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忘れられない初恋〜席替え〜

僕とともみちゃんが同じクラスになったのは
小学3年生の頃。
でもその頃は、ともみちゃんと特に話した記憶はない。
というか、今もだけど子供の頃は特に人見知りで、友達もあまりいなくて、ましてや女子となんてほとんど話したことなかった。
そういうのもあり、小3までの記憶はともみちゃんだけに関わらずあまりない。

ともみちゃんと話すようになったのが、小学4年生の頃。
たしか6月くらいの席替えで隣の席になったんだと思う。
明るくて誰とでも仲良くできる性格のともみちゃんは、人見知り全開の僕にも話しかけてくれた。
人見知りがゆえに、話しかけられるだけで緊張するもんだから、好きだからの緊張とは違うけど、はじめの頃は常にドギマギしてたと思う。
それでも、毎日ともみちゃんから話しかけてくれて、学校に来るのが楽しくなり、席替えで一番前の席になってしまったことが、気づけばハズレから当たりに変わっていた。

話したいけど、自分からは話しかけることのできない僕。
それでも、ともみちゃんの方から話しかけてくれる。
今思えば、なんて幸せなやつなんだ。
そんな僕になんでともみちゃんは話しかけてくれるのかわからないけど、ともみちゃんは僕の話でよく笑ってくれていた。

ある日の給食の時間のこと。
いつも通りともみちゃんが話しかけてくれて会話していると

「ゆうりくんと家族になったら毎日楽しそうだよね」

今でも顔がとろけてしまいそうになるパワーワードがともみちゃんから飛んできた。
当時の僕に返答できるわけがなく、ただひたすらに照れて固まるだけになっていたと思う。
でも、そうなったのは単なる照れだけでなく、ほんとにそんなことなかったのだ。
少しうるさくするだけで父親に怒鳴られていた僕は、萎縮し家ではほんとに静かだった。
家ではと言っても学校でも別に静かで、ともみちゃんが話しかけてくれるから話せてるだけなんだけど。
だから全然そんなことないけど、ともみちゃんがそう思ってくれることが嬉しかったし、ともみちゃんは僕でも知らなかった僕を引き出してくれたんだと思う。

そんなことがわかるエピソードがひとつあって、小学4年生は10才になる年代で年齢が2桁になる節目だからクラスでは誕生月の人に10才おめでとうの手紙を書くイベントがあった。
8月が誕生日の僕に届いた、クラスメイトからのおめでとうに続く文は
ゲーム強いね
頭良さそうだね
字がキレイだね
などの、当たり障りのないようななんてことのない言葉ばかりで、中には、
誰だかよくわからないけどおめでとうなんて
書かれたりもしていた。
まあ、目立っていないから当然だ。
それでも、ともみちゃんは
面白い人だね
と、書いてくれていた。
自分のことを面白いなんて思ってもいなかったけど、そんな風に思ってくれていることが嬉しかったし、何よりともみちゃんに笑ってもらえるのが嬉しかった。
それからと言うものの、未だに僕が褒められて嬉しい言葉は面白いだ。

ともみちゃんと隣の席になって、毎日の学校が楽しくなっていて、なんなら会えない夏休みが味気なくもなっていた。
2学期に入った、10月ごろの席替えでともみちゃんと僕の席は離れ離れになった。
席替えってのは、学生にとってテンションの上がるイベントでもあるけど、時に残酷なものでもある。
楽しかった毎日が、席替えであっけなく消えた。
席が離れただけで、まだクラスは一緒なのに、ともみちゃんともう一生話せないような気分になった僕は、そこではじめてともみちゃんのことが好きだということに気づかされてた。
あれからもう20年近く経つのに、ともみちゃんと隣の席になった席替えと離れ離れになった席替えを未だに覚えている。
学生時代に何度もした席替えを覚えているのは、このことくらいだ。むしろ一つでも覚えていることが気持ち悪いのかもしれないけど。

僕の初恋は、席替えで芽生え、席替えで気づかされた。

この初恋を30歳目前にしても、今もまだ忘れられないことも知らずに。

#忘れられない恋物語

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