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真冬の大逆転ホームラン

大逆転。偏見であるが、賢い人の為のワードと思える。

閃きと戦略で状況をひっくり返す。憧れる。

けれど大逆転はみんなのものであるべきだ。
誰にでも引き起こせると信じたい。

僕は大逆転を引き起こすのは
足掻き続ける胆力だと思う。

ごく普通、寧ろ不器用な営業マンの僕でも
真冬に大逆転を引き起こすことが出来た。

とある冬の話である。

あるサービスの契約更新が
真冬に迎えようとしていた。

長い間、我々のサービスを使って下さっていた。

300名規模の会社だ。
数多くの他社が虎視眈々と機会を狙っていた。

要するに更新時期にあわせて、
複数の会社が自社に乗り換えてもらえるよう提案するのだ。

正直、そこまで他社毎に大きな差別化が
あるサービス領域でもなかった。

当時はお客様の経営状況も苦しかったので、
値下げ前提の契約更新とのことだった。

案の定、他社は現在の金額の半分程度で
お客様に提示をしてきたようだ。

他社の情報を整理した上で
上司に値下げのお願いをした。

「こんだけなら。値下げなんかに頼るの?」

雀の涙の値下げだ。

自分も弱かった。
上司に嫌われていたと思っていたので、
怖くて、これ以上何も言えなかった。

「すみません、既にギリギリでして、この金額です。ただ、弊社なら〜」

お客様は悲しそうな顔をしていた。

レポート作成とか自分なりに出来ることは伝えた。
足掻きは止めていなかった。

けれど、やはりお客様曰く、失注濃厚なようだ。
今回は金額が全て、それ以外に検討ポイントはない。

もう一度、上司に相談したが、再却下。はて、万策尽きた。

長年付き合ってきたお客様が離れていくと思うと、
小刻みにボディーブローを受けるようなお腹の痛みを感じた。

1年目に迎えた大窮地。既に他の案件も炎上しており、ボロボロだ。

最後に他の商材の話をしにいこう。
今までの御礼が本当の目的だけど。

訪問日の前日、大雪が出向く地域に降ると聞いた。

最後に僕が出来ることは、
遅れずに訪問することだけだな。そう思った。

朝9時の打ち合わせの為に始発に乗っていった、
家から通常は1時間20分ぐらいで着く。3時半の余裕を持って出発。

案の定、電車はすぐ止まるが、何とか8時頃に着いた。
地方に訪問先があるので、カフェもない、スーパーの屋根の下で待った。

革靴の中の靴下が冷たく湿り始めて、
何か情けない気持ちになっていた、勝てるわけでもないのに。

けれど、足掻く。朝9時に電話を掛けた。

「何かありました?まあこの雪ですし、遅刻される連絡かなあって思ってましたよ。」とお客様。

「いえ、始発で出たんで、もう前にいます。」と私。

「マジですか。」とお客様。

その打ち合わせは妙にお客様側から
積極的に弊社のサービスをより理解しようとしてくれていた。
レポート対応など、自身の足掻き含め。

実はこのやり取りの後
お客様も高くとも弊社を選べるように
社内で色々政治をしてくれたそうだ。

情けないが、営業がすべきことをお客様が助けてくれた。

結果的に今でも我々を使ってくれている。

信頼がより強固になり、他の商材の話もぐんぐん進んでいった。

え、遅刻せずに行っただけじゃん?

僕もそう思う。よく分からない。

勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし
と野村監督が言っていた。それを体現しただけ。

個人的には、2ストライク3ボールから粘って粘って、
最後の悪足掻きでホームランを打った。

その前に足掻いて繋いだランナーが全員ホームに戻り逆転。
ランナーがいなければ、逆転は出来ていなかったかもしれない。

逆転劇には戦略の側面で語られやすいが、
ただ足掻き続けることで生まれる逆転もある。

大逆転は賢い人の言葉じゃない。
勝利の為に足掻いた人の言葉だ。

この真冬の足掻きが社会人で初めての成功体験だっからこそ、
当時の雪で冷えた指先の感覚含め覚えている。

これからも僕が求める物には
真冬でも真夏でも
カッコ悪く足掻き続けたいなと思う。

点数に大きなビハインドがある中、
2アウト2ストライク3ボール、ランナーなし。
さあ、みんな、プレイボールだ!

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