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[東洋思想]オススメの入門書(仏教・禅編)

こんばんは!🌙
前回に引き続き、東洋思想の入門書としてオススメの本を紹介します。

前回は「儒教」編でしたが、今回は「仏教・禅」編です。
ルールは儒教編と同じで、以下の観点を重視して本を選んでいます。

1) 何度も読み返したくなること (≒実際に私が折に触れて読み返している)
2) 読みやすいこと (≒アカデミックで難解な解説が続くような本は辛い)

3) 実績があること (≒ベストセラー。広く親しまれている)

と言っても、これらの「観点」に基づくスコアリングは私の主観によるものなので、同じ観点でも人によってスコアは変わってくると思います。あくまで「私はこういう観点に基づいて本を選びました」という参考程度に思っていただければ幸いです😅

東洋思想のオススメ入門書(仏教編)

●「仏教の真髄を語る」 中村 元

仏教」と一口に言っても、原始仏教上座部仏教大乗仏教へと信仰が広がるにつれて教義が変容(拡大)していきます。日本に伝来した大乗仏教も、奈良仏教、平安仏教、鎌倉仏教と時代を経るごとに変容してきました。
どんなに裾野が広がっても仏教が問うてきた中心にあったのは「自己」です。様々な苦しみから解放された境地(彼岸)に至るための「自分のあり方」を説くことで沢山の苦しむ人達が救われてきました。でも「自分のあり方」を問う姿勢は仏教の一部でしかありません。儒教や神道など他の東洋思想に通底する「自分さえよければそれでよい」とか「他者の命を犠牲にしても構わない」という態度は仏教では許容されません。「自分は他者によって生かされているのだ」「まず何よりも”命”が優先されるべきだ」という根本的態度は、仏教も他の東洋思想と全く同じです。仏教のそういった側面を分かりやすく解説してくれるのがこの本です。

本日は、仏教の思想から「 いのち 」 の尊さについて、また「いのち」を活かす智恵についてお話いたします。バブル経済の崩壊とともに、戦後日本社会の基本路線であった経済至上主義への反省が諸方面から聞かれるようになりました。敗戦後の日本は経済復興に邁進し大成功をおさめたわけですが、それと引き換えに何か大切なものを失ったのではないでしょうか。

「 仏教の真髄を語る」 第一章 近代的「自己」を超えて より
中村 元 (1912-1999)

中村元先生は日本を代表する仏教学の権威です。中村先生がいなければ今日のように仏教学は発展しなかったと言われるほど膨大な学術的功績を残された方で、平成10年に逝去された際にはインドが国をあげて尊崇の念を表すほど世界の仏教研究に多大なる貢献をされた方です。

東洋思想のオススメ入門書(禅編)

●「禅」 鈴木 大拙 (工藤 澄子 訳)

」は今や日本を代表する精神文化になりました。故スティーブ・ジョブズが「」から多くのことを学んだというエピソードに私たちは勇気づけられ、坐禅をする人も増えています。それだけ注目されている教えでありながら『禅とは何か?』という問いに答えるのはとても難しいです。禅も仏教の一派(禅宗)なので、禅が目指しているものが「悟りの境地」であるのはその通りなのですが、例えば同じ仏教でも原始仏教と禅は何が違うのか、浄土宗と禅宗は何が違うのかという点について明確に説明するものはありませんでした。この本👇が出るまでは。

著者の鈴木大拙は「禅」を「ZEN」として世界に普及した人物です。明治以降の近代日本で誕生した偉大な禅僧は2代続いて鎌倉の円覚寺から出ています。今北洪川師と釈宗演師です。大拙は生涯出家こそしませんでしたが、この偉大な両師から直参で禅を学び、そこらの出家した禅僧よりもよほど禅を追求し実践した人でした。

そもそも海外における禅(ZEN)の始まりは1893年に米国シカゴで開催された万国宗教会議にまで遡ります。この会議で釈宗演師が講演する際に通訳として随行したのが英語が堪能だった鈴木大拙でした。その後、大拙は米国に渡り、仏教や禅の思想を伝える書籍を世界に向けて発刊するようになります。これの何が凄いのかと言うと、そもそも「」は「論理」すなわち「言語」による理解を否定する哲学だからです。「不立文字」「教外別伝」という言葉が指すように、禅では「悟り」は文字や言葉の理解によって辿り着くものではなく「体験」によってしか辿り着けないと考えます。思考より体験、論理より直観を重視します。だから「禅とはなにか」を文字に起こすこと自体が本来はナンセンスなのです。なぜなら文字で説明を試みている時点で、それは「」ではないから。

しかし、敢えて大拙はそれにトライしました。しかも日本語じゃなくて英語で。「」の本質は言葉や論理では捉えられないものなのだということも含め、日本が誇る「」という文化を世界に広めるため、言語と論理が発達した西洋社会に向けて「英語」で発信したのです。大拙の凄さは、偉大な禅僧の下で学び実践して獲得した自らの「禅」の身体知を、これまた卓した英語能力を駆使して言語化したことにあります。大拙がいなければ今日のような世界的なZENブームはなかったと言えます。

前置きが長くなりましたが、この本は大拙が禅の本質を卓越した英語力で世界に向けて発信した本を、大拙が再度日本語に「翻訳戻し」をしたものです。

この書は、自分が過去四十五年間に公にした大小の英文の著作から、主として禅の本質と解せられるものを選出して邦訳し、一小冊としたものである。それで、この書を一読すれば、大体、近代的に禅の何たるかを知得することができるわけである。しかし禅は知得するだけでなく、体得がなくてはならぬものゆえ、その知得底だけで満足すべきでないことは、今さら言うまでもないと信ずる。

「禅」 はしがき より
鈴木 大拙 (1870-1966)

「禅」の本質は経験でしか掴めないのだから、言葉で表現しても意味がない』。その一言で済ませてしまうことなく、世界に日本の精神文化を広めるためにどれほどの努力と苦難を重ねて、これを英訳したのか。同じ日本人としてこんな偉大な先人がいたことを誇りに思わずにはいられません。

この本以上に、また大拙以上に、「」の本質を言語と論理によって解説している本はないんじゃないかと私は思います。

東洋思想のオススメ入門書(仏教・禅のおまけ)

冒頭のオススメ観点からは外れますが、個人的に好きな(東洋思想としての仏教・禅を感じられる)本としては以下があります。

●「唯識の思想」 横山紘一

東洋思想の根底に流れる「無分別智」の境地とはどういうことかを、意識の発達段階の観点から解き明かしてます。仏教らしくめっちゃロジカルです。

●「日本的霊性」 鈴木大拙

日本的霊性は縄文時代から脈流する日本人の根源的Creativityの源であり「侘び寂び」の源泉でもあります。
※角川版と岩波版がありますが、岩波版には金剛禅の章が入ってないので、角川版の方がオトクです。

●「星の王子さま、禅を語る」重松宗育

「星の王子さま」のストーリーに照らして禅の世界観をライトに読みやすく示してくれます。

つづく。(かな?)

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