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【原発をとめた裁判長 そして原発をとめる農家たち】と【後世への最大遺物】 ⑩


人が常に管理し続けなければならないということは人が管理できないのと同義である

「私が原発を止めた理由」第1章 ハイデッガーのことば



原子力利用と核兵器開発は連結双生児のようにつながっている。
                              はじめに

「原発と権力──戦後から辿る支配者の系譜」山岡淳一郎著 ちくま新書

 私は、オーストラリアのカカドウ国立公園のなかにある、露天掘りのウラン鉱山の光景を思い起こしていた。そこに住んでいるアボリジニーが、地表を掘り込まれたことについて、「背中に穴をあけられたようだ」と苦痛をこめた表情をみせた。
              第2章 首都移転とともに進む “処分所研究„
                     ドラム缶にカウンターが反応

       (関西、九州、四国電力などがウラン鉱山開発会社へ出資)

「原発列島を行く」鎌田慧著 集英社新書

数字の上だけで物事が進んでいき、それがちょっと間違ったときの怖さはもちろん、本当に漏れがあったときの怖さとか、人間の体が直接被害を受けたときの痛みや熱さであるとか、そういったものは感じなくなってしまうでしょう。非常に古典的な古くさいことを言うようですけれども、技術というときにはやはりそういうことが原点にないといけないのではないか。
                7 技術者の変貌 ヴァーチャルな世界

「原発事故はなぜくりかえすのか」高木仁三郎著 岩波新書


第3章 責任について

1 三・一一後の私たちの責任が重い理由
►1955年原子力基本法成立
►1973年中東戦争→産油国から石油を安定的に輸入できない・オイルショック→火力発電所中心のエネルギーを政策を転換→
►1975年「電源三法」成立

原発立地の難航に対して、「電源三法(発電用施設周辺地域整備法、電源開発促進税法、電源開発促進対策特別会計法)」を七四年の六月に制定したのだ。立法化を担当したのは通産省だった。電源三法のしくみは、電力会社から販売電力量に応じて一定額の電源開発促進税を徴収し、それを開発特別会計の予算にして、さまざまな交付金・補助金・委託金に使うというもの。発電所の立地自治体には「電源立地促進対策交付金」という「迷惑料」が支払わられた。

「原発と権力」150ページ

原発を立地した地方公共団体に税金が投入されるというシステムが成立し、これを背景に、電力会社は多くの有力政治家や学者の支持のもとに全国で原発を建造していきました。これは先人たちからの負の遺産といえます。

「私が原発を止めた理由」128ページ

「しかし、その先人たちの責任よりも、三・一一を経験した私たちの責任の方が遥かに重いのです。その理由は三つあります。」129ページ

一つ目は──使用済み核燃料を保管する場所がありません。


高速増殖炉もんじゅ

*1放射性物質の無毒化の試みはすべて失敗に終わりました。高速増殖炉もんじゅを中心とする核燃料サイクルが実現すれば、使用済み核燃料をあまり増やすことなく電力の供給ができるという夢も二〇一六のもんじゅ廃炉によりついえました。

129ページ

仮に原子力を推進する人たちの思惑どおりに「プルトニウム」の利用ができたとしても、その暁に利用できるエネルギーの総量は、ようやく石炭に匹敵する程度のものでしかなく、いずれにしても原子力が化石燃料を超えるエネルギー源となることはありえない。

「原発のない世界へ」161ページ


二つ目は──「原発の問題は、立地市町村だけの問題でも立地県の問題でもなく、我が国全体の問題」だから。

しかし、「復興」大臣の受けとめは──
「まだ東北、あっちの方でよかった。首都圏あたりだと莫大、甚大だったと思う」今村雅弘復興相(2017)

「現に帰ってる人もいるじゃないですか」
「裁判でもなんでもやればいいじゃないですか」

お上が決めた【20ミリシーベルトOK】の基準に逆らって避難先から帰らないのは当人の勝手、自己責任だ──「関係ない」と考えているようだ。


三つ目は
──基準地震動が「今なお二分の一の過小評価のまま」
原発建設当事、「関東大震災は震度7で、ガル数としては400程度と思われていました。」「地震学者の間では『980ガル(重力加速度)を上回る地震はないのではないか』とも言われて」いたそうですが、「一九九五年の阪神・淡路大震災を契機として」整備された地震観測網によって、震度7は1500ガル以上に相当することがわかりました。
「本来ならば原発の運転は諦めざるを得ない状況であることが明確になった」のですが電力会社は基準地震動を徐々に引き上げ、お茶を濁しています。
大飯原発建設当事の基準地震動は405ガル。「(2021年)現在の大飯原発の基準地震動は856ガル」でしかない。「電力会社は、その危険性を充分に認識できているにもかかわらず再稼働を推し進めているのです。」

表1 震度と最大加速度の概略の対応表(36ページ)
震度等級  最大加速度(ガル)
震度7   1500ガル程度~
震度6強  830~1500ガル程度 ⇦大飯原発856ガル
震度6弱  520~830ガル程度
震度5強  240~520ガル程度
震度5弱  110~240ガル程度
震度4   40~110ガル程度


⑪へつづく


                  ⑩    

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