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私に残っていた20代のカケラ

最後に美容院に行ったのが2月だったため、実に4カ月ぶりに髪を切った。長く伸ばしたままにしていた髪は、腰に尽きそうなほどに伸びていた。

新型コロナウイルスの第二波がいつくるか見当がつかない。なんなら“ご近所”の北九州市が全国的に話題になっている今、福岡市なんぞは明日は我が身ともいえよう。

ヘッドスパをはじめ、髪のメンテナンスに特に力を入れている美容師さんのおかげで、ずぼらな私にしては髪をきれいに伸ばしてきたつもりなのだが、「短く切ります」と伝えた。すこし名残惜しかった。私の髪を知り尽くしている美容師さんも「次いつになるか分からないもんね」と困り顔で笑っていた。


カラーリングの前に、大胆にハサミを入れる。バサバサと切られていく髪。20cmとまでは言わないが、15cmくらいは切ったように思う。

学生のときに夢中で読んだ漫画「BLEACH」に、こんな言葉があったことを思い出した。

髪も爪も みな宝物のように
美しく飾り立てるのに
なぜ自らの体から切り離されただけで
汚く不気味なものとなってしまうのだろう
答えは簡単
それらは全て
自らの死した姿に ほかならないからだ

床に散らばり、途端に無機質になった髪。

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「毛先のほうは半年前、いやもっと前の髪ですかね」と聞くと、「いやいや、こんなに切ったので、1~2年前の髪ですよ」と美容師さん。

ハッとした。
私の中でとっくに過ぎていた20代のカケラが、ここにあった。

そしてこれをバッサリを切り落としたことで、私から20代という要素はいよいよ消え去ったのだ。


そんなことを考えていると、カラーリング中にも関わらず口元がゆるんでしまった。ニヤニヤする顔が鏡に映らないように思わず少しだけ下を向く。

いよいよ私の30代が本格的に始まる…!
なんだかそれはドキドキとワクワクを伴うもので。

20代のうちに〇〇しなければ!といった、20代後半特有の漠然とした焦燥をこれでいよいよ切り離したのだと思うと、とても清々しかった。

「(20代の)終わり」を意識して過ごす生活から「(30代の)はじまり」を意識する日々。なんだってスタートとは気持ちがいい。

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短くなった髪の写真を実母に送った。すっきりした!と話すと、「髪を切ると、こころに積もったちいさなストレスも無くなる気がするよね」と。

まさにそう、とても身軽になった気がする。誕生日でもないのに、30代を精一杯楽しみたいと途端に前を向いた自分がいる。

コロナ禍だろうとなんだろうと、時間は有限だ。自分でも意外なほど、有意義な3時間だったように思う。

明日も、笑顔ですごそう。

2020/06/04 こさいたろ


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