イケていない男
僕はイケてない。
イケてるやつっていうのは、季節の微妙な変化に合わせて服装を合わせることができるもんだ。
僕はそれができない。だからイケてない。
このところ、昼は心地よい暖かさで、夜になると風邪をひきそうになるくらい寒い。
いわゆる、寒暖差が激しい、というやつだ。
昨日の夜、僕はやけに寒いなと思いながらとぼとぼ街を歩いていた。
行き交う人を見ると、薄手のニットやら、トレーナーやら、この季節にちょうど良さそうなアウターを着ている方がたくさんいた。
皆、シュッとしていた。イケている。
大学生、会社帰りの若い人、子供を連れて帰る母親、おじいちゃん。年齢・性別問わず。おしゃれさだけでなく、寒暖差にも対応できる服を身にまとい、颯爽と足をすすめていた。
素敵な服を身につけた男女が素敵なダイニングで食事をとっているのが遠くに見えた。
きっとオマール海老を食べながら、近いうちに予定している海外旅行の計画の話でもしているんじゃないだろうか。
もしくはアクアパッツァを取り分けながら、この後に行く会員制のバーの話でもしているのだろうか。
空調が効いている店内では上着を脱ぎ、店を出たら羽織る。そんなふうにしっかり、そして的確に体温調節をするのだろう。
体調を崩してしまったら海外旅行が頓挫する可能性だってあるから気を付けるに越したことはないさ。
それを眺めている僕は、アロハシャツを着ていた。
僕はアロハシャツを着ていた。
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