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藤田真央さん

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#WEB別冊文藝春秋

ピアニスト・藤田真央 #02「わたしに”合っている”モーツァルト」

ピアニスト・藤田真央 #02「わたしに”合っている”モーツァルト」

毎月語り下ろしでお届け! 新連載「指先から旅をする」

★毎月2回(5日・25日)配信します★

 わたしが共演したイスラエル・フィルハーモニーは、昨年85周年を迎えた伝統ある楽団です。初代音楽顧問のウィリアム・スタインバーグから始まり、レナード・バーンスタインやズービン・メータといった、偉大なるマエストロたちとともに歴史を刻んできたオーケストラですので、ご一緒できたのはたいへん光栄でした。

 

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ピアニスト・藤田真央 #03「刻々と変容する世界、その中でわたしがピアノを弾く意味」

ピアニスト・藤田真央 #03「刻々と変容する世界、その中でわたしがピアノを弾く意味」

毎月語り下ろしでお届け! 連載「指先から旅をする」

★毎月2回(5日・25日)配信します★

 2022年3月7日、わたしはイタリア・ミラノのスカラ座の舞台に立っていました。
 ミラノは、スタイリッシュな芸術の街。空港に着くと、ゲートにお迎えに来てくださった方が「Maestro Mr.Fujita」と書かれたプラカードを持っている。おお、わたし、マエストロ? と思っちゃいました。
 イタリアでは

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ピアニスト・藤田真央 #05「わたしのプログラムづくり――理想の音を捜し求めて」

ピアニスト・藤田真央 #05「わたしのプログラムづくり――理想の音を捜し求めて」

毎月語り下ろしでお届け! 連載「指先から旅をする」

★毎月2回配信します★

 2022年4月11日。ドイツへと旅立つ直前に、東京オペラシティ コンサートホールでのリサイタルの機会に恵まれました。
 オペラシティで1月19日に行ったリサイタルの反響が良かったそうで、アンコール公演が決まったのです。

 全二部構成、5曲のプログラムの中で、わたしが核に据えたかったのは、ブラームスの《主題と変奏 ニ

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ピアニスト・藤田真央 #06「ふたりの師の教え――音と、音楽と、向き合うこと」

ピアニスト・藤田真央 #06「ふたりの師の教え――音と、音楽と、向き合うこと」

毎月語り下ろしでお届け! 連載「指先から旅をする」

★毎月2回配信します★

 モーツァルトを集中的に演奏するようになってからというもの、わたしは歌曲、とりわけドイツ・リート(歌曲)への関心を強めています。

 同じドイツ・リートでも、シューマンとシューベルトを比較するとまた面白いですね。シューマンの曲は、こちらを刺してくるような「痛み」がにじむ。クララへの恋慕といった、作曲家の想いがストレート

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ピアニスト・藤田真央 #07「亡き恩師・野島稔先生ーーわたしの音楽は、あのレッスン室で培われた」

ピアニスト・藤田真央 #07「亡き恩師・野島稔先生ーーわたしの音楽は、あのレッスン室で培われた」

毎月語り下ろしでお届け! 連載「指先から旅をする」
★毎月2回配信します★

 2022年5月9日。恩師、野島稔先生があの世へ旅立たれました。
 わたしが最後に先生のお声を聴いたのは、亡くなる2ヶ月ほど前のことでした。ベルリンへ発つ前にと、わたしからお電話を差し上げたのです。ふだん電話では用件しか話さない方だったのに、その日はいろんなことを話してくださって、素敵な時間でした。お身体の具合を尋ねると

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ピアニスト・藤田真央 #08「ベルリンの空の下、師を想う」

ピアニスト・藤田真央 #08「ベルリンの空の下、師を想う」

毎月語り下ろしでお届け! 連載「指先から旅をする」

★今後の更新予定★ #09  8月25日(木)正午 #10    9月5日(月)正午

 4月末に日本を発って拠点をベルリンに移し、新しい生活が始まりました。
 ベルリンは何度も訪れておりましたし、もともと勝手知ったる街ではあるのですが、ひとり暮らしをするのは初めてなので、毎日小さな発見があって楽しい日々です。

 アパートメントは学校から少し離れ

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ピアニスト・藤田真央#09「わたしの人生の節目には、モーツァルトが現れる」

ピアニスト・藤田真央#09「わたしの人生の節目には、モーツァルトが現れる」

毎月語り下ろしでお届け! 連載「指先から旅をする」

★今後の更新予定★ #10   9月5日(月)正午 #11  9月25日(日)正午

 世界デビューアルバム『モーツァルト:ピアノ・ソナタ全集』(CD5枚組)のリリース日が、今年の10月7日に決定しました。
 現在は配信限定先行シングルとして《ピアノ・ソナタ第16番 ハ長調 K.545》の「第2楽章 アンダンテ」と《ピアノ・ソナタ第2番 ヘ長調 K

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ピアニスト・藤田真央#10「ブラームス、ドビュッシー…ベルリンで再発見した作曲家たち」

ピアニスト・藤田真央#10「ブラームス、ドビュッシー…ベルリンで再発見した作曲家たち」

毎月語り下ろしでお届け! 連載「指先から旅をする」

★今後の更新予定★ #11   9月25日(日)正午 #12   10月5日(水)正午

 モーツァルトのピアノ・ソナタ全曲演奏を成したあと、わたしのなかで存在感を増したのはブラームスでした。
 ブラームスは音楽史的な位置付けでは、後期ロマン派に属する作曲家となります。けれど彼は時流からちょっと外れて、ベートーヴェンをはじめとする、自分よりすこし前

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ピアニスト・藤田真央#11「ヴェルビエ音楽祭――アルゲリッチの代わりに立つ」

ピアニスト・藤田真央#11「ヴェルビエ音楽祭――アルゲリッチの代わりに立つ」

毎月語り下ろしでお届け! 連載「指先から旅をする」

★今後の更新予定★ #12   10月5日(水)正午 #13   10月25日(火)正午

 夏の欧州は、各地で音楽祭が花盛り。7月にはロッケンハウス室内楽フェスティバル、ヴェルビエ音楽祭、ラ・ロック・ダンテロン国際ピアノフェスティバルと、わたしもずいぶん飛び回って、あちらこちらで演奏をしてきました。

 音楽祭はその土地の空気や、その街ならではの

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ピアニスト・藤田真央#12「ミハイル・プレトニョフ――ヴェルビエの夜、憧れのひとと邂逅する」

ピアニスト・藤田真央#12「ミハイル・プレトニョフ――ヴェルビエの夜、憧れのひとと邂逅する」

毎月語り下ろしでお届け! 連載「指先から旅をする」

★今後の更新予定★ #13   10月25日(火)正午 #14     11月5日(土)正午

 7月20日、ヴェルビエ音楽祭でヴァイオリニストのマルク・ブシュコフ、チェリストのズラトミール・ファンと室内楽を演奏する機会に恵まれました。彼らとは、2019年のチャイコフスキー国際コンクールでともに入賞したときからの縁です。

 この日のプログラムは、

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ピアニスト・藤田真央#13「ルツェルン音楽祭――シャイーと奏でた”歌うフォルテッシモ"」

ピアニスト・藤田真央#13「ルツェルン音楽祭――シャイーと奏でた”歌うフォルテッシモ"」

毎月語り下ろしでお届け! 連載「指先から旅をする」

★今後の更新予定★ #14   11月5日(土)18時 #15   11月25日(金)
→11月末公開予定

 ヴェルビエ音楽祭を終えたわたしを待っていたのは、毎年8〜9月にスイスで行われるルツェルン音楽祭です。

 1938年から続くルツェルン音楽祭は、ザルツブルク音楽祭と双璧を成すヨーロッパ随一の格式と伝統を誇ります。出演者が錚々たるメンバ

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ピアニスト・藤田真央#14「あと2日でユジャの代役を――ネルソンスとの出逢い」

ピアニスト・藤田真央#14「あと2日でユジャの代役を――ネルソンスとの出逢い」

毎月語り下ろしでお届け! 連載「指先から旅をする」

★今後の更新予定★ #15   11月25日(金) 
→11月末公開予定

 夏の暑さの盛りを過ぎても、欧州各地を飛び回る日々はまだまだ続きます。
 9月2日からは、ジョージアの小村ツィナンダリで行われるツィナンダリ音楽祭に参加しました。2日にはオクサナ・リーニフの指揮のもとブラームスの《ピアノ協奏曲 第1番 ニ短調 Op.15》、4日はリサイ

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ピアニスト・藤田真央#15「そのアクセントが、演奏を進化させる――ブラームス《ピアノ協奏曲 第2番》」

ピアニスト・藤田真央#15「そのアクセントが、演奏を進化させる――ブラームス《ピアノ協奏曲 第2番》」

毎月2回語り下ろしでお届け! 連載「指先から旅をする」

 めくるめくような欧州の音楽祭シーズンを終えて、秋には久しぶりに日本に帰ってまいりました。
 10月7日(金)はわたしのワールドデビューの日。レコーディングから約1年、ようやく皆さまのもとへ『モーツァルト:ピアノ・ソナタ全集』をお届けできたこと、嬉しい限りです。
 同日夜には「報道ステーション」でモーツァルトの《ピアノ・ソナタ 第9番 ニ長

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