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心は移ろいゆくもの

高校生の頃、仲の良かった男友達が中学校の時から好きだった女の子に思い切って告白し、振られてしまったことがあった。
その女の子と友だちだった私は、男友達からよく相談を受けたり、「廊下ですれ違ったけど今日もかわいい」みたいな報告メールがしょっちゅう届いたりしていた。(当時はガラケーの時代でSMSやEmailが主な連絡手段)

うまくいけばいいなと思って応援していたが、その思いむなしく彼のこの恋は実らなかった。
一度は答えが出されたが、彼の中で彼女への思いは揺るがなかったのだろう。
メールのやり取りをしている中で「俺は一生、彼女のことを好きなままでいると思う。」
と宣言しており、本当にこの人はずっと、彼女のことが好きなままでいるのだろうなとピュアな高校生だった私は何か熱い想いを感じた。

この時、私はこの男友達の友人のことが好きだった。
同じように男友達によく相談をしたり、「今日ワックスで無造作ヘアになっててめちゃかっこいいんだけど」みたいな報告メールを送ってキャーキャーしながら片思いを楽しんでいた。

うまくいくように応援してくれていたが、その思いむなしく私の恋も実らなかった。
なんとなく私も宣言まではせずとも、すぐに彼のことを忘れるとか、心変わりはないかな…とぼんやり思っていた。

お互いに振られたけど、すぐに忘れなくてもいいよね、相手のことをずっと想ってようぜ、なんて話しながら変わらずメールをしたり一緒に帰ったりしていた。
そのうちふと、真っ直ぐな熱い思いを持っている男友達と一緒いると、楽しくて心臓が高鳴って、帰り際にバイバイするのがさみしいと思うようになっている自分に気づいた。
そう、早くも私は心変わりをしていた。

しかし、向こうは「ずっと好きなままでいると思う。」と堂々と宣言している。
私に気持ちが傾くことはないのだろう。そう思って、これまでの関係が壊れないように自分の本心は隠して今までと変わらない態度で接し続けた。

しばらくすると、その男友達は「同じクラスに気になる子ができた」と言い始めた。
望みがない片思いを終わらせて新しい恋をするのは当たり前のことなのだが、当時の私からするとはぁ?案件である。
ずっと好きなままでいるってほんの3ヶ月前くらいまで言っていたのに。

なんだか裏切られた気分でショックだったし、今までの日常が変わってしまうような、遠い存在になってしまう感じがして、正直内心穏やかではなかった。
だがこの後彼らは体育祭でクラスのチームワークを深めるとともに距離を縮め、夏休み前に長く会えなくなる前になんとか…!という学校全体のソワソワした雰囲気も後押しし、男友達の告白がうまくいき、2人は付き合い始めた。

付き合うことになったと報告を受けた時、今言ってもどうしようもないし彼女に対して悪いことだとわかっていながら、「実は君のことちょっといいなって心が動いてたんだよね…」と正直な気持ちを伝えずにいられなかった。

すると向こうも「それ、今言うか…。俺も実はちょっといいなって思ってた時あったんだけど、、君はあいつのこと変わらず好きだって言ってたから、出る幕ないなって思ってて…そこに彼女と仲良くなったって感じで…。なんか、ごめん。」とお互いに移ろいゆく自然な思いを隠したがゆえに、タイミングがズレてしまった。
すれ違っている2人を見ているドラマの視聴者のような存在がいたとしたら、「素直になって〜!!言うの今だよーー!!!」なんて教えてほしかった…と思うくらいだった。

私はこの時に人の心は移ろいゆくものだと実感した。

当時は自分のことは差し置いて、その男友達が言っていたことと現実が違いすぎて結構ショックを受けて、人の言う事なんて信じられないみたいに他責な考えをしていた。
でも今更ではあるが、よくよく考えてみたら自分だって心変わりしていたし、うまくいかないだろうと思って関係の変化を恐れて本心を隠す選択をしたのも全部、自分だ。

相手も含め自分も含め、変わらないものはない。
むしろ人は、自分の幸せのために変わっていく必要がある。

人の心が移ろいゆくことをまざまざとわからせてくれたこの出来事は、
こうして今もまだ、胸の奥深くに甘酸っぱい思い出として残っている。





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