シチュエーションごとの論理的かつ詳細な技法は、「読んだり、聞いたりの段階」においては「なるほど感」を覚えやすいものです。

ただ、私たちは生まれてからこれまでずっとコミュニケーションをしてきています。
私たちの表現には自分ならではが染み込んでいます。
それだけに、前述の技法は実践で使うとなると制約が多く、体得が難しいうえに応用が利きにくいと言えます。
つまり、研修が分かったの段階(理解の段階)でまとまりがちでした。

誤解のないように、これらの技法が良くないと言っているのではありません。
この技法はAI自動音声やロボットなど無機質なものを作るのにはとても有効だと思います。

ちなみに、私はこれまでクレーム対応研修を10数社で5年以上、長いところで24年担当しました。
前述の効果は、研修で実証済みです

本書の構成ですが、初めにクレーム対応に関する考え方を紹介し、その後にクレームの受け止め方からまとめ方までの技法を解説しています。
各項目完結型にしていますので、必要な項目から、あるいは必要な項目だけをお読みいただけます。

会社を団体や組織と、お客様を住民やステークホルダーといった言葉に変えていただければ、どの業種や職業の方にもお役立ていただけます。

また、例として紹介している言葉づかいと非言語による表現技法は、実際には相手のお客様や状況、内容に合わせて変えていただく必要があります。

本書が、あなたのビジネス・パフォーマンスのサポーターとしてお役に立てれば幸いです。
田中義樹



1 クレーム対応に必要なスタンス

クレーム対応では、次のいずれかのスタンスをとるようにします。
①非がある場合には、再発防止策を講じる
②非がない場合には、正しいサービス内容を理解していただく
③理不尽な要求にはソフトに毅然と対応する

クレームは、お客様の期待と実情とのずれから生まれます。

お客様の期待には、次の3つのレベルがあります。
・やるべきことはきちんとできているはずだ
・他と比べて劣らないものだろう
・自分の理想にかなうものであってほしい

クレームは、こうしたお客様の期待に反したから生まれたのです。

基本的には、クレームは改善意見であり、より良い製品やサービスづくりのヒントとして活用できるありがたいものです。

ただ、場合によってはお客様の誤解から生まれた苦情や、悪意のある言いがかり、理不尽な要求といったものもあります。

クレーム対応では、前述①②③のスタンスのいずれかで臨むようにします。
また、クレームにはお客様の不快感や怒りが伴っています。

クレーム対応は、相手のお客様の不快感や怒りといったマイナス感情を解消することからのスタートになります。

ここをきちんと押さえておかないと、お客様との関係がマイナスの悪循環に陥りかねません。

そして、一般的に、人間関係においてはマイナスの関係を解消すると、普通の関係以上のよい関係になるものです。
クレーム対応は、ファンづくりのチャンスでもあるのです。

ここからは、クレーム対応におけるお客様の不快感や怒りといったマイナス感情を解消することから、さらに一歩進んで、逆に会社やあなたに好感を持ってもらえる対応法を紹介します。


2 最初の受け止め方

(1)まずはマイナス感情の解消から

繰り返しになりますが、クレーム対応は相手のお客様の不快感や怒りといったマイナス感情を解消することからのスタートになります。

お客様のマイナス感情をやわらげ、解消するための最初の対応には次のことが大事です。
①非がある場合には、心を込めて謝る
②非がない場合にも、クッション言葉か配慮の言葉で受ける

(2)非がある場合の対応

非がある場合には、先ず心を込めて「大変申し訳ございませんでした」と謝ることが大事です。

また、言葉だけではなく、声と顔の表情や動作も合わせてお詫びの気持ちを伝えます

こうすることで、お客様に誠意が伝わります。
また、「この人はしっかりしているな」と受け止めていただけます。

軽い感じの「すみません」や他人事のような「そうなんですか」では、
「その態度は何なの? 本気で謝ってるの」
「そんな言い方はないでしょ。あなたはどこの会社の人?そちらに非があるんだか、まずは謝るべきでしょ」
と、お客様の不快感や怒りを増幅しかねません。

(3)非がない場合の対応

非がない場合には、クッション言葉か配慮の言葉で受けることが大事です。
クッション言葉と配慮の言葉は、お客様の不快感や怒りといったマイナス感情を和らげる言葉です。

クッション言葉としては「恐れ入ります」を、配慮の言葉としては内容によって次のような言葉を使うようにします。
・不快なお気持ちをおかけしております
・ご迷惑をおかけしております
・ご不便をおかけしております
・ご心配をおかけしております。

どのように対応すればよいのか、と迷ったときには焦ることなく「恐れ入ります」と受け止めることです。

そういう意味では、「恐れ入ります」という言葉はいろんなシーンに活用できる万能な言葉です。

(4)非があるかどうかわかりにくい場合の対応

非があるかどうかわかりにくい場合にも、
「そんなことはないと思いますが…」
といったお客様を疑ってかかるようなことは言わないようにします。

前述(3)のようにクッション言葉か配慮の言葉で受けることが大事です。

それに、事情が把握できない段階での
「大変申し訳ございませんでした」
といった対応にもリスクがあります。

たとえば、その要求がお客様の悪意によるものだった場合、
「最初に謝ったではないか。非を認めたことだろ」
といった展開になりかねないからです。

大事なことはお客様が言わんとすることを理解する対応です。

以上のような対応は、担当者だけではなく、最初に受けた人にとっても重要なことです。

「よくあるコト」としては、コトが大きくなった原因は「最初の対応のマズさだった」といったものです。
上司のところに上がってきたときには何が何だかわからない状況も、紐解いてみたら「最初の対応がマズかった」といったコトです。

クレーム対応において特に大事なことは、最初のボタンをかけ違えないことです。


3 ふさわしい人と場所で対応する

(1)ふさわしい人とは

クレームには、ふさわしい人や場所で対応する必要があります。

ふさわしい人で、という点では次のことが大事です。
①代表者として対応する
②担当者は第一責任者として対応する
③引き継ぐ際には被引継ぎ者の態勢がつくれるようにする

(2)代表者としての心がけ

クレームに対しては、誰もがもきちんと対応することが大事です。
「私は担当者ではないですから」「私が行ったわけではないですから」といった言葉は禁句です。

お客様からすれば、誰もがきちんと対応してくれてあたり前なのです。
「担当者がどうのこうのは内輪のことでしょ」です。

確かに、的確な対応をするためには担当者に引き継ぐ必要があります。
ただ、最初に対応する人の言動が、次の展開に大きく影響します。
対応次第では、新たな火種になりかねません。
逆に、解決への大きな力にもなります。

誰が対応しても、「ああ、そうですか」ではなく、「ご心配をおかけしております」といった配慮の言葉かクッション言葉で受け止めることが大事なのです。

クレーム対応力は、全社員が身につけておくべき能力です。

(3)第一責任者としての心がけ

担当者としては、会社の代表者として責任を持った言動をとることが大事です。

「私は決められたとおりにしているだけですから」
「私は管理者ではありませんから」
といった姿勢は、お客様の不快感や不信感を助長することになります。

まずは、担当者であるあなたが責任者として対応するようにします。

お客様から「部長を出せ」と言われた際には、
「私、○○と申します。私が担当でございますから」
と対応することが大事です。

「駄目だ、部長を出せ」と繰り返されても、少なくとも2回は担当者として受け止めるようにします。

こうすることが、お客様の信頼度を上げることになるのです。
それでもだめなら、直近の上司に事情を説明して引き継ぎます。

ただし、お客様の健康を害するなど、会社としての責任の重大さによっては、すぐに社長や部長が対応する必要もあります。

(4)引き継ぐ際の心がけ

引き継ぐ際には、被引継ぎ者が適切に対応できるようにすることが大事です。

それには、
「不快なお気持ちをおかけしております(配慮の言葉)。恐れ入ります(クッション言葉)。お客様、こちら総務でお伺いしておりまして、きちんと担当のほうで対応させていただくために、差し支えなければお名前と状況をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「○○の○○という者だけど、…」
「恐れ入ります。担当のほうへ電話をおつなぎします。少々お待ちいただけますか?恐れ入ります」
といった対応によって担当者に引き継ぐことです。

ここでは、担当者が
「○○様、担当の○○でございます。このたびはご心配をおかけしておりまして、申し訳ございません」
といった感じで出られるようにします。

被引継ぎ者の最初の言葉が
「お客様どういうことでしょうか?」
では、
「なに、どういうことだと、さっき言ったぞ。何回言わせるんだよ」
「まずは詫びるべきでしょ。あなた担当者でしょ」
というように、最初のボタンを大きくかけ違えることになります。

少なくとも、事情に合わせて、
「非がある場合には謝罪」
「非がない場合には配慮」
から進められるようにすることが大事なのです。

(5)ふさわしい場所とは

クレーム対応では、場所も大きな影響力を持っています。
クレーム対応は、当事者だけのものではありません。
ここでは、周囲への配慮が大切です。

ところで、一般的に激情派のお客様のほうがクレーム対応は容易だと言えます。
ほとんどのケースがお話を聴いているだけで解決します。

ただ、ダメージが大きいのは、怒り心頭の大声や態度が周囲のお客様の気持ちを不快にさせることです。
つまり、その状況によって周囲のお客様の気持ちの中に
「どこか別の場所でしなさいよ。この店はダメだな」
という思いが生まれることです。
このケースの場合は、場所を変えるようにします。

それに、内容や状況によって場所を変えることは、相手のお客様への気配りでもあります。
こうすることで、お客様の気持ちを早く冷静にすることができます。

また、「立つ瀬がなくなる」といった心境の発生を防ぐこともできます。
加えて、お客様の気持ちをプラスの方向に向けることができます。

そこで、「場所を変えるには」ということですが、理不尽なお客様には毅然と対応できる場所にします。
また、原状回復や損害賠償が必要なお客様には誠意が、提案型のお客様には感謝の気持ちが伝わる場所にします。

ここから先は

15,217字 / 16画像
この記事のみ
セール中
¥500
¥ 300

10月13日 22:00 〜 11月12日 22:00

よろしければサポートをお願いします。いただいたサポートはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!