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【インタビュー】俳優から心理の専門家へ。改めて感じるパフォーマンスの世界の課題/TAPサポーター仙名智子さん②

芸能に特化したメンタルサポートサービスTAP(ティーエーピー)。

TAPサポーターへのインタビューシリーズ第2弾として、前回に引き続き、元劇団四季俳優・現公認心理師/臨床心理士の仙名智子さんへお話をお伺いしました!

俳優という職業を経て、心理士となられた仙名さんだからこそ見える課題について詳しくお話しいただきます。

仙名智子さん

Profile
仙名 智子 Senna Satoko
元劇団四季俳優
公認心理師/臨床心理士/認定ハラスメント相談員Ⅱ種

略歴
音楽大学卒業後、劇団四季に入団し舞台俳優として活動。その他テーマパークダンサーとしての活動経験もあり。実演家としての活動中に、実演家に対する心理的・社会的サポートの必要性を強く感じ、大学院に進学。
臨床心理士・公認心理師資格を取得する。大学院ではミュージカル俳優のキャリアに関する研究を行う。 資格取得後は、自殺相談ダイヤルでの相談員・精神科カウンセラー・発達障害者支援・うつ病などで休職に至った方への復職支援などを行う。その他、芸能実演家に向けたメンタルヘルスにまつわる勉強会なども実施している。


心理の専門家の視点で感じるパフォーマンスの世界の課題

――ミュージカル俳優から臨床心理士の道へ入られたとのことですが、改めて心理の専門家としての視点で感じる課題などはありますでしょうか?

仙名:そうですね。様々な視点から研究されているスポーツの世界と違って、パフォーミングアーツの研究や調査ってまだまだ十分ではなく、そこが私は課題だと思っています。

人が感じている困り事や悩みって、人と社会の相互作用の間で起きるものでもあります。
なので、パフォーミングアーティストさんとお話しさせていただく時にも、パフォーミングアーツの世界がどんな世界で、どんな仕事の特徴があって、どんな働き方をしているのかといった、その人が置かれた社会のことも含めて理解しないと、その方に起きている心の問題を適切にサポートするのは難しいのではないかと思うんですよね。

パフォーミングアーティストさん達は、フリーランス(業務委託契約など、労働契約以外の形で仕事をする)として働いている人達が9割という調査データがあります。
フリーランスで働くということは、弱い立場で仕事をしている可能性があって、それに付随して、賃金の問題・契約の問題・ハラスメントの問題などが起きやすい可能性もある。
最近、パフォーミングアーティストさん達が働く環境に関する色んなニュースが出て、課題が明らかになってきていますよね。今後も、彼らの働く環境を整理していく必要があると思っています。

ただその辺りって、心理士ができることってとても限られているんですよ。なので、心理士だけじゃなく様々な専門家と連携をとりながら、サポートを行う必要があると思っています。福祉的な支援ももしかしたら必要になるのかもしれません。

スポーツアスリートとパフォーミングアーティストの違い

仙名:また、そもそもパフォーマンスをするということはどんな特徴があるのか、その辺りも整理していく必要があると思っています。

スポーツアスリートとパフォーミングアーティストって、自分の体を使うという共通点があるので、スポーツの研究的な知見をパフォーミングアーツの世界で応用することがあるんですよ。
例えば、緊張とか不安に対する対処は、スポーツメンタルトレーニングなどから応用できる部分って多いと思うんですよね。
ただ一方、違いもたくさんあると思っています。
例えば、スポーツアスリートのパフォーマンスの目的は、「戦って勝つ」「記録に挑戦する」ということなんだと思うんですよね。それに対してパフォーミングアーティストは、「表現する」ということ。当たり前のことですが(笑)。
見ている人の心とか価値観にアプローチして、鑑賞者の気持ちを動かす、人生に影響を与えるということを目的に、皆さん表現しているんだと思うんです。そんな風にスポーツとパフォーミングアートのパフォーマンスの目的って全然違うんですよ。

曖昧なものに向かう、パフォーミングアーツの世界

仙名:見ている人の気持ちを動かすって、とても曖昧な事じゃないですか。何をもってして相手の気持ちが動くというのか分からない中でパフォーマンスをする難しさもあるし、スポーツのように厳格なルールが決まっていないから、表現で求められることの可能性は無限大。
見ている人が「こんなものが見たい」とか、表現する人が「こんなことを表現したい」というものがある限り、なんでもチャレンジしていく必要がある側面があります。
例えば、歌を歌った事の無い俳優さんであっても、舞台の上で歌を歌う必要が出てくるとか、医者の役だからメスの使い方を学ばなければいけないとか。クラッシックの演奏しかしてこなかったけど、ジャズ的にアレンジした演奏が必要になるとか。その世界を表現するためにその中でなんでもやる、色々なことにチャレンジし続ける、そういうことが求められるという大きな特色があると思うんですよね。

私は働くアーティストさんを見るといつも「チャレンジャー」というイメージが沸くんですよね(笑)。私達はそういう特徴を理解している必要があると思いますが、今のところそういった研究があまり進んでいない。そんなところが、私が感じている課題感です。

――ありがとうございます。スポーツ心理学が活きる部分もありますが、おっしゃる通り大きな違いがありますよね。

仙名:スポーツの世界で参考になる部分は本当に多いですよね。私もいつも勉強になっています。でも違うところも必ずありますよね。共通点が多いからこそ、その違いの部分にパフォーミングアーティストさんの特徴があるのかなと思っています。

――ありがとうございます。支援するのであれば、そういった違いなどをしっかり理解しているかどうかというところが重要な部分ですね。

仙名:そうですね。それが、私はやっていけたらいいな、知っていけたらいいなと思っています。


TAPトークイベント vol.2 3.24開催!

3/24開催!TAPトークイベントvol.2
元劇団四季俳優の心理師が話す、アーティストの働き方の特徴とキャリア
ー 実力だけじゃない、運も必要ってどういうこと?―


開催日時:3月24日(日) 13:00~14:30
開催場所:新宿三丁目駅徒歩2分会場 or オンライン(zoom)
イベントページ
https://taptalkevent2.peatix.com/

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