わたしとスポーツ

わたしは運動音痴である。
身体を動かす事に対してすこぶる相性が悪い。

そもそもわたしの運動音痴のルーツは
遡ること幼少期のデブからだ。

デブあるある第1位(わたし調べ)の
「将来は相撲取りになればいい」と

デブ=相撲

という安直な思想を周りの大人たちに
押し付けられるくらいにはデブだった。

その為、裡に秘めた才能を伸ばす果敢な時期に
デブだったわたしには家族でさえも当然に
運動というカテゴリーを育む事を
望みも期待もされてこなかった。
その事が現在に至ってまで
運動音痴である所以だと思っている。


ただ、そんなわたしでも
唯一できるスポーツがある。

それは、なわとびだ。

小学生の頃、近所の公民館で開催された
なわとび大会に参加した事があった。
子供会に属していた子は強制参加だったので
わたしも例外なく参加者として
登録されていたという訳だ。
そうでもなければデブは
そんな催し物なんてしゃしゃり出ない。
いくら小学生であっても
デブが身体を動かすイベントに参加して
ろくな事がないのはわかっていた。

案の定、周りを見ても
デブはわたし1人しかいなく
どう見ても関取が
迷いこんでしまった様にしか見えない。

「ここは相撲大会の会場ではなく
なわとび大会の会場ですよ。」

と呼び止められてもおかしくない程
わたしは浮いていたのだ。


審査は至って簡素なもので
皆で、いっせーのーせで跳び始め
失敗したらその場に座り
最後まで跳んでた子が優勝という仕組み。

皆が一斉に跳び始め
会場内はスポーツ特有の爽やかさと
熱気を醸し出してる中
関取のわたしはというと身体中の脂肪たちを
ここぞとばかりに上下に揺れ動かし
スポーツとは思えない何か
苦行を強いられてるような有り様で
必死になって跳んでいた。

そう、なぜなら
ビリだけは何としてでも避けたかった。

「デブはビリ」

という世の中のスタンダードにメスを入れ
どうしても世界を変えたかった。

───デブに優しい世界​───

それをこの手で勝ち取る為に
例え我が身の脂肪が引き千切れようとも·····。
そんな決死の思いで跳び続けた。

鬼気迫る関取に圧倒されたか
はたまた、わたしが一跳びするたびに
衝撃波でも出てたのかわからないが
次第に周りの子たちが失敗して座り始め
まさかの優勝を果たしてしまったのだ。

誰がこの関取のわたしが
優勝すると思っていた事か·····。
これには関取のわたしもビックリだ。

そんな事があり、わたしが胸を張って言える
唯一できるスポーツがなわとびなのだ。


たまに気になる男性から
「何かスポーツとかやってた??」と
聞かれる事がある。

「んー、なわとびかな??」と
とびきり可愛く答えるのだか
すこぶる反応が悪い。
それでも、なわとびには感謝してる。

わたしは今でもなわとびに
足を向けて寝れない。


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