見出し画像

般若心経とアート①

昨年末から、近所の禅寺で「座禅」と「写経」を始めました。

臨済宗のお寺なので、座禅は臨済禅の作法で、写経は般若心経を使います。もともと座禅に興味があって通い始めたのですが、そのお寺では「座禅と写経」がセットになっており、座禅だけやって帰るわけにもいかない雰囲気でした。なので当初、私にとって写経はオマケのようなものだったのですが、回を重ねていくうちにだんだん写経(というかお経)に興味が沸いてきました。なぜ興味が沸いたかというと、

般若心経は、たったの「262文字」しかないお経である

という点です。ご存知でしたか?普通「お経」といえば物凄く長くて、ブ厚い書物にずらーっと書かれていて、お坊さんがそれを延々と暗唱するイメージがありませんか?(お葬式とかのイメージ)。でもこの般若心経は、たったの262文字しかないお経なんです。だから、1時間足らずの写経でも全文を書きあげてしまえるのです。私も初めて書いたときは「えっ、これで全文?以上?」という印象でした。

そんなわけで、図らずも般若心経を写経する習慣ができて、浅学ながら般若心経についてアレコレ調べた結果、いま私にとって最も関心がある「アート」と般若心経に深い関係があることがわかってきたので整理してみたいと思います。

そもそも『お経』って何なの?

お経は「仏教の経典」です。キリスト教やユダヤ教でいうところの「聖書」、イスラム教でいうところの「コーラン」にあたるものです。仏教は「お釈迦様の教え」なので、経典であるお経には「お釈迦様の説法」が書かれています。といってもお釈迦様本人が書いたわけではなく、お釈迦様の死後に弟子達が「お釈迦様は、確かこう言ってたな」と生前の説法の内容を思いだしながら書いたわけです。これが「お経」の原典です。

この原典はサンスクリット語(梵語)という古代インドの言葉で書かれていました。この原典を得るため、シルクロードを超えてはるばる中国からやってきたのが三蔵法師(玄奘)です。中国からインド(中国で天竺と呼ばれていた)に行くまでの道中を物語化したものが西遊記ですね。西遊記では最終的に玄奘が天竺に辿り着いて経典をゲットして終わるのですが、玄奘の歴史的な偉業はここから先にあります。現状はインドから中国に戻り、持ち帰ったサンスクリット語の経典を長い年月を掛けて漢文に翻訳したわけです。つまり玄奘は偉大な冒険者というだけでなく偉大な翻訳家だったわけです。この翻訳された漢文のお経が聖徳太子の時代に日本に伝わり、日本に仏教が伝来したわけです。

『般若心経』って何なの?

般若心経は、正式には「摩訶般若波羅蜜多心経」といいます。玄奘がインドから持ち帰った数々の経典の中に「般若経」という超絶ボリューム(約600巻!)の経典があるのですが、その「般若経」のエッセンスを凝縮した「サマリー版の般若経」みたいな位置づけのお経が般若心経です。「時間がない人向けの般若経」といっても良いかもしれません。日々忙しくて時短を求める現代人にはうってつけのお経です。しかし、600巻もある書物をよく262文字に収めましたね。。。半端ないサマリー能力です。

「般若 般若」言ってるけど、その般若(はんにゃ)って一体何なのよ?という話ですが、これはサンスクリット語のprajñā(ぷらじゅにゃー)の音を漢字に当てはめたもので、漢字に訳すと「智慧」という意味です。
(※「知恵」ではなく「智慧」。両者は全くの別物です)。
(※ぷらじゅにゃーを音写したら”般若”になるのか?という気はしますが)

ちなみに「般若」と聞くと、鬼女のお面(↓)を思い浮かべる方も多いかと思いますが、この鬼女面は般若心経の「般若」とは直接の関係はありません。

般若心経は「智慧のお経」で、智慧とは「物事の正しい姿(道理)を見極め判断する能力のこと」です。般若心経は海外にも翻訳され世界中で読まれているお経ですが、たとえば英語圏では「Heart Sutra (心臓のお経)」と訳されるそうです。臓器としての心臓ではなく「最も大事な核の部分」という意味でHeartなのだと思います。

大人気の般若心経

そんなわけで般若心経は、仏教の真髄オブ真髄を詰め込んで262文字に圧縮しためっちゃオトクなお経なわけです。そのため、仏教を多くの人に広める手軽さという意味でも大変優秀なわけです。手軽に覚えられるし、写経もしやすいですからね。日本では同じ仏教でも様々な宗派がありますが、その多くの宗派で般若心経が”公式お経”として取り入れられています。一方で教義上、般若心経を一切扱わない宗派もあったりします。

■般若心経を取り入れている主な宗派
・天台宗
・真言宗
・禅宗(曹洞宗、臨済宗)
・浄土宗

■般若心経を取りれていない主な宗派
・浄土真宗
・日蓮宗

そういえば、怪談で有名な”耳なし芳一”で芳一の全身に書かれていたお経もも般若心経ですね。

般若心経とアートをつなぐ『色即是空』

さて、前置きが超長くなりましたがここからが本題です。

般若心経262文字の中で最も有名な四字熟語といえば『色即是空』ではないでしょうか。そして、この般若心経の中で核ともいえる『色即是空』こそが『アート』につながるパワーワードだというのが本ポストのテーマです。

「色即是空」をググると、一般的にはこんな説明がなされているようです。

この世にある一切の物質的なものは、そのまま空(くう)であるということ。
 - デジタル大辞泉
この世にあるすべてのもの(色)は、因と縁によって存在しているだけで、固有の本質をもっていない(空)という、仏教の基本的な教義。
 - 大辞林 第三版

この説明を読んで「うんうん、そうなんだよね!」と分かっちゃう方は、私がこの先どんな話をしようとしているか見えていると思うので、続きは読む必要ないかと思います。(そもそも、このポスト自体読んでないだろうけど汗)

「えっ??色ってカラー?空?NULL?どゆこと??」と思った方は、もう少しお付き合いいただければ幸いです。

次回に続く。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?