忘れられない初恋〜同窓会となりに君がいる〜

同窓会があったのは、成人式から2ヶ月後の3月だった。

場所は千葉だったけど、地元の最寄り近くというわけではなかったので、東京から向かう。

幹事は、大学でも野球やってて成人式に来れなかった直哉だったけど、その日も結局いなかった。
それでも会がひらかれることに感謝。

「私、ゆうりくんの隣がいい」
そう言って、ともみちゃんは隣に座ってくれた。もう楽しい。
「私も近くがいい」
と言って、1度ライブにも来てくれたともみちゃんと仲の良いマッキーも近くに座る。
「おれ、人気者だなあ」
照れを精一杯隠し、ごまかすようにちょけてみせる。
「そうだよ。学生の頃、席替えでゆうりくんの近くだったらあたりだと思ってたもん」
マッキーが言う。
マッキーとも同じクラスになることは、多かったけど、そんなに話したことはなかったし、自信のなかった僕はちょっと人気者だったことは意外だった。とにかく楽しい。

小学校の同窓会だから、成人式と比べて規模は小さく、人数も20人くらい。
ともみちゃんとも、成人式の時より、いろんなことを話せた。
ともみちゃんは、学校の先生を目指して大学に通っていた。
そういえば、成人式や同窓会って、昔誰が好きだったとかそういう話なったりするのをドラマとかで観たけど、僕の周りはそういう話にならなかった。
そんなこともあって、ともみちゃんの恋の話は聞いたことがない。ほんとはすごく聞きたいのに。
でも、僕自身も聞かれたところで、それに対するリアクションを用意してなかったから、困るのは目に見えていた。
なにより、自分から聞き出せなかったのは、その頃の僕には彼女がいた。
経験がないことが恥ずかしく、東京で付き合えそうだった子と付き合った。
もちろんその子のことは好きだったけど、ともみちゃんには勝てなかった。
僕はこんな恋愛ばかりしている。
ほんとは今すぐにでも、ともみちゃんと付き合いたいのに、彼女への罪悪感で動けなかった。自分でも思う、僕の優しさって中途半端だ。
ともみちゃんはそんな僕に対して、もしかすると、じれったく思っていたのかもしれない。

売れてない僕がともみちゃんと付き合えても幸せにすることはできない。今はタイミングじゃない。責任があるような無責任な言い訳を胸にしまい、その場を楽しんだ。

帰り道、僕だけ地元に戻るみんなとは真逆の東京行きの電車に乗る。

「ライブ誘ってね、絶対行くから」
そう言ってくれたともみちゃんの言葉がずっと頭に残って、同窓会のLINEグループからともみちゃんのアカウントを追加して連絡する。

ガラケーには入ることのなかった、ともみちゃんの連絡先がスマートフォンに登録された。

「やっぱり、ともみちゃんがいちばん好きだ」
歯痒いのは自分でもわかった。
その時は、もっと頑張って売れるしかないってことしか思いつかなかった。

#忘れられない恋物語

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