じゃあ、いじめ問題の解決方法を語ろう(解決編)

「前回はいじめの原因について話したから、今回は解決編をやるぞ」
「わかりました。まだ読んでない方はこちらの前回の内容を見てからご覧下さいね」


「少しだけ補足な。前回で解決すべき対象として学校だけでなく、子供が接して真似てしまう周りの大人(地域社会)やメディアを挙げたわけだが、地域社会はこれからの解決方法で話すが、メディアのことは以下の『マスゴミの殺し方』の方を見てくれ」


「まぁマスコミ論の方は有料ですが、世界を変えようと頑張っている作者へのご褒美として我慢して下さい」
「自分で言うのかそれ――まぁいいや。というわけで解決に入るわけだが、結局今までの取り組みってどうだったかわかるか?それがなぜいまいちだったのかから話して行くことにするぜ」
「そうしましょう」

 『いじめは愛や友情を教えればなくなるものなのか?』~今までの解決方法の問題について~

「で、何か思いつくか?」
「加害者に道徳を教えるとか、被害者がいじめられた時の相談先を教えるとかそんなところですかね」
「そうだな。まず加害者の道徳についてだがこんな感じだよな。『彼らは愛や友情を知らないのです。弱いものの立場についてよく知らないのです。だからそれを教えることで、いじめはなくなるのです』って、無知が原因って話だよな」
「そうですね。でも前回の話を聞いていると、いじめる側は愛や友情を持ってるのかも知れません。加害者グループへの仲間意識からいじめという排除をしているだけなのですから」
「愛や友情は知っている。なら弱い者いじめしないように弱者の立場がわかるようにすれば大丈夫って、これまた無知が原因論はどう思う?」
「学べるんですかね?それ。いじめられた人間が、自分も含めて人間が一切信用できない精神状態がずっと続くって気持ちが、教えただけでなれるんですかね?」
「まぁVRでも何でも使って、とにかくできたことにしよう。で、それでそうすれば排除しない集団は作れるのか?」
「うーん。排除せずに何もかも受け入れた場合は、問題ある連中も入れてしまって壊れかねないですし、そのバランスを取れるちゃんとした身内ルールを自分達で作れるなら苦労はしないでしょうしね」
「なら今度は命の大切さを教えるとかどうよ。大切に思うなら攻撃しないかもよ?」
「それもまた排除の論理が出るのでは?自分達の周りの命だけが大切で、外が彼らを批判してきたら、自分達の大切な命を守る為に相手を倒そうとするのでは?
「なるほど。つまり加害者に倫理を身に付けさせるという努力はいまいちだと?」
「そうですね。それと、これ結局、責任を個人のせいにしてますよね。前回の原因編で集団の構造に問題があるとした結論にも合わないと思います」
「じゃあ被害者側が強くなるというのはどう?肉体的に精神的に強くなる。或いは制度を上手く活用できる人間になって、加害者追い出せるとかは?」
「うーん。個人の資質に左右されてしまいますよね。強くなっていじめが終わる場合もあれば、強くなれず続くこともある。それに強くなった側が復讐として加害者側に回ることも十分あり得る話でしょう」
「『戦略的な失敗を、戦術的成功で取り戻すことはできない』みたいな話だな」
「ん?どういう意味ですか?」
「戦争の小説とかによく出る言葉だな。戦争はこれを目的として戦い、これを交渉の落としどころにして終わらせると予め決めておかないと、勝ちまくった影響で周りの皆が敵に回って結局潰されてしまったみたいなことだな。つまりは、全体的な計画をちゃんと考えてから、個別の手段をやる計画を行えみたいな話」
「なるほど。さしずめこの場合、全体的な構造をどうにかしないことには、個人に努力や向上を要求したところで困難ってことですか?」
「そういうこと。個人の努力や向上のやり方でいじめがどうにかなった場合もあるから、それもやる必要はあると思うが、基本は構造の改革が大事ってことだな」
「なるほど。ところで被害者が相談するという、もう一つの旧来の解決策ってのはどうなんですか?」
「一応効果はあるから、それ自体を否定はしてない。いじめを解決できなくてもいじめについて話すとか、何の関係もないことを雑談したいとか、そういう要望はあるからな」
「ふむ」
「だが、相談できない人もいる。相談したところで結局学校が拒んだりなかったことにして、いじめを放置することもある。いじめを解決する方法としては十分ではない。他のやり方も必要になるが、それは後で書く」
「なるほど。やはり、構造ごと解決すべきってことですか」
「そういうこと」

「この章をまとめると、愛や友情を教えるより、弱者の立場を教えるより、命の大切さを教えるより、それらを発揮できる環境を作った方が良いって話ですね」
「まぁそんなところだ」

 『関わりが増えれば、学校は外部からの聖域ではなくなる』~新しい解決方法について~

「構造が大事というわけだから、前回出てきたいじめの構造をもう一度おさらいするぞ。それは①外部から隔絶された上で、②何らかの圧力がかかっているのに、③逃げることが困難な空間であること。が原因だったよな」
「まずは①からですね。これは、外部から隔絶させない為に、学校もまた市民社会の一部であるということを、子供も大人も意識させる仕組みにする必要があると思います」
「そうだな。それを子供に意識させるには、さっき挙げた倫理の授業が必要だろう。愛や友情や命の大切さなど道徳的なことを教えるだけでは不十分だから、一般市民の常識である法律がどうなってるかも教えることでバランスを取ろうと思っている」
「なるほど。法律ですか。いじめで脅して相手の物を奪うことは強盗で、それをしたら何年の懲役や罰金が必要で、その結果こんな生活を送る羽目になります。って具体的に伝えるだけでも、いじめを止める人が増えるかもしれませんね
「正義の法律的手順も覚えさせたいところだな。人を無暗に疑い決めつけるのではなく、厳密な証拠から相手を罰する力も身に付けさせる為に
「なるほど。で、他に外部から隔絶させない方法って何かありますか?」
現実に大人と接する必要があるな。あちこちに大人の目があるならいじめることはやりづらくなる
「うーん。でもどうやって近くに配置するのですか?」
「そうだなー。ここで最初に言った地域社会について話すか。つまりは、学校と地域社会が相互に深く関わる状態を作るって話だな」
「んー。どういうことですか?」
学校に地域の問題や、学校の問題を解決するコミュニティを作るんだよ。遊びながらでもいいから、楽しく、手伝える時に、手伝える範囲でいいからやるのさ。地域のゴミが酷いなら子供達も拾う手伝いをするとか、ウサギ小屋がないなら子供達に頼りにされたいお父さん達が作るとかをするのさ。その後でBBQでもしながら、他の家族や先生と交流して馬鹿話をしたり、これからの教育とは?みたいな真剣な話もするのさ。趣味のコミュニティもそこに含めて、それで地域のイベントに参加したりもして、協力と楽しさの輪を広げていく。それが学校と地域社会が相互に深く関わる状態ってことさ(秋津コミュニティなど)」
「なるほど。そういう関わりを通して、子供は市民社会の倫理や地域への愛着を学び、一方大人は大人で市民社会の問題の解決と、自分達大人は子供にどう接するべきかの振る舞いを考えるようになるということですね」
「そうすれば、外部から隔絶された聖域になることはないだろ。相手を知り、親しくなり、問題を解決した同志である相手に、どうして学校側は教育は聖域なので関わらないでくれと言うようになるのさ
「確かに」
「ちなみに変質者が入ったらどうするのか問題は、問題起こしたらGPS付けて近寄らないようにするとか、事件起こしたら去勢するとかそんなふうに刑法を改正しとけばいいんじゃね」
「なるほど。まとめると、これらは問題が起きる事前に、何とかして外部から隔絶しない環境を作るって話ですね」
「そういうことだな」
「じゃあいじめで酷い事件が起きた事後に介入するってことも、必要じゃないでしょうか?」
「そうだな。なら、いじめを法律で罰する介入も含めることにしよう。加害者や加害者の家族には賠償や逮捕や退校、教師や学校も監督者責任などで罰金や逮捕やクビもありにしよう

 『問題は、私と周りと周り以外の三段構えで解決しよう』

「次は②の何らかの圧力をどうするか?という話ですね」
「先輩が怖い。勉強できない。先生嫌い。家庭ウザい問題とかのことだな。なぜ勉強をやらなければいけないのか問題も追加しとくか。目的がないのに大変なことをやらされるってかなりの圧力だろうしな」
「へぇー。それも取り組むのですか?じゃあ教えてください。なぜ勉強をやらなければならないのですか?」
「それは勉強することで、いろんな生きていくに必要なスキルが手に入るってのが答えなのだろうけど、俺の考えは違うな」
「どういうことですか?」
「そもそも教科が悪い。それが人間の能力に必要な基本的なものを網羅していない。一斉に黒板で授業することも悪い。出来ない人やできる人の個別スピードにあった内容になってない。そういう本当に意味のある状態に教育を改革すれば、どうして勉強するのかなんて言わなくなるだろ
「あぁそれってもしかして、『教育への全理論 国数理社英をやめて道体技会思財身精を基本的な科目にしよう』で書いた教科を変える案と、『教育の全理論 教師は授業をやらなくて良い』で書いたコンピューターに入れた難易度合わせた講義を個別に好きに進める方式ですか?」




「そういうことだな。他の問題も今まで話したやつで解決ができるやつさ。先輩が怖い論は上下関係の振る舞い方がわからないって言い換えができる。なら、新しい教科のうちの財権と会話で学び、それを身に付けるのは課外活動をすればいい。教師や家庭に問題がある話なら、新しい科目の『身体』や『精神』で上手い付き合い方を身に付けさせるやり方もあるし、さっき言った地域コミュニティで解決してもらう方法もあるし、相談や支援場所も自治体カウンセラー専門機関が学校と組んで作れば良いと思ってるしな」
「なるほど。自分で解決手段を持つ。周りが解決してくれる。周りの外側が解決してくれるの三段体制ですか
「そうだ。どれか一つに負担をかけていては、それがダメになった時に解決できなくなるからな。解決のあては複数作らないと
「確かに」
「まぁ、今の現状は根本的に、生徒同士が敵になるように作られているからな。これを何とかしていこうって話さ。これはまぁ『受験制度をやめよう。そんな社会で使えない子供を産むようなものは』で書いているから、そっちで読んでくれ」


「その回で書かれたことを要約すると、個別に勉強する。できるを伸ばす。受験やテスト順位無しや相対評価なしで、生徒同士競争しないようにするってことですね」
「そうだ。それと、まだ書いてないけど課外活動も大事にしたい。学年や性格も得意力も違うチームで課題を解決させることで、違うってことは良いことだと考える。それを通して生徒同士間で真の多様性を、真の味方意識を持ってもらいたいなと思ってる
「それはいいですね」

 『逃げるでなく、出掛けるという状態にしよう』

「最後に③の逃げることが困難な空間である。ですね」
「地域コミュニティや、相談場所が開かれているだけで、逃げることはできるわけだが、これをもっと開けるようにしたいよな。これは学校外のことだし」
「つまり、学校内部でもっと移動できるように変革するってことですか?」
「そうだな。俺は5-1とか3-Aとか分けられる、学級制度をなくせばいいと思ってる」
「え?それ成立するんですか?」
大学を見て見ろよ。学部でクラスなんてのはないじゃないか。それぞれの人が好きにカリキュラムを組んで、それなりに好きな時間に好きな授業を受けることが成立してるだろ。ぼっちになることはあるかも知れないが、いじめになる程の圧力は起きない(研究室や教授職員側を除く)」
「あーなるほど。確かに成立してますね。それにコンピューター授業を提案しているのだから、教室に集まる必要すらないです。図書室でも、自宅でも、海を見ながらでも授業を受けることができます(引きこもりにも気が楽)。会話の授業とか直接やる必要があるものでもSkypeなどの手段を使えばできないことではありません」
「文化祭などの行事や地域交流とかは固定したクラスでやらなくても、流動的な課外活動のチームでやればいいわけだからな。毎回違うチームで組ませることで嫌なやつが長く続く逃げられない状態は避けられるし」
「ふむふむ」
「飛び級制度も、嫌な奴から離れるきっかけになるだろうから入れるべきだろう。あと、転校ももっと流動的にしたいところだ。いじめ理由は勿論のこと、ちょっとあっちの学校の部活に参加したいとか、秋の時期だけあっちの学食に美味しい定食出るんだよみたいな理由でも出来るようにしよう。評価制度を共有しやすくすれば、移動は簡単にできるようになるはずだ。とにかく逃げやすくするのさ。逃げることが特別じゃなく、みんな当たり前にやってることなら使いやすいだろ。或いは逃げるとネガティブな意味合いでなく、興味の赴くままに出掛けるというポジティブな状態を目指すのがいいだろうな。今後の社会の為にもな」
「今後の社会?もしかしてあれですか?そういえば前にあなたから聞きましたね。『AI時代は技術の陳腐化が早くて、同じ技術で利益を上げる時間が短くなり、企業自体の寿命が短くなるだろう。だから様々な能力を持って、様々な相手とその時々に組むプロジェクトを、複数進行するが前提になり、企業に所属しなくなる』と言ってましたっけ」
「俺じゃなくて、落合陽一が言ってたことだかな。だから学校制度を、その、『様々な能力を持って、様々な相手とその時々に組むプロジェクトを、複数進行する』力が身に付くように変えるべきだと思うのさ」

「とまぁこんなところかな。前回はほぼ要約だったが、今回は『いじめの構造』の理論は少ししか入ってない。あっちは教科をもっと最低限にして、地域に民間で学習塾作って、学校を選択肢の一つにするという話だったしな。そっちも悪くないかなと思ったが、俺は俺のプランがあったのでこの話を推したんだ」
「まぁ、両方読んで比べてみるのが良いかと思います」
「それと地域コミュニティの話は、岸さんの秋津コミュニティを参考にしてるから、そっちも読んでくれ(ちなみに、去勢の下りは俺が追加した部分なので、岸さんに責任はないぞ)」

「というわけで、いじめの解決論はどうでしたでしょうか?」
「疑問や反論があるならくれよな。不幸な子供をこれ以上生み出さない為にも、脱落する人のない楽しい社会を作る為にも、どんどん議論と実践をして、教育を変えていこうぜ」

参考文献『いじめの構造―なぜ人が怪物になるのか (講談社現代新書)2009/3/19 内藤 朝雄』
『学校を基地に「お父さんの」まちづくり―元気コミュニティ!秋津 単行本 – 1999/3 岸 裕司』


今までの教育論を集めた一覧はこちらです。

それ以外のものを書いた理論は、こちらです(目指せ、新日本国憲法)

これとは別の、基本的な経済学をまとめたのはこちらです

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