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転勤初日の話(または深夜のネクタイの買い方)
ネクタイを忘れたのだ。
これがクールビズになる5月1日以降であればどんなによかったことか。
状況を説明するならば、いまは2018/4/1(日)。福岡から群馬に転勤となる辞令が出た日である。福岡から群馬にやって来た記念すべき一日目。
高崎駅に着いたのが22:20。
ぐんまちゃんとファーストコンタクトを果たした。それと高崎だるまにも。
22:40。すでに駅前は人通りがない。
会社が用意してくれた駅近くのビジネスホテルにチェックインした。
◇
なぜこんな時間に着いたかというと、しばらく会えない家族と最後のお出掛けをしたため、できるだけ遅い出発時間の飛行機に乗ったからだ。
それが裏目に出た。ネクタイがない。
チェックインして、ホテルの部屋で気づいたのが23時過ぎ。どうやってネクタイを調達すればいい? デパートも紳士服店だってもう閉まってるよ。
ネクタイなしで明日出勤するという選択も頭をよぎったけど、それは初めての職場で常識ある大人がすることなのか? デパート開店と同時にネクタイ買って出勤するか? いや初出勤で遅れるのはまずいのではないか?
23:16。絶望的な気持ちで駅前のロータリーを見下ろした。
買うしかない。男だろ。
1時間後、ホテルを出て、駅前の幹線道路の寂しさに呆然とする私がいた。
0:05。ペデストリアンデッキから幹線道路を眺める。ひゅー。
見知らぬ土地でここまで追いつめられるとは。
◇
まず思いついたのがコンビニ。だってコンビニエンスなストアじゃないか。
黒ネクタイしかなかった。
黒ネクタイはさすがにまずいだろ。
どの面下げて初出勤すればいい?神妙な顔か?
笑えない冗談は言わなくていいんだ。探してるのはネクタイだ。ふつうの。
◇
何軒かコンビニを廻ってみるがどこも同じ状況。そして駅近くこそコンビニはあったものの、駅から少し離れるとコンビニの間隔がやたら広くなる。歩いても歩いても見つからない。ここそんな土地!? 駅前の明るさもとうに影を潜めて夜の闇が濃くなる。いま何時だ?
◇
あてもなく彷徨ってもネクタイにはありつけない。
真夜中まで開いてるお店。ネクタイが置いてそうな・・。
驚安の殿堂 ドン・キホーテ!
これこれ!たぶんあるはず。これしかない。
◇
ドン・キホーテ高崎店。スマホで検索すると徒歩40分らしい。
いまから?歩いて?
駅まで戻ってタクシー使うか?電車終わってない?まだタクシーいる?ふらふら彷徨うんじゃなかった。歩いて戻ってタクシー捕まらなかったら立ち直れない。
心の声が私にドン・キホーテまで歩けと言う。ここは慎重に行こう。
片道40分、往復80分じゃないか。深夜ドン・キホーテを目指して歩け。
まさかこんな一日が待ってたとはな。まだ終わってないけど。
◇
見知らぬ土地の夜道を歩くのがこんなに心細いとは思わなかった。
気がつくとスマホのバッテリーが少なくなっている。ナビによれば線路沿いに行けばよさそうだけど、人通りがなくてこわい。スマホが使えなくなったらと思うとさらにこわい。ナビなしでホテルまで帰れる自信がない。
吉野家で牛丼を食べた。
明るい店内ってサイコーだ。 おなかが満たされると歩く気力も湧いてくる。
さあもうひと踏ん張りだ。
◇
1:39。ドン・キホーテ到着。
店内のにぎやかな感じ。涙が出そうだ。
ネクタイあった。4本1000円! ベーシックラインで意外といい。言わなきゃもっと高そうに見える。
サンキュー、ドン・キホーテ!
◇
ホテルに帰り着いたのは3時前。ミッションクリア。お疲れさまでした。
* * *
【まとめ】
無事ドン・キホーテのネクタイを締めて初出勤したわけですが、この話のオチがどこにあるかといえば、それからしばらくした歓迎会にあります。
自己紹介を求められて、こうスピーチしました。
このネクタイはドン・キホーテで買いました。それにはわけがあって・・
(終わり)
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