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「ゴーストランドの惨劇」と「マーターズ」観た

”トム・ブラウン みちおさん オススメのホラー映画”ということだったので、「ゴーストランドの惨劇」を観た。


ネタバレにならない程度にあらすじを説明すると

「亡くなった親族が残した屋敷に、母親と娘二人が引っ越してくる。
家に入ると、突然 人形を持った大男と性別不明で長身の人物が3人に襲いかかる。
命懸けで娘を助けようとする母、逃げ惑う姉妹…
そこで起きた悲惨な出来事を忘れられないまま大人になった妹は、幸せな家庭を持ち、有名な小説家として活躍していた。
ある日、姉から不審な電話がかかってくる。気になって様子を見に行くと、そこには変わり果てた姿の姉が。
姉に見えているものとは何か。現実とは?」

みたいな感じ。


「グロい」「怖い」「悲惨」という前評判を聞いていたが、私はまず、映像の美しさに驚いた。
そして、テンポ感の良さと演出の上手さに惹かれた。

開始から40分くらいずっと「え、最高じゃない?」という気持ちがどんどん高まっていく映画は久しぶりだった。

私は、たぶん普通の人よりはホラー耐性もグロ耐性もある方だし、ビックリしないタチなので、観ていてあんまり「こわい!」とは思わなかった。
「痛いね」「悲惨だね」とは思ったが、見ていられる程度だった。
途中で「ん?」と思った場面も、ちゃんとあとから理由がわかったし、伏線の繋げ方も好き。
終わり方もキレイ。
見終わって直ぐに「最高だった」てツイートしたし、みちおさんにリプでお礼も言った。
それくらい、とても好きな映画だった。


で、「この監督の作品なら、イケるんじゃないかな…」と思ってしまい、散々「あれだけは観るな」と聞いていた「マーターズ」を翌日さっそく観た。

こちらのあらすじは

「監禁され、拷問されていた少女が逃げ出し、保護される。
少女は、施設に入ってからも監禁されていた時のことを誰にも話さなかったが、同じ施設に暮らす一人の少女にだけは心を開く。
親友となった2人は成長し、監禁した犯人に復讐をしようとする。
しかしその犯人は…」

くらいしか書けない。


「マーターズ」は、そこまで映画好きでなくても「ヤバイらしいよ」という噂くらいは聞いたことがあると思う。
私は、「きっと後々まで頭に残るような、悪意に満ちた嫌〜な映画なんだろう」と思ってたのでずっと避けてきた。
今更トラウマ増やしたくないし。
だから、「頼むよパスカル・ロジェ…信じてるからな」という気持ちで観始めた。


最初しばらく観てた時点では「これくらいなら観てられるな」と思っていたが、中盤の展開からがちょっとキツかった。

ちょうどその中盤を過ぎたところで電話がかかってきたので一旦止めたんだけど、電話し終わったあと「あ…普通の世界だ…よかった」みたいな気持ちになった。
そして、もう1回再生ボタン押すかどうか10分ほど迷った。
「もう見んとこかな…」てなった。
でも、ここまで観てオチを見届けないのもシャクな気がしたので、決心して観ることにした。

後半はもう、ビックリ要素もホラー要素もない。
ただ、痛みと苦しみと理不尽を見続けるだけの時間になる。
いくらホラーとグロに耐性があるとはいえ、私にも人の心は残ってるので、普通にしんどい。
「ていうか、これホラーっていうジャンルで合ってる?」「こんなんもう、怖いとかではなくない?」て思った。
だんだん「何を見せられてるんだ」「なぜこれを見る必要があるんだ」という気持ちになりながらラストまで観た。
観たら、なんか、落とし方が非常に好みだったからなのか何なのか「えぇ…あ、良い映画だ…(混乱)」てなった。
そして何故か「美しい映画だったね」という感想が残った。


私は、「こんなゴア表現できちゃうんです。狂っててカッコイイでしょ?」的なものとか、「ただグロい映像作りたかっただけだから、ストーリーは適当です」みたいな作品は大嫌いだ。
他人の不愉快な自己顕示欲に付き合ってる暇はない。

パスカル・ロジェ監督の作品は、執拗に「少女への拷問、理不尽な苦しみ」を描き続けているが、前述のようなものとは全く違う。
ゴーストランドにしても、マーターズにしても、「悲惨な場面の先に、ちゃんと伝えたいことや描きたいことがある。それを表現するために暴力が必要だったんだろう」と私は感じた。
ここに出てくる女性たちは、理不尽な暴力に屈しない強さがある。
それに、彼女たちの人生には、”歪みのない愛”が大切に描かれている。
加害する方もただの狂人や化け物ではなく、奥に”どうしようもなくそうなった、そいつの人生”が見える。
誰もが「そうなってしまった」ことに抗っている。
そこに愛おしさを感じた。
ラストには希望すら感じた。



人生に起こる出来事のほとんどは「キレイなオチ」などなく終わる。
結末があるだけだ。

我々はただ、理不尽に起こることを受け入れるしかない。

物語に、キレイな理由付けとか、納得のいく種明かしを付けた途端、それはリアリティのないハリボテのアトラクションになると思う。

「マーターズ」と「ゴーストランドの惨劇」は、アトラクションとして映画を楽しみたい人にはお勧めできない作品だ。
「なんなの?」てなると思う。

ただ、もしそうでないなら、そしてホラーが苦手でないなら、「ゴーストランドの惨劇」だけでも観て欲しい。

誰か一緒にゴーストランドの話しませんか?

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