「ショートショート」こんなに星がいっぱい。
「あまり贅沢もさせてあげれないけれど、どうか僕と結婚してほしい」
男としてはあまりにも情けないプロポーズ。しかし、奈緒は涙を浮かべながら、うんうん。っと2度返事した。
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親族と特に仲の良い友達だけを呼んだ、小さな教会の小さな結婚式。僕は奈緒を今まで以上……いや……奈緒の中では世界一幸せだって思える様ににしようって心に決めて菜緒の震える唇に口づけをした。
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今日奈緒が顔を赤ながら恥ずかしそうに嬉しそうに仕事から帰ってきた僕に「私達の赤ちゃんができたの」って報告してくれた。僕は嬉しさの余りに持っていたお弁当箱を放り投げて奈緒に抱きつき喜んだ。奈緒は「油と汗臭い」って言いながら僕の胸に嬉しそうに収まっていた。
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仕事中に菜緒のお義母さんから連絡が来た。
奈緒が産気付いたらしい。僕は慌てて病院へ向かった。僕がついたと同時に奈緒の陣痛も強くなり、分娩室に入って行った。
「頑張れ。奈緒。頑張れ。2人とも」
僕が廊下で全ての神様にお願いをし終わった頃、分娩室から大きな鳴き声が聞こえた。
元気な男の子だった。
お猿さんに似ているその男の子は僕と奈緒の子供だ。これからは奈緒と元気っと名付けた男の子と僕の3人家族になる。僕はもう1人この世で1番幸せだって思ってもらわなきゃいけない人ができた。
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元気がの幼稚園へ行く事になった。
初めは奈緒から離れなかったけれど、最近はお友達と遊ぶのが優先でお迎えの時ももっと遊びたいって駄々をこねる様になったって奈緒は少し寂しそうにしていた。
「でも、これも元気がすくすく育ってる証拠だよね」って嬉しそうにもしていた。
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ある日奈緒がお腹が痛いって病院に運ばた。
僕は車に乗り込み病院へ向かった。
病院に着くと奈緒はオペ室に運ばれていた。
お義母さんと元気は先についていて元気は飛行機のおもちゃで遊んでいた。
僕はただ奈緒が無事であって欲しいと願って永遠に感じ取れる時間を過ごした。
手術が終わりすぐに医者に呼ばれた。奈緒はお腹の大事な部分が壊れてしまって数ヶ月でこの世からいなくなるって内容だった。後のことは覚えていない。
ただ……星は飛んでいなかった。
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奈緒にも奈緒自身と僕の選択で後少しの命だと告げられた。いつも泣き虫の奈緒だったけど、泣くこともなく受け入れた様子だった。
僕にも、大丈夫だからねって笑顔で言ってくる。何もできなくてごめん。世界一幸せにするって言ったのにって心の中で自分を責めた。
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元気は奈緒とのお別れをまだ分かっていない。でも、ある日奈緒は「ママは元気のお星様になるから、晴れた日は時々ママをお空の中から探してね」って言う様になった。
沢山の管に繋がれた奈緒は少しづつ準備を始めた。
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遂にこの時が来た。浅くなる奈緒の呼吸の横で僕達は少しでもずっといて欲しいって願いながら手を握っていた。
喉の動き、ピクリと動く眉、手の温もり。
そして、もっと話したいって、置いていかないでくれって思った時に奈緒が目を開けた。
僕は奈緒。奈緒っと呼んだ。
瞬きで返事をする奈緒。
僕が世界一幸せにしてあげられなくてごめんって言うと「幸せだったよ……だってあなたと私と元気の物語にはこんなに星が飛んでいるんだもの」っと言った。
そして、大きく深呼吸をすると奈緒は星になった。
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奈緒がお星様になって2年が経った。今日は晴れ。元気との約束で今日は奈緒を満天の星空から探す為に公園に向かう。
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おしまい
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