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平地のありがたみが身に染みた『L'Etape du Tour de France 2024』前編

みなさんこんにちは。
夏は会社の都合で休暇を取ってはいけないのに「サイクリストの祭典がある」という事で無理やり休暇を取りまくっているKです。

今回はフランス遠征のメインイベントでもあるツールドフランスの1コースを走る事ができるL'Etape du Tour de France(エタップ)の話を書きます。

大きなイベントなので今回は3部作です。

興味があれば前回の話も合わせてご覧ください。


今回のコース

スタート地点のニースからゴール地点のクイヨール峠があるルビオンまでの約138kmを走行する
ニースからクイヨール峠までの138km
前編は🟨
中編は🟦
後編から宿舎までは🟥

見事に山のオンパレードです。

ツールドフランスと言ったら数々の山岳区間がドラマを作ってきました。

今回のコースは「せっかくそのコースを走るなら参加者達にドラマの片鱗を見せてやろう」という運営側の生かして帰す気はさらさらないという強い意思を感じ取れるコース設定となっています。

彼らは私達(参加者)に恨みでもあるのでしょうか?

さぁ出発だ

朝は5時半起き。
わずかながらの朝食を食べたら6時半に宿舎を出発します。
宿舎から会場までは約12kmの道のり。
そして早朝ながら気温は20℃と、とても走行しやすい気候でした。

KEIMASAを先頭に綺麗な海を横目にのんびり走行します。

朝日を横目に楽しくサイクリング(このときだけ)

のんびり走れるのは今だけですからね。

気づけば周りにはサイクリストだらけです。

数時間後、こいつらと一緒に楽しくどえらい目に遭います。

綺麗な海に照らされた大勢のローディ達が出走ゲートへ向かう
サイクリスト達の祭典がこれから始まる

会場入り後は記念撮影。
そして各々の無事を祈ってスタートゲートへ向かいました。

左から大西さん、宮野さん、KSさん(本人希望)KEIMASA、梅木さん、エッティさん、そして私
撮影者は浅野さん
チーム8人、まさかの全員出走グループが違う

私とKSさん、浅野さんは荷物を預けるために預けエリアへ行き荷物を渡します(前日にもらった参加者が全員もらえるリュックのみ運営に預ける事ができる。写真はないが前日に受け取ったゼッケンの封筒に預け用のタグも入っている)
私の持っていたリュックはKEIMASAの預けタグが付けています(KEIMASAに頼まれて私が預けに行ったから)

参加者全員サービスのリュック
これだけが運営に預けることができる

預けた荷物には移動用の靴やパーカー、ちょっとしたおやつ等を入れます。
浅野さんは帰りのバスの中での暇つぶし用に本を入れていました(←浅野さんはこの後、リュックを預けた事が原因でとんでもない目に遭う)

人数の多さが規模の大きさ

参加者は15000人以上で計16グループ。
1グループ約1000人です(直前に日程が変更、それにより参加できない人達もいた)

このイベントではグループ分けに関しての規定が厳しく、前のグループから後ろのグループへの変更は可能ですが逆をすると失格扱いになり完走しても記録が残りません。

しかし後ろのグループで出走すると集団の実力や気候、時間の関係で完走が難しくなるので記録よりも完走を重視する参加者はどんどん前のグループへ行きます。
初参加の人はほぼ後ろのグループでの参加になりますが、事前登録の際に平均走行速度を40km前後にすれば前のグループに入る事も可能です。
しかし、なぜか初参加の大西さんだけは私とKEIMASAより遅い速度設定だったにも関わらず前のグループに入っていました(5000番台)

さては運営、お前ら適当にグループ分けしてるな。

奥まで見えないくらいの人数がスタートの瞬間を待ち続けていた

午前8時、ついに私のグループがスタートしました。

盛り上がるBGMと共に多くの参加者達が一斉にスタートをする
スタート地点からゴールまでは完全に街を貸し切る
最高のイベントの幕開けの瞬間でもある

まずはサイクリング、けど今回は少し違う

ニースの綺麗な街並みを眺めながらみんなと楽しく走行します。

目標は当然の事ながら無事に完走、しかし今回は別の目標もありました。

私の前のグループで出走しているKEIMASAに追いついて一緒に走る事です。
私は7000番台、KEIMASAは6000番台です。
前のグループとは約8分〜10分の差があるので頑張れば追いつく事ができます。

せっかくこんな大きなイベントに出たのに最初から最後まで1人はつまらないですからね。
というか、一緒に走りたいです。
なので序盤から速い集団にどんどん乗り換えてバンバン前へ向かいます。
後半に脚が動かなくなるのは承知の上ですが完走さえすれば特にこだわりはないので気にせずペダルを回しました(とにかく短い時間でも良いから一緒に走りたかった)

これが脳筋の考え方です。

最初の18kmまでが唯一の平坦区間

エタップが始まるよ!

18km地点、気づけば少しづつ路面の斜度が上がっていました。
20km地点、最初の山岳区間であるCol de Braus(ブロス峠)が始まります。

今回唯一の2級山岳コース
距離は約10km
平均勾配6.6%
約630m上る

坂道嫌いなんだよね

今回のコース設定はひたすら山を上らせてきます。
平坦区間が全くないので文字通りずっと山道を上ります。
本当にずっと上ります。
嫌になります。

なるべく早めにKEIMASAに合流したかったので序盤から他の参加者達を抜かし続けます。
ドイツでも同様ですがヨーロッパ人は基本的に山上りが苦手な人が多いのでかなり遅いです。
ちんたら走行していてもまぁまぁな人数を追い抜けるので本当に苦手なのでしょう。
しかし、中には住んでいる地域が山しかないという参加者もいます。
その人達は斜度6%前後なら平坦と同じような勢いで駆け上がっていきます。
わけがわかりません。

走行時のちょっとしたルール(エタップ版)

追い抜く際ですが、基本的には左側から追い抜きます(日本とは逆)
しかしふらついて走行する人や話しながら走行していて後ろからの存在に気がつかず道を譲らない人もいます。
その場合は右側から追い抜きます。
なんなら話している人達の合間を縫って追い抜いたりもします。
不思議な事に全く怒られません。
みんなやりますから。

場所によっては人が密集するから自分で抜かす隙間を見つけないといけない

チームメイト発見

どれくらい走った頃でしょうか。
遠くに青いジャージを着た人が見えました(他にも青いジャージを着ている人はいっぱいいますけど)
私達のチームジャージって結構目立つんですよ。

最近メンバーを募集しているのでドイツ在住のローディーの方、ぜひどうでしょうか。

近づいてみると私とKEIMASAより先に出走していた大西さんでした。
初めてのエタップ参加の大西さんは中々苦しそうな顔をしています。

K「あいつ(KEIMASA)は見ませんでしたか?」
大西さん「スタートしてすぐに前に行ってもらったので…かなり前ですよ」
K「分かりました。また後で会いましょう」

少しだけ会話を交わして再びKEIMASAを追います。

こりゃ爽快だ

山上りに疲れた私は早々と考えるのを放棄してひたすらペダルを回し続けます。
早く帰ってビールが飲みたいです。
しばらくすると立ち止まってカメラ(スマホ)をかまえている人達がいました。

なんだろうと思いながら見ている視線の方へ顔を向けます。

見事なまでに曲がりまくっている道
写真では見にくいが多くの参加者達が上っている
カーレースの会場にもなっていたりする

あまりにも壮大な景色だったので私も足を止めて写真を撮る事にしました。
私の住んでいる地域ではこのような光景を見る事はできないので『さすがフランスだなぁ』と思いながら眺めていました。
こんな曲がりくねった道、ドイツにはありませんからね。
そしてすごい人の数です。

Kわぁ、人がゴミみたいだ

私もさっきまでその一部でしたけど。

しかし長々と止まっていると動くのが嫌になるので再び走り始めます。

今回もいろんな国から来てるね

このイベントの参加者のゼッケンには名前の他にも出身国の表記がされています。
当然ながら参加者の大半の出身国はフランス🇫🇷です。
次に多かったのはイギリス🇬🇧の方々ですね。
昨年参加した際に見かけたナイジェリア🇳🇬のチーム団もいましたがゼッケンを確認したところ国籍はイギリスでした(ジャージがナイジェリアでどうやら移民らしい)
他にもイタリア🇮🇹、スペイン🇪🇸、ドイツ🇩🇪、ポルトガル🇵🇹、アイルランド🇮🇪とヨーロッパ近辺からの参加者が多数。
それとエストニア🇪🇪からの参加者もいました(昨年時も多数参加していた)
ルーマニア🇷🇴、トルコ🇹🇷の方々も何人かいましたね。
他の大陸で言うとアメリカ🇺🇸、カナダ🇨🇦、メキシコ🇲🇽、ブラジル🇧🇷、コロンビア🇨🇴の参加者がいました。
同じアジアからは私達日本🇯🇵の他に中国🇨🇳、香港🇭🇰からの参加者がいました(日本人は20人ちょい参加していたらしい)

イベント中、日本の国旗が珍しいからかちょくちょく他の参加者から話しかけられたりします。
特にフランスの方々からは「頑張れ」と日本語で話しかけてくれました。

私も少しばかり話をしたいところですが、フランス語は「ありがとう」「こんにちは」と「止まんな進め」と「そこをどけ」の4つしか話すことが出来ないので次回に向けてもう少し勉強しようと思いました。

このイベント中はくねくねとした道を永遠と走行し続ける
あまりにも何度も続くから結構嫌になる

自分のペースの作り方

集団の人数が多いので自分のペースで走行するのは結構苦労します。
追い抜きたくても邪魔で追い抜けない。
そんな場合は曲がり角の内側を使って一気に大人数を抜き去ります。
これを続ける事で自分のペースを維持できるのと同時にある程度の走行スペースを確保する事ができます。
大人数が参加するイベントでは有効な方法です。
後半に脚にきますけど。

気づけば頂上

見晴らしの良い山道をのんびり走行した30km地点、ようやく1つ目の終了ゲートが見えてきました。

1つ目のゲート
写真に収まりきらないくらい人がごった返していた
既に力尽きている人も何人かいた

記録開始エリアから山頂までは44分かかったそうです。
全体の順位では3150番目だったそうです。
微妙ですねぇ。

このゲートを超えた直後には小さな補給エリアがあります(どうやら休憩エリアではないらしい)
本当は長めに休憩を取りたいところでしたが、少しでもKEIMASAに追いつきたい意思が先行していたので写真だけ撮ってすぐに出発する事にしました。

上りより苦手な下り坂

山頂から山麓(さんろく)のソスペルの町まで約10km、約600m下山します。

お待ちかねの爆速下山区間です。

何もしなくてもすぐに時速60km以上出ます。
怖いです。
超怖いです。
怖すぎてまばたきできません。

微妙に曲がりながら凄い勢いで下山していく

直線基調の坂であればそれほどの恐怖は感じません。
しかしこのイベントではアホみたいに曲がります。
それが本当に恐怖です。

なんたってガードレールが膝くらいの高さまでしかありませんからね。

間違えてコースアウトしようものなら何mも崖から落下する事になります。

ナビがないと下山の難易度が一気に跳ね上がる
見晴らしの良いコースに出る度に次のカーブを確認しておかないとブレーキが間に合わない

ダイナミック山菜取り(落下)からのあの世行きコースです。

山菜取り

自転車レースでのコースアウトの事をオブラートに包んだ言い方

名前を付けた人、多分栗村修さん

K「集中しろよ!ヘボったらバラバラだぞ!」

集中を切らさないように大声で自分に言い聞かせながら走行します。
ただのヤバいやつです。
自転車にかなりの負担がかかりますがブレーキをかけまくります。
しかしあまりにも減速をし過ぎると今度は後ろから来た参加者に突っ込まれたりするので時折後ろを確認しなければなりません。

しかしながら時速60km以上で曲がりくねった道を走行しつつ後ろを確認するなんて芸当は私にはできません。

なので今回は前準備の話の際にも書いたガーミン社リアライトが大いに役立ってくれました(自分より速度が速い物体が接近するとセンサーが反応する)

時折追越車線から弾丸の様に現れる他の参加者にビクビクしながらなんとか下り切ってソスペルの町までたどり着く事ができました。

最初の山から心が疲れます。

今回のエタップはここがきつい

ソスペルの町まで無事に到着。
少しばかり心を落ち着かせようとします。

間髪入れずに上り坂が始まります。

K「うへぇ😫」

分かってはいましたがげんなりです。
それと同時に少しだけ天候が怪しくなってきました。
この日の天気予報では雨は降らないとの予報でしたが走行する場所は山なのであまり信用できません。
徐々に気温が下がっていくのを肌に感じながらのんびり坂道を走行します。
12km程走行すると1つ目の休憩エリアが現れます。

ようやく追いついた

ひたすら前の人を抜き続けた53km地点、1つ目の休憩エリアがあるムリネに到着しました。

朝ごはんを少量しか食べていなかったので腹へりです。

休憩エリアだけあって規模が大きい

自転車を置いて顔を上げたら見知った顔の人が走り出そうとしていました。

K「すぐ追いつくから!」
KEIMASA「あっ、もう来た!」

最初の目標としていたKEIMASAに追いつく事ができました。
しかしあちらはもう走り出す状態です。
すぐに追いかけたいところでしたが、前述した通り腹へり状態だったのでとにかく食べてから追いかける事にしました。

K「とにかく食べないと、身体がもたん」

私は急いで食べ物エリアへ向かいました。


ここまでご覧いただき誠にありがとうございます。
今回はどこまで書こうかかかなり悩みました。
しかし昨年参加した時同様にゴール後の話も書きたいと思ったので今回は1つ目の休憩エリアで区切る事にしました。
次回はこのイベントでも最も長い山から書き始めます。
もし楽しみにしてくれる人がいるのであれば幸いです

ではでは✌️

毎回の事だがスタートして数kmもしないうちにパンクをしている人が必ずいる
ヨーロッパイベントあるある

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