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日本が核兵器禁止条約に参加するために

 2020年10月、核兵器禁止条約の発効が決定した。核兵器を違法とし核兵器の全廃を目指す史上初の国際条約である。世界の25%に該当する50の国や地域が支持するこの条約を、唯一の戦争被爆国であり核のない世界を目指す日本もこの条約に参加すべきだと思う。

 だがこの条約に参加するには大きな大きな壁がある。日本がアメリカの核の傘に守られているという現実だ。

核の傘とは・・・核保有国に働く抑止力を非核保有国に提供することで、非核保有国の安全を保障するシステムのこと。
アメリカの同盟国であり核の傘に入っている欧州諸国や日本、韓国などの非核保有国は、他国から攻撃を受けた場合アメリカが自国への攻撃とみなし報復するとの保障がされている。

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 核の傘に守られていながら核兵器禁止条約に参加することは、例えるなら右手で握手をしつつ左手で中指を立てる行為かもしれない。そのような卑怯な行為を、アメリカや核の傘に入る欧州諸国や韓国はもちろん、多くの日本人も良しとしないだろう。核保有国や核の傘に守られている国で核兵器禁止条約に参加する国は0である。

 物事には順序があり、核兵器禁止条約に参加するためにはまずは核の傘から抜け出さねばならない。そのためにはどうすればいいのか。

まずは、
①核の傘に入っている諸外国と会談し、理解を得る
次に、
②アメリカと会談し理解を得、核の傘を抜け出す手続きを行う
それから正々堂々と核兵器禁止条約に参加すればいい。
これで解決である。

 そう思ってから更に考えなくてはいけない現実が頭をよぎった。もう一つの壁、日本の周辺国のことだ。

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 日本の周辺国として、北にロシア、西に中国と北朝鮮、東に太平洋を隔ててアメリカがあり、その4か国は核保有国である。
■日本は核保有国9か国中、4か国に取り囲まれている。

核保有国とは・・・戦勝国であり常任理事国であるアメリカ、中国、イギリス、フランス、ロシアとインド、パキスタン、北朝鮮、イスラエルの9か国 これらの国は核兵器禁止条約に最も参加が望まれている国である

 更にその4か国のうち、ロシアと中国と北朝鮮の3か国の間に外交問題を抱えている。
■日本固有の領土である北方領土がロシアに実行支配されていること。
■日本固有の領土である尖閣諸島が中国に領海侵入されていること。
■日本国民が北朝鮮に拉致されていること。

 更にその3か国のうち、中国と北朝鮮の2か国は独裁国家である。
■中国と北朝鮮は民主主義の日本と全く価値観の異なる独裁国家である。

独裁国家とは・・・一個人や一党が長期にわたり絶対的権力を独占している国家のこと。代表的な独裁国家は中国、北朝鮮、アゼルバイジャン、トルクメニスタン、エリトリア、ベラルーシなど。

 更に中国と北朝鮮は社会主義国である。
■中国と北朝鮮は資本主義の日本と全く価値観の異なる社会主義国である。

社会主義国とは・・・個人の財産を禁じ、大きな政府である国が資本の管理を行い平等な社会を目指す国のこと。共産主義の前段階。
中国、北朝鮮、ベトナム、ラオス、キューバの5か国。 

 更に中国と北朝鮮は核兵器を年々増やしている。
■中国と北朝鮮は核兵器を年々減らすどころか増やしている

※参考資料 国際平和拠点ひろしま 核兵器保有数の推移より

 これが今の日本のリアルである。日本は決して安全な国ではなく強大な力を持つ虎と狼と犬に囲まれていた。

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 北方領土や尖閣諸島や拉致の問題を、国家でなく自分の家として考えるとリアルで生々しく悲痛な現実がある。
例えば、あなたの家の近所に3人の隣人がいるとする。
■その隣人があなたの家の一室に許可なく住んでいたら容認できるか?
■その隣人があなたの家の一室に毎日無断で入ってきたらどうするか?
■その隣人があなたの大切なパートナーや子供を・・・

 そんな状況の中で家を守るためにはどうすればいいだろう。
例えば警察、例えば警備会社、例えば防犯カメラを鍵など、何らかの「力」に頼らなければいけない。

 では国家を守るためにはどうすればいいだろう・・・。

 核兵器禁止条約に参加するため核の傘など抜け出せばいいと拳を振り上げた僕は、国家よりずっとミクロな家ですら様々な「力」に守られていることを知り、うなだれてしまう。ロマンチストな理想主義者だった僕は、考えれば考えるほど、リアリストな現実主義者に成り下がってしまう。

 強大な力を持つ隣国に囲まれた日本は核の傘を抜けて大丈夫なのか?
武器を持った大男たちに囲まれた僕は、手に持った防具を捨てたいのに捨てられずにいる。

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 核の傘を抜け出すことが本当に危険かどうかは誰にもわからない。
とはいえ国家の最大の責務は国民の生命、財産、国益を守ることである。
1億2000万人の命を預かる日本が、核保有国に囲まれているにもかかわらず、核の傘を抜け出すというギャンブルをしてもらっては困る。
完全なリスクヘッジをしてからでないと困る。
国民の生命が危険にさらされる可能性があるのに、核のない世界もなにもない。

 日本が条約に参加するため、しなければいけないことがもう一つできた。

①ロシアと中国と北朝鮮とアメリカに核を放棄してもらう
そのうえで、
②同じ核の傘に入っている諸外国と会談し、理解を得る
そして、
③アメリカと会談し、理解を得、核の傘を抜け出す手続きを行う

 国民の安全を担保し、諸外国に筋を通し、アメリカに卒業報告する。この3つの課題を解決してから正々堂々と核兵器禁止条約に参加すればいい。

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 現実を踏まえ日本の安全を守りながら核兵器禁止条約に参加する方法をここまで考えてきましたが・・・これ実現できるの???
考えれば考えるほど現実が見え、現実を見れば見るほど道は遠く険しい。
 守られる側の日本国民がロマンチストで理想主義者なのは許されるが(僕もその一人だ)、守る側の日本国家はリアリストであり現実主義でなければいけないということ。
 ただでさえ、日本は核兵器に反対はすれど直視はできず、実践的な議論を避け目を背けてきた。例えば、核シェアリングとは?非核三原則の持ち込ませず問題とは?75年を経て日本はこれらの問題に直視する必要があるのかもしれない。

 広島での原爆の死者数は14万人、長崎では7万4千人と言われている。唯一の戦争被爆国である日本、核を体験し核に涙を流した日本、その日本が率先して核のない世界を目指すことはとても尊い。核兵器禁止条約は2021年1月22日に発効予定だそうだ。すぐに叶う夢ではないかもしれないが、核のない世界は日本の悲願である。

#核兵器禁止条約 #核の傘 #日本 #アメリカ #中国 #ロシア #北朝鮮

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