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変革の導き手としてのブランディング

山之口援 明治ビジネススクール兼任講師
(日本BtoB広告賞ウェブサイト部門審査委員)

ブランドをデジタルでアップデートする。

日本BtoB広告協会が主宰する、日本BtoB広告賞において、デジタルコミュニケーション領域を担っているのが、ウェブ部門です。ウェブ部門は、2004年に新設され、その後<一般サイト><リクルートサイト><スペシャルサイト>の3部門へ拡大。2022年からは、<企業PR><製品PR><イベントPR><学校案内><新卒採用><中途採用>の6部門へと再編しています。

筆者はウェブ部門の審査員を2007年より拝命しており、毎年この時期は、デジタルとコミュニケーションで企業/組織がどう変化しているかを考える、貴重な時間となっています。審査は、数多くの作品から、新しいコミュニケーション表現例を発見し、その新しさの意味を考えながら、順位を付けていくことです。そして、予想外のビジネスやサービスを知り、その企業の思いに共感する体験を得る機会でもあります。オーディエンス/受け手の気持ちになって、コミュニケーション施策を一旦受け取ってみるうちに、施策のトレンドや、新しい考え方をキャッチすることができます。

この連載では、審査を通じて得た知見と、実際に今、マーケティングの現場で起こっていることを、「ブランディング」という枠組みで整理することを目的に書いています。それは、「ブランディング」が、企業の大小や、新旧、また非営利組織において、その呼び名を変えながらも、いつも課題にあがる「テーマ」だと思うからです。これを、よりシンプルかつ実践的に理解したいと考えています。

今回は、これまでの連載において採り上げたテーマや用語を振り返りつつ、そもそも「ブランディング」とは?という問いの根本に立ち戻りたいと思います。ブランディングのゴールは「企業の存在感/プレゼンス」を確立することですが、それを導き出すための最初のステップは、「自分とは何者か?」を探す作業が鍵になります。

企業/自社のコア/中核にあるものを探す。

ブランディング、企業や製品の「アイデンティティ」を明確にし、生活者に印象づけることを目的とする活動です。製品/サービス名、もしくはその提供元の企業名をコミュニケーションすることにより、競争力を高め、消費者からの信頼を得ます。ブランディングは、消費財でのマーケティング活動に始まり、その後、顧客/ユーザー、従業員、投資家へとその対象範囲を広げ、BtoCとBtoBを問わず、企業の競争力を高めるための手法として広く活用されています。

ここで、まず確認しなければならないのが、「アイデンティティ」とは何か?ということです。

アイデンティティとは、人が自分自身を認識し、自己の存在を理解するために必要な手掛かり/気づきのようなものです。アイデンティティは、人が生まれたときから持っているもので、環境や経験、文化的背景などの影響を受けつつ作られる心理的態度と考えられています。アイデンティティは、自分が誰であるか、何を信じているのか、何を望んでいるのかを理解するのに役立ちます。また、アイデンティティは、個人としての自尊心や価値観を形成する上で重要な役割を果たしています。

アイデンティティは、もともと心理学/発達心理学の用語で、「自己同一性/自我同一性」と訳されます。心理学辞典(1999)では、 「『自分は何者か』『自分の目指す道は何か』『自分の人生の目的は何か』『自分の存在意義は何か』など、自己を社会のなかに位置づける問いかけに対して、肯定的かつ確信的に回答できること」 と定義されています。

上記の定義は、個としての「自分」を指すものですが、「ブランディング」を考える上では、組織のアイデンティティを理解する必要があります。

組織のなかで共有されている何かを探す。

組織のアイデンティティとは、その組織が持つ独自の価値観、文化、歴史、そしてステークホルダーが組織に対して知覚するイメージなどの要素が結合したものです。アイデンティティは、組織の存在意義や方向性を示す重要な役割を果たします。例えば、企業がアイデンティティの一環として「〇〇で社会に貢献したい」を掲げている場合、その企業の経営方針やビジョン、戦略などは、このアイデンティティが言語化され、具象化されたものです。

企業のアイデンティティは、組織内のメンバーにとって重要です。アイデンティティを理解共有することで、メンバー同士の結束力が高まり、組織の目的達成に向けた取り組みが促進されます。また、アイデンティティは顧客や社会からの組織イメージにも大きく影響を与えます。アイデンティティは、組織の内外において交流し信頼を築くために不可欠なものと言えます。

このような元型であり活力そのものの何かが、手に取ることはできずとも、存在していることを、誰もが納得しているでしょう。それが、「企業理念」、「使命」、「ビジョン」、「価値観」、「パーパス/存在意義」、「中核価値」、「DNA」であり、企業のアイデンティティを確認し共有する方法論として広く使われています。

ブランディングの第一歩は、企業の「アイデンティティ」を探すことから始まります。

企業アイデンティティを相手に届ける。

無形財、サービスの要素が大きい場合は、ヒトをブランド化するしかない

図1は、企業アイデンティティを「コア/soul」と見立て、その思いが一緒に働く仲間である社員へと伝わり、そして、顧客、株主、社会といった外部のステークホルダーへと伝搬するメカニズムを図式化したものです。

企業は、日々さまざまな形で、社内外ステークホルダーとのコミュニケーションを行っています。それは、広報や広告といったメディアを通じた活動だけでなく、営業活動、IRミーティング、そして日々の会議やメールなど、コミュニケーションの形態は多岐にわたります。この各種コミュニケーション活動を、企業/ブランドの理解や共感を促進する活動と意図的に読み替えるのが、「ブランディング」です。

関わる全ての人々の思いが、日々の活動の隅々まで照らし、その思いが一つひとつの判断と行動として積み重なり、それがいつしか固有の企業文化として語り継がれるようになる。そのような過程を経て、企業アイデンティティは現在の状態になっていると考えられます。

また、企業アイデンティティには、誰が仲間で、誰はそうでないかを判別する機能があります。むしろ、そのような凝集性こそが、皆を未来へと運んでいく力の源になっていると考えられます。

株主、取引先、顧客など、外部ステークホルダーとの関係性も重要なテーマです。ステークホルダーによって、関係性の目標は異なります。例えば、戦略を理解する(株主)、信頼を醸成する(取引先)、価値に満足する(顧客)といったことです。各目標にむけた、各領域の活動/コミュニケーションが展開されるとき、中長期的な視点での一貫性をもたせるための参照点が(理想の)企業アイデンティティです。

ブランディングを考える上では、企業アイデンティティの外にいる、他人からの視点が大切になります。「自分とは何者か」?という問いには、「関係を深めたい誰かの期待」や「比較される誰かとの違い」を考えることで気づきのあるもの。そして、「私たち」の内も外も、ともに未来へ進む意思/活動は、企業アイデンティティを鮮新していく好循環をつくりだします。これがブランディング活動の理想/ゴールだと考えています。

社会のなかでの自己の位置づけを問う。

未来の社会でのわたしたちの信用・信頼のカタチを想像する

図2はブランディングの効果を組織の経済学の知見を参考にして説明したものです。新原浩朗「組織の経済学のフロンティアと日本の企業組織」では、現実の企業の組織は、機械のように合理的な「チーム」と無秩序な「ゴミ箱」に中間として存在し、日々変化するものと考えています。その不安定で不完全な組織に「秩序」を与えるファクターとして、「文化」(culture)「信用・信頼」(trust)「評判」(reputation)を挙げています。

高い評判は、高い信用・信頼によってつくられ、良い評判を保持するためには、信用・信頼を守ろうとする意思につながります。これは、安定的な取引関係や協調を強める正のフィードバックサイクルです。同じように、優れた組織文化は、信用・信頼が試される与見不可な状況において対応行動の指針として機能するとともに、信用・信頼獲得に係わる判断と行動の積み重ねによって組織文化は深みを増していく正のフィードバックサイクルが想定されます。

この「組織文化」「信用・信頼」「評判」が好循環するメカニズムが設計できれば、「ブランディング」は成功だと考えています。

多くの企業において、課題は共通しています。より正確にいうと、変革期に「ブランディング」という言葉に興味を持った理由には共通要素が大きいということです。それは「何かが十分表現できていない」もどかしさであり、ブランドの「コア」がしっくり定義できていない課題です。

評判は複数の指標で測ることができます。信用・信頼は定性的な評価が可能です。しかし、組織文化はすでにあるもので、それを操作可能な変数として取り扱うことは難しい。よって文化/企業アイデンティティを所与のものと仮定しつつ、信用・信頼を形成する要素を収集し、コミュニケーション活動のプロセスのなかで試行錯誤をすることが、ブランディングの基本原理と考えています。ブランドの旗印の下で、自社の信用・信頼を高めていく活動の精度を高めていくことです。

文化と同じく、理想の信用・信頼の形も、人/事業の数だけ存在します。信用・信頼とは、自己を社会のなかに位置づける問いかけであり、この現段階で得られている答えです。「パーパス/存在意義」とは、自社の目指す信用と信頼の形を言語化したものです。時に、わたしたちの「信用・信頼」は、いつもの安定状態から逸れ、突発的な事件により厳しく自らを試される時もあります。このような予見できない事象の発生への対応にあたっては、広い適応力を持った単純な原則に従うことが最善であり、人は誰しも覚えやすい原則をもっておきたいようです。

この原則/ルールは、焦点(focal points)とも言われます。「焦点」は過去の経験の産物、過去の類似した状況において成功したことのある原則が選ばれる傾向にあり、予見できない出来事をどのように取り扱うかに対する反応パターン(の記憶)が、「文化」を形成すると考えられています。

ブランディング活動を設計する。

さまざまな企業活動をコミュニケーションの視点から活性化する

図3は、ブランディングの活動を、「コミュニケーション対象(アウターvs.インナー)」の軸と、「過去から現在(価値観)、現在から未来(戦略)」時間軸で、施策のパターンを整理したものです。

左下(過去~現在&社内)の象限に位置するのが、理念や規範です。経営理念としてまとめられた文章だけでなく、創業者、中興の祖となる経営者の語録や、社史の印象深いエピソードなど、企業文化を理解する情報はここにあります。大企業がパーパスを規定するにあたり、経営者が自社の歴史を紐解き、そして将来への「意味」を見出していく過程が大切なのは、価値観を方向転換するのはトップにしかできないことだからと思われます。

左上(過去~現在&社外)の象限は「SDGs/パーパス」が主たるテーマです。社会と企業のサステナビリティを同期化することで、顧客満足を超えた信用・信頼を形成する活動がここに含まれます。パーパスから長期目標そして戦略をステークホルダーと共有するには、開示様式が標準化された統合報告書の項目に準拠することで理解度/透明性が高まります。

右下(現在~未来&社内)の象限に位置するのが「社員エンゲージメント」です。社員の満足度を高め創造性を発揮してもらうことを目標としたブランディング活動です。定点データにより、パーパス/の浸透度、価値創造指針の実践度、主要施策満足度などを捕捉分析することが行われています。また、各指標/態度データと、一人当たり売上利益などの客観指標と相関を分析することにより、施策の成果を推定する試みも始まっています。

右上(現在~未来と社外)の象限は「未来への道筋」です。顧客に限らず社会からの企業に対する期待を形成するブランディングです。未来がどうなるかは誰にも分からないものですが、企業がその仮説、または「それ」を実現するためにワクワクしている思いを共有することは、ますます重要になってくる。

ブランディング活動は多岐にわたります。最終的にはこれら全ての活動がバランスの取れた状態でコミュニケーションできている状態をつくることが目標になりますが、まずはブランドのコアを探すことからです。なぜブランディングを強化するのか、まずは何を改善するためにコアを見つけるのかを、改めて問うことから始めます。

製品サービスを広めるブランディングに学ぶ。

ナイキ、スターバックスのブランド責任者であった、スコット・ベドブリの「ザ・ブランド・マーケティング/A NEW BRAND WORLD」では、ブランドを次のように定義しています。

ブランドは、上手な戦略、下手な戦略、合格点以下の戦略、問題外の戦略の総和である。ブランドは、最高の商品によって定義されると同時に、最低の商品によっても定義される(中略)ブランドは、内容を、イメージを、あるいは一瞬の感情を吸い取るスポンジのようなものだ。それは人々の記憶に焼きついた心理的概念となり、そのまま永久に残るかも知らない。ブランドを完全にコントロールすることはできない。せいぜい、方向づけたり影響をおよぼしたりすることができるだけだ。

スコット・ベドブリ「ザ・ブランド・マーケティング/A NEW BRAND WORLD」

この記憶のスポンジに、方向つけ影響をおよぼすのが、「ブランディング」です。ベドブリは、具体的な事例を紹介するなかで、次のように語っています。

「ブランドの中核価値を三語で簡潔に表現する」「きっちりとービジネス(またはカテゴリー)およびブランドの現在地と目的地を明示する」「戦略転換点とは、組織が発展していく過程における決定的な転機のことだ。(中略)人間の魂が試されることだ」「マーケティングとは、チャンスを活かしピンチを乗り越えるためにリソースを投入するプロセスであり(中略)活動を促す触媒である」…

スコット・ベドブリ「ザ・ブランド・マーケティング/A NEW BRAND WORLD」

製品サービスのブランディングには、飽和した市場でのブランドの生き残りをかけたマーケティング活動の成否を分けた知見がつまっており、それを企業/ブランドに拡張可能であることは、2000年代のサービス業、ITブランドの例によって、その事業へのインパクト効果は十分に検証されたと思います。次に、このブランドマーケティングの知見を企業/コーポレートに当てはめてみたいと思います。

ブランドの視点で価値創造活動を語る。

パーパス/存在意義を行動に転換する

図4は、企業の価値創造活動に関する「語り口」をブランディングの視点から整理するフレームワークです。財務と非財務の経営情報がバランスよく記載されている「統合報告書」で言及されている論点/視点を、抽出して整理したものです。

ブランディングを考えるにあたっては、3つのレイヤーに注目します。
上部の「パーパス/存在意義」は、これからの社会において自らが果たすべき役割です。創業の志や、使命、ビジョンなど、過去から将来にわたる理念の全てです。パーパス/存在意義、もしくは経営理念の見直しという形で、多くの企業がこのレイヤーに取り組んでおり、社員、投資家から一定の納得を得られているように思います。

真ん中が「価値創造指針」です。「パーパス/存在意義」の実現に向けた「戦略」と「固有の価値観」が交ざり合い、「行動指針」にまで昇華された言説、キーワードです。価値創造活動のステークホルダーへの伝達、理解、協力を促すと活動と考えると、その要となるのは、上部の「パーパス/存在意義」と、下部の「独自能力/無形資産強化の活動」をつなぐ、「価値創造指針/価値創造の行動原理」だと考えます。

パーパス/存在意義を検討し規定しても、どうもしっくりこない理由の多くは、この「価値創造指針」がうまく言語化されていないことにあります。パーパス/存在意義ほど理想的でも普遍的でなく、また「独自能力強化」ほどは具体的でないが、いま自分たちが行っていることの意味を理解し、これからやりたいことを発想するための、指針/呪文のようなものが、ブランドには必要です。

価値創造の行動原理である「価値創造指針」を考えるには、ベドブリのいう「ブランド・マントラ」(ブランドの中核価値を三語で簡潔に表現するブランドの道しるべ)の考え方が参考になります。ここで重要なのは、ブランドがこだわる価値を表すものとして選ばれた単語には、その企業でしか理解できない固有の意味があり、そして単語の組み合わせに企業固有の価値を表現されているということです。例えば、

ナイキ Authentic Athletic Performance
「本物のアスレティック・パーフォーマンス」

ディズニー Fun Family Entertaiment
「楽しいファミリー・エンターテイメント」

スターバックス Rewarding Everyday Moments
「満足を味わう日常のひととき」


日本企業の最近の事例として、ソニーを見てみましょう。ソニーには、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」というパーパスがあり、その展開のひとつとして、「感動体験で人の心を豊かにする」「クリエイターの夢の実現を支える」「安全・健康・安心を提供する」の「創造価値」が提示されています。この3つの創造価値ワードが価値創造指針を表していると考えています。

また、この3つの創造価値(の方向性)は、ソニーブランドを共有する各事業の目指すべき姿を考えるインプットとなっており、事業間連携を促進していくためにも重要な概念であることが推測されます。※コーポレートと事業にまたがるブランディング活動を具体化する設計原理は次回にまとめます。

自社のこだわりを棚卸する。

図5は、価値創造指針のベースとなる、企業の強み/関係性のドライバーを特定するアプローチを説明しています。自己が認識している特長/らしさを洗い出し、他者の目線で評価を加えて、伸ばす、もしくはこれからつくっていく強みを特定します。

まずは、自社で認識している特長(〇〇らしさ)を、できるだけ多くまた生の状態に近い形で収集することから始めます。情報源としては、社員アンケート、顧客/取引先の声、採用での評価軸、資本市場の評価に関連する資料等を参照して、特長(〇〇らしさ)を表す単語をもれなく収集し、類似概念のグループにまとめる作業を行います。

次に、グループ化された特長(〇〇らしさ)を、各ステークホルダーの評価軸と照らし合わせることによって、自社固有の「強み」を特定します。この作業は、ステークホルダーのことを理解することであり、理解を深めるために以下のようなステップを行います。

ステークホルダーを細分化し、特定のステークホルダーの意見や要望をより正確に把握します。また、顧客フィードバックなどの情報を収集し、分析を行います。このように、様々な情報を収集することで、ステークホルダーからの評判/評価と期待をより深く理解することができます。

また、自社の強みを特定するためには、競合他社との比較分析を行うことも重要です。競合他社の戦略や強みを分析することで、自社の優位性や改善点を把握することができます。

そのような検討を通じて、「自社固有の強み」から「伸ばす強み/その方向性」そして「つくる強み/その思い」を定義することで、価値創造指針の元型は見えてきます。そして、「パーパス/存在意義」「価値創造指針」「独自能力/無形資産強化の活動」の各要素間の整合性や共鳴度を確認することで、ブランディングのコアを表す言葉としての精度は高まっていきます。

BtoBコミュニケーションの可能性

本連載は、2021年8月号のBtoBコミュニケーション誌に「BtoB広告賞ウェブサイト受賞作にみる企業コミュニケーションの変遷と今後」が掲載されたことから始まりました。2004年から2020年までの期間の受賞作/講評を読み解くことにより、コロナ禍という予見不可の状況のなか、企業コミュニケーションとは何か、この先には何があるのかを考えたいと思ったからです。

第一回の連載では次のように書いています。

BtoB広告は、専門の新聞・雑誌や展示会、カタログなどを連動させ、ブランディングと営業を成り立たせてきた。そこにウェブサイトが加わり、やがて、データ、システム、ネットワークを核として、新旧アプリケーションは再編されていくだろう。その企みは遠大ではあるが、本当に必要な機能から、手探り手作りでシステム実装(開発)し、他と組み合わせて動かすのが、デジタルの流儀でもある。コミュニケーション活動を「連動」してきた知見は、これからのデジタルの時代でも役にたつ。個社、産業、時代によって、とりうる戦略が異なるように、企業コミュニケーションの形も多様である。しかし、他者とつながり、価値を共創する、態度や姿勢においては、個別事情に依らない共通点も多い。

日本BtoB広告協会「日本BtoBコミュニケーション2021年8月号」

本稿は、この「他者とつながり、価値を共創する、態度や姿勢」について、これまでの連載で採り上げたテーマを再検討し、再編成したものです。前に作成した図表を改定、用語の統一等を行いました。ブランディングを考える上で避けることのできないアイデンティティ同定作業については、製造業、サービス業、ベンチャー、地方自治体で検証作業を続けています。

人が動く言葉を見つけることは容易ではありませんが、相手と考える枠組みが揃うまで、言葉を手変え品替え繰り出すしかありません。その考える枠組みはまだ進化の余地がありそうです。

参考文献

新原浩朗「組織の経済学のフロンティアと日本の企業組織」日本経済新聞出版、2023年

スコット・ベドべり&スティーヴン・フェニケル「ザ・ブランド・マーケティング なぜみんなあのブランドが好きなのかをロジカルする」実業之日本社、2022年

本原稿は、一般社団法人日本BtoB広告協会が発行する「BtoBComunications誌」寄稿の内容を転載しています。

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