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すべてが地続きの世界の中で、情報を精査していく【高遠菜穂子氏インタビュー】

5月6日の探求フェスプレイベント開催に先立ち、一般社団法人ピースセルプロジェクトの代表理事である高遠菜穂子さんにインタビューを敢行しました。2回目となる今回は、高遠さんのイラクでのご経験、SNS社会である現代の情報の精査についてお話いただきました。

前回の記事はこちら👇


世界は地続きで、全部つながっている

ピースセルプロジェクトのイラクでの活動の様子

イラクで活動すればするほど、見えてきたのは日本だった

―――海外に目を向けることで、日本の政治にも関心を持つことができますよね。日本の中にも色んな分断ってあると思うんですね。(探求フェスは)それを解決するためのコミュニケーションについて、今自分が生きている意味、日本の社会のことなんかにも目を向ける機会になるかなって思います。

一つ付け足すと、私2003年からイラクにずっと特化してやってるでしょ?イラクの人たちへの支援活動をやってるんだけど、やればやるほど見えてきたのって何かって言ったら、日本だったんだよね。これはね、想像してなかった

―――見え方が変わるってことですか?

海外に一歩出て外側から俯瞰して見たり客観視して日本を見てみれば、「あれーこんな風に見えてたんだ」とか、日本の良いところ悪いところが見えるものだけど、イラクに特化してやっていたらそこに透けて見えるのが全部日本の姿だったんだよね。

たとえば、政治の参加みたいな話あったでしょ。政治に参加するためには、日本国内だけじゃなくて、世界において、国際社会において、日本がどういう現在地にあるのかっていうのを知らないと自分の中で決められない。投票にしたって何にしたって。
そういう意味で言うと、私はイラクをやればやるほど、掘れば掘るほど出てくるのって日本の現在地だったんだよね。日本の姿だったの。それですごくなるほどって思ったんだよね。「なるほど、日本ってこういう国だったんだ、こういうことだったんだ、なるほど!」とか、「え!どうして??」とか、そういうことがすごくはっきりわかるようになったの。
それまではわからないこともいっぱいあった。政治のことも。でも、イラクをやればやるほど、それがすごくはっきりしてったっていうか。そういう経験ありますね。

要するに、政治っていうのはドメスティックなこと=国内のことだけじゃなくて、全部つながってる。全部地続き。日本の中での分断って言ったけど、全部地続き。格差の問題にしてもそうだし、ジェンダーの問題にしてもそうだし、いろんなところでつながってるんだっていうところあるじゃない?

さらにどんどんどんどん掘ってったら、「これまずいでしょ?日本」ってなって。イラク戦争にどういう風に日本が関わってたかっていうのは、多分イラクに来なかったらここまで深くは知らなかったしね。そういう経験がある。
だから、そういったところをイラクに来なくても知る機会、学べる機会っていうのを作れたらいいなっていう風には思ってた。

SNSを見ているだけでは世界の真実はわからない

ーーーだいぶ話戻っちゃうんですけど、日本で講演をやると高校生からいろんな質問が出てきてっていう話がありましたけど、どういう質問が多いのかなって思ったんですが。国際協力したいとか?

うん、それももちろんそうですね。あと、イラク戦争についての日本がやったことっていうのを、私が「イラク戦争が始まる前、始まってからとか、日本はこういうことをしました、こういうアクションを取りました、日本政府はこういう風に発言しました、こういう政策を取りました」っていうのを話していくじゃない?そうすると、「なんでそうなるんですか?どうしてそれを私たちは知ることができないんですか?」って質問がある。

それから、私自身も戦争のトラウマを負ってしまって、そのトラウマを克服するのはものすごい苦しかったんだよね。戦争の負の遺産というところで、イラクの人たちも戦争のトラウマやPTSD(※1)で苦しむ人がいて、私自身もPTSDで苦しんだし、 それからアメリカ人の兵たちもPTSDで苦しんでるのね。で、私はそういう米兵の人たちに対してもインタビューを色々やってきた。 だから、それを話すと、高校生たちは、「自衛隊の方々が海外派遣で行ってるけど、自衛隊の人たちにもPTSDは起きうるのか」っていうこと、結構聞かれるのね。

特にこれは、北海道や東北では必ず聞かれる。なぜなら、その子供たちのお父さんやお母さんなど、周りに自衛官がいっぱいいるから。私の地元(※2)は自衛官の町なので、私の周りにも自衛官の人たちがいっぱいいるし、日常的に気になる話題なんですよね。だから、そういう質問が止まらない。質問のために別室を設けてもらって、それでもさらに高校生たちは集まってきて、じゃあ別に時間を取りましょうってなって。

あと、イラク戦争、日本のこと、それから「国際協力に行くためにはどうしたらいいか」とか、「高遠さんは日本社会からの大きなバッシングを受けていた(※3)という風に調べましたが、どうやってそれを克服したんですか?」っていうのも結構聞かれるかな。
というのは、高校生たちは、何か国際協力的なアクションとかいろんなことをやると、必ず、ハラスメントされたりとか、 募金活動をやってその辺のおじさんに怒鳴られたりとか、いろんなことで悔しい思いをしてるらしくて。それで、「どうやって乗り越えたんですか?」みたいなことを聞かれたりする。

あとね、「情報鎖国はどうやったら克服できますか?」これも必ず聞かれる。一番聞かれるのはこれかな。要するに、「知らないことが多すぎたっていうことがショックで、なんで日本語の記事だと調べてもあんまり出てこないんですか?」みたいなことかな。

―――SNSでは本当に色々な情報が流れてくるから、政治的なことや海外の情勢に関して、どれが正しいのかもよくわからないし、情報リテラシーも今後磨いていかないとですよね。

そうですね。SNSがここ数年ですごく日常になってしまったので。ただ、SNSで流れてくるものは、一回冷静になった方がいいよね。特に、何かことが起きた時には。SNSっていうのは、たとえば災害が発生した時とか、使い方によってはtwitter(X)なんかはすごくいいけど、例えば今のロシア、ウクライナとか、イスラエル、パレスチナだとか、そういったことに関して、「twitter(X)見てるから、俺は、私はチェックしてます」っていうのは危ういかな。

読むべきは、ちゃんとした書面の調査記事。今は動画でさえ、その真偽っていうのが確かめにくくなってるから。書面やちゃんとしたジャーナリズムの中で書かれた記事、レポートとか、そういうものが必要かなって。それで、定期的に調査報道っていうのは読んだりしてる。twitter(X)だけだと危ないね。

あと、日本は結構吟味して載せてるけど、その代わり少ない。びっくりするぐらい量が少ない。翻訳も、全部翻訳されてなかったりするんですよね。3分の1ぐらいでもう終わっちゃった、みたいな。タイムラグもすごい。せっかくいい調査記事が出てたりするのに、翻訳されるのが半年後とか、すごいタイムラグがあったり。でも、今は英文の記事でもクリック一つで翻訳がすぐ出てくるんですよ。そういうのが通常で、スタンダードで、 標準な感じでやらないとダメかもね。

―――なるほど。

基本的にインターネットの世界の中で、情報のほとんどは英語じゃないですか。日本語なんてこのぐらい(ほんのちょっと)です。だから、英語を必要とする仕事じゃないとしても、生きていく上で英語っていうのはツールとしては結構マストではある。ただ、だからって英語を勉強しないとダメなんだっていうことではなくて。さっき言ったみたいに、ワンクリックで全部瞬時に翻訳できる。クオリティはアプリによって色々あるけど、英語は無視できないと思うね。

※1:心的外傷後ストレス障害。トラウマ体験に晒されたことで生じるストレス症候群のこと。
※2:北海道千歳市。千歳市には、航空自衛隊基地や陸上自衛隊駐屯地がある。
※3:2004年、イラク武装勢力が日本の陸上自衛隊のイラク撤退を求め、高遠氏を含む日本人3人を拘束する事件が発生。その後3人は解放されたが、帰国後に「自己責任」を問う猛烈なバッシングに遭うこととなる。

(次の記事へつづく・・・)

〜学ぼう、深めよう、世界と私をつなげよう〜
日常のなかにある、ふとした疑問や違和感。
いつもは見過ごしてしまうものでも、この機会に"探求"してみませんか?

✼••----開催概要----••✼

▶日時
2024年5月6日(月・祝) 10:00〜19:00

▶会場
高尾の森わくわくビレッジ
(JR線・京王線 高尾駅からバスで約15分)
(東京都八王子市川町55)

▶プログラム
・ドキュメンタリー上映〈『プロミス』『わたしは分断を許さない』〉
・ゲスト講演〈堀潤氏・白川優子氏・今井紀明氏〉
・対話の時間(参加者・ゲストとのフリートーク)
・演劇的手法を使ったワークショップ
など

✼••----ご応募----••✼

▶通常申込:参加費をお支払いいただき、ご本人が参加される場合
・5,000円(映画鑑賞・講演会・昼食含む)

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・あなたのお支払い:無料

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・1枚 5,000円

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