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無力感という力を持ったあなたにこそ、ぜひ参加して欲しい【高遠菜穂子氏インタビュー】

5月6日にプレイベントを開催予定の「探求フェス」。ドキュメンタリー映画映画を観たり、国内外で活動されるゲストの講演を聞いたりする中で、目の前の相手と、あるいは自分との対話を深めよう!自分が感じている課題や探求したいテーマを深めよう!という企画です。
探求フェスがどういう想いで企画され、参加した方に何を得て欲しいのかを明確にすべく、探求フェスを主催する「一般社団法人ピースセルプロジェクト」代表理事の高遠菜穂子さんにインタビューを敢行しました。
探求フェスを企画した経緯から、菜穂子さんのこれまでのご経験、プレイベントのゲスト陣とのエピソード、はたまた人生相談まで、盛りだくさんの内容となりました。数回に亘ってお送りします。

高遠 菜穂子(たかとお なほこ)
フリーランスエイドワーカー
1970年、北海道生まれ。大学卒業後、会社員を経て地元で飲食店経営に携わる。2000年インドの「マザーテレサの家」、2001年からタイ、カンボジアのエイズホスピスでボランティア活動に専念。2003年5月からイラクでの活動開始。主に病院や避難民への緊急支援、医療支援などを行う。2004年4月にイラク・ファルージャで「自衛隊の撤退」を要求する現地武装勢力に拘束された。解放後、日本国内で「自己責任」バッシングを受ける。現在もイラク人道・医療支援活動を継続中。2019年より難民・国内避難民を多数受け入れているクルド自治区ドホークで教育支援に特化した「ピースセルプロジェクト」を設立。2022年、一般社団法人ピースセルプロジェクト代表理事に就任。
イラク戦争の検証を求めるネットワーク」呼びかけ人、「海外派遣自衛官と家族の健康を考える会」共同代表、「九条の会」世話人

―――今日はよろしくお願いします。今、探求フェスのnoteの記事を担当させてもらっていて、まだ4本上げたところ(インタビュー当時)なんですけど、

4本!すごい!

―――ありがとうございます。今後、探求フェスや運営メンバーについて紹介して行きたいと思っているんですけど、その中で探求フェスについてとかピースセルプロジェクトについてとか、菜穂子さんへのインタビュー記事っていうのもアップして行きたいと思っていて、今日この場をセッティングさせていただきました。
インタビュー項目をお送りさせていただきましたが、これ全部菜穂子さんに聞いてたら何時間にもなるから~と伺ったので、とりあえず今日は探求フェスに絞ってお話を聞かせていただけたらなという風に思っています。

OK!Ask me!聞いてください。

―――はい。では聞いて行きます。まず、探求フェスを企画した経緯ですとか企画した理由とか想いっていうところを聞かせていただけたらと思います。


探求フェスを企画したのは高校生たちがきっかけ

ピースセルプロジェクトのイラクでの活動の様子

質問が止まらない高校生たち、開眼していく彼らの姿

私はイラクでの支援活動が2003年からだから丸20年になるんですけど、日本に帰国した時っていうのは結構講演会をやってるんですね。学校を回ることも多くて、特に高校とか大学が多いんですけど、学校を回っている時にね、(生徒さんが)「初めは何だろこの人?」みたいな感じで、終わった後に質問どうぞって言った時は一瞬ないんだけど、しばらくすると質問が止まらなくなったりするんだよね。

10年位前だと思うんだけど、東京のある学校でお昼休みになっても生徒たちが全然教室に帰んないのね。お昼ご飯を食べずに次の5限目が始まるよっていう時までみんな立ったまんま質問しながらさ。で、その時に一人の女の子が「もっともっと聞きたいことがある。菜穂子さん、こういうの合宿とかでやらないんですか?」って言われたのがきっかけ

―――そうなんですね。もう10年位前のお話ってことですか。

「へえー合宿?!合宿でやるの?マジすごいね!」って思って。
当時若い人たちって、あんまり国際情勢とか興味ないのかなとか、そういう感じに思っていたし、一般的にも政治に無関心だし。・・・って、(どの時代でも)必ず言われるようなことだけど。
その時に「高校生たちにも質問がたくさんある」っていうのを体験して、「ああなるほど!無関心なんじゃなくて知る機会がないだけなんだな」っていう風に確信したんですよね。

ドイツのスタディツアーに行く高校生たちのスピーチの練習を手伝ったりするんだけど、その子たちがドイツのドイツ国際平和村(※1)に行って、ドイツはたくさん難民を受け入れてるとか、そういうようなことを目で知って、肌で感じて、そういったのを体験してて。
引率で行く時もあるし、引率で行かない時はイラクからzoomで中継して1時間くらい難民支援とか紛争についてのレクチャーをしてるんですよ。みーたん(探求フェスの運営メンバー)もそうなのね。みなみさんもドイツで私のzoomでのレクチャーを聞いて、それで興味を持ったとか。元々探求のメンバーにいる、りおもそうなんですよ。

私はりおが行った時のスタディツアーは、ドイツまで引率で行ってたんですよね。その時に、目の前で高校生たちが色んな体験をして開眼していく。毎秒毎秒開眼していく姿を目の当たりにして。さらに「菜穂子さん、これってこういうことなんですか?」とか(質問してくる)。
たとえば、ドイツ国際平和村に行った時に紛争地から怪我してる子たちが来る。でも、私も紛争地から来てて紛争地で緊急支援をしてる。質問を受ける。私が自分の体験を話す。みたいなことをやってると、看護師を目指していた子がドイツ平和村で私の話を聞いたことにより、医者になりたいって言って。国際貢献するためには医者になりたいって、帰国してから進路を変えたりとか。そういうことがあった。だから、高校生たちがきっかけ。

※1:紛争や危機的状況にあり、自国で十分な治療を受けられない子どもたちをドイツに連れてきて治療し、治ったら母国へ帰す「援助飛行」という活動を半世紀以上に亘って続けている施設。

コロナ禍で体験の機会を失った日本の若者たちが世界とつながるには

―――10年位前にそういったことがあって、そこからの10年間いろいろな形で学生さんと関わりを持たれて来られたと思うんですけど、探求フェスという企画として、今、探求フェスをやる、このタイミングになった意味ってありますか?

ずっと「いつかやりたい、いつかやりたい、いつかやりたい」とは思っていたんだけど、コロナで日本は特別に制限されている期間が長かったじゃない?それってやっぱり影響出てるなって感じちゃったんですよね。若い世代は特に。
私の身近にいる大学生とかも、大学に通っている意味が見出だせないとか、よく聞いたんですよ。大学中退したとかって結構続出していたりとか。大学生って、自分は将来何したいのかって自由に学んで見つけられる期間でもあるじゃない?人生において。だけど、そういうことがなかなかできない。制限されてた。サークル活動できないとか、海外行けないとか。

昔は、それこそ私がまだヨルダンに住んでた10~15年前は、大学生のスタディツアーとかも結構ヨルダンに来たりしてた。そこですごい色々体験するし、外から日本を見たりするし、日本の良い面も、ここはどうなんだろう?って思う面とか、色んなカルチャーショックを体験しながら、その中で「自分はどう生きるべきか」っていうところに行き着く。こういう現実を知って、「わあ知りたくなかったわ、重いわ、マジ無力感だわ」みたいな感じになってって。でも、その時に自分はどう生きるのかとか、そういうことを考えるきっかけにもなったりするわけですよね。
だけど、日本の場合は丸々2年間コロナでそういうのができなかったでしょ?海外に出なくても世界とつながる方法を提供できないかなって思った、っていうのはあるかな。

―――確かに、コロナによる体験機会の喪失っていうのは皆さん感じていたところだなと思います。

検索する前に、「自分の心は何を感じているか」を問いかける

ピースセルプロジェクトのイラクでの活動の様子

生身のコミュニケーションを生むための、自分の心に聞くための、デジタルデトックス

―――探求フェスの運営の話になっちゃうんですけど、今コロナで色々な制限があってっていうお話がありましたが、(探求フェスのプログラム中、エキスパートの講演や対話の時間や一人で外に出て頭を整理するとか)自由に行き来できるようにっていうお話が(ミーティングで)あったじゃないですか。菜穂子さんも仰ってましたけど、自分だったら、「プログラムがあって講演会3人あるんだったら、3人全部聞かなきゃいけない気がする」とかあるなって。日本人は真面目に「全部見なきゃ」とかなりがちですが、そこがもっと自由に学べるような仕組みができたら良いなっていうのは思いましたね。

そこで重要なのがデジタルデトックス(※2)で。デジタルデトックスって、目を守るとか目を休めるとかそういうところから始まるんだけど、心で感じて頭で考えてっていう、自分の身体と心をフルに使うということ。

たとえば、知り合った時に今だったらすぐ「インスタ教えて」ってなっちゃうじゃない?だけど、インスタのプロフィールじゃなくて生身のコミュニケーションみたいなものをしたいなっていうのがあるんですね。
それと、ドキュメンタリーを見たり講師の話を聞いた時に、まず「自分の心が何を感じているのか」っていうのを自分が見るっていう。いきなり検索しないで。「ちゃんとこの人知りたいな、インスタのプロフィールじゃなくてこの人知りたいな」っていう。

だけど、そこまで普段使わないでしょ、心もさ。だから、そういう意味で自分の心で感じてよく考えてっていうのをして欲しい。さっき唯が言った「3人の講師どれも興味ある」、これも自分の心に聞くんだよね。「今自分が生きている人生の中で自分はどこにご縁があるんだろう?」みたいな。それも心で感じて考えて選んで欲しいなあって思うの。

※2:スマホやPCなどのデジタルデバイスを一定時間オフにして距離を置くこと。身体の凝りや疲れ・ストレスを軽減させるだけでなく、豊かなコミュニケーションを生む、生活習慣を改善させる、といった効果もある。

日本人は紛争地における第三者の役割が適任だと思う

ピースセルプロジェクトのイラクでの活動の様子

紛争を非暴力的に解決するにはコミュニケーションの深化しかない

―――私が普段人と接している中で思うのは、心と対話するとか人と向き合うっていうことに普段から注力している人と、そういう話全然通じないや、みたいな人と二極化するなって思うんですよね。もちろんそっち(全然通じないや)の人に言ったら何にも響かないかもしれないんですけど、そういうことを普段考えない人にどうやったら伝えられるのかなっていうのは難しいと思うところですね。

紛争を武力で解決しないで非暴力的に解決するってどうするかっていったら、それはコミュニケーション取るしかなくて。コミュニケーションでしか非暴力解決方法って生まれてこない、武力を使わないとすれば。そうすると、コミュニケーションって、深化する、深めることが必要なのかなと思って。

今私たちがいるイラクっていうところは、とにかく分断があり得ないくらい深まっていて、根深くて、解決しようがありません。「イスラエル?パレスチナ?いや無理でしょ」っていう、紛争地ってそういう状況にあるわけですよ。だけど、そこにPCP(ピースセルプロジェクト)はチャレンジして、コミュニケーションを深めることをやっていく。私は何を探求しているかっていうと、それを探求してるんですよ。

対話があまりにも困難すぎて、対話のテーブルについてもらうことさえ一苦労。対話が絶対に交わらない、なんなら目を合わせて話すことも無理っていう。対話って困難の極みなんだよね。だけど、「困難の極みである対話を実現するにはどうしたらいいのか」っていうのを探求してるのがPCPなのよ。

ここ(イラク)は日常的に摩擦が「え!え!」っていう感じにあるんだけど、日本にいる人たちにとっては、摩擦を日常的に感じることはないかもしれない。日本は地理的に他国と国境が接していないから。だけど、日本の人たちって、私からしたら、世界の中でも紛争地における第三者の役割、いちばん適任者だと思うの

―――第三者の役割?

紛争当事者だけでは対話にならないわけよ。そこに必ず第三者が入らないと対話って成り立たないんだよね。
私は、日本人の全体的なキャラクターとか持たれているイメージ、それから、ネガティブな意味で空気を読むとか読み過ぎるとかって言われるけど、ちゃんと空気を読めるっていうとこも一つの特徴として見ると、反目し合っている紛争当事者の間に入る時にとても気を配れるというかね、ファシリ(テート)できるというかね。そういう風にも私は感じていたりするんですよ。

だから私としては、日本の中からピースメーカーがいっぱい出て欲しいと思ってる。ピースメーカーになるためには、想像力とかコミュニケーションを深められる人。まずは自分を深められる人。そういう意味でも、探求フェスでできるだけ短時間でもコミュニケーションを深めようっていうことを試みて欲しいなって思っています。

無力感を感じたら、それはもう「力」だよ

―――探求フェスにどういう人に来て欲しいとか、こんな方に参加して欲しいっていうところだと、コミュニケーションを深めたい人、他にはこういう人に来て欲しいっていうのはありますか?

多世代のつながりを作りたいっていうのも結構あるんですよ。世代間ギャップとかね、そういうのがあったりするから。
学びを応援するチケット(※3)を買ってくれる人ってある程度年配者になるじゃない?そことエントリーする若い人たち、この世代間をつなぐみたいな。感想文を送って貰うことで世代間をつなぐっていうのもそうだし、参加する中でも、「一つのテーマでも世代によってはこういう風に感じる人もいるんだ」とか。

私も若い人たちと話すと、毎回「なるほどね、こういう風に感じるんだ、今は」とか、逆に「こういうことはダメなんだ」とか、いっぱいあるのよね、学びがね。
だから、特にはない。ただ、世界を見てみたいと思う人、世界とつながってみたいと思う人には、このコンテンツはやばいと思う。仲間も多分見つかるし。

「講演会で(菜穂子さんの)話を聞いたら、何をしていいかわからなくなって無力感を抱いた」っていうのは、よく相談を受ける。知らないことだらけで涙しちゃう子もいるしね。だけどそれって、すごく私は良いなと思ってて。

知ることってさ、全てのスタートだよね。知らなければなかったことと同じだし。全ての始まりは知ることだから、無関心じゃないよと。これはつまり「無関心なんじゃなくて知る機会がなかっただけ」なんだよね、っていうことになるじゃない?

無力感っていうのは、私すごく歓迎してて。無力感を感じる、無力感に押し潰されそうっていうのは、「その人たちのために何かしたい!役立ちたい!手を差し伸べたい」っていう気持ちがすごいから無力感なわけでしょ?この感情ってすごく尊いなって私は思ってて。「無力感を感じたら、それはもう力だよ」って私は声を大にして言いたい。だから、そういう人にこそ来て欲しい。

世界のことを知り始めてあまりにも遠すぎるとか、私には無理とか、日本から出る予定はないとか、私にできることはないって思ってる人にこそ、ぜひぜひ来て貰いたい。その無力感は力だし、それを思うってことは既に力を蓄えてるってことだから。無力感を糧にして進めるってことだと私は思ってるんだよね。

―――私も全然今まで海外とか世界とか目を向けたことがなかったんですけど、探求フェスの説明会に参加して、それもなんとなくfacebookでおすすめかなんかで出て来ていいねしてて、無料だし何も考えずにとりあえず説明会参加して、ピースセルプロジェクトの話とか聞いて。そしたら、世界めっちゃ広いなとか思って。

はははは(笑)

―――「世界すごいな!世界広いな!世界にはこんなことしてる人いるんだすごいな!」ってその直感で。説明会の次の日、夏穂さん(探求フェス運営メンバー)にお会いして運営やりますって今に至ってるんですけど。なので、探求フェスに参加してそれぞれに色々持ち帰ってもらえるものがあると思うんで、すごい有意義なイベントになりそうです。

今、特に若い人たちは、目の前でウクライナのね、ロシアの侵攻が始まったとかね、イスラエルとパレスチナのすごいのが毎日テレビでやってるとかね、それも高校生から聞くんですよ。中には、「あまりにも毎日見過ぎて慣れて来ちゃった」とかね。どうして良いかわからない無力感っていうのもすごくあるけど、一方では慣れて来ちゃったとか。

若い人たちが自分が生きているこの瞬間に始まった二つの戦争を、「でもどうしていいかわからない、パレスチナに行けない、ウクライナに行けない」って。でも、行かなきゃできないのかっていうとそんなことなくて。そこに、日本に生まれた意味とかこの時代に生まれた意味とかそういうものがあるから、探求フェスに参加して、自分がどう生きるのかっていうのをアウトプットできる仲間を見つけて、色んな想いとかっていうのを糧にしてアクションできる、一歩を踏み出せる。それが私が一番皆さんに願うことっていうか、そこを持って欲しい

※3:学びたいけれど経済的理由で参加を諦めようとしている方に対して、学びを応援したい方が探求フェスの参加チケットをプレゼントする仕組み。

(次の記事へつづく・・・)

〜学ぼう、深めよう、世界と私をつなげよう〜
日常のなかにある、ふとした疑問や違和感。
いつもは見過ごしてしまうものでも、この機会に"探求"してみませんか?

✼••----開催概要----••✼

▶日時
2024年5月6日(月・祝) 10:00〜19:00

▶会場
高尾の森わくわくビレッジ
(JR線・京王線 高尾駅からバスで約15分)
(東京都八王子市川町55)

▶プログラム
・ドキュメンタリー上映〈『プロミス』『わたしは分断を許さない』〉
・ゲスト講演〈堀潤氏・白川優子氏・今井紀明氏〉
・対話の時間(参加者・ゲストとのフリートーク)
・演劇的手法を使ったワークショップ
など

✼••----ご応募----••✼

▶通常申込:参加費をお支払いいただき、ご本人が参加される場合
・5,000円(映画鑑賞・講演会・昼食含む)

▶応援チケットにエントリー:あなたの学びを応援したい人からチケットを受け取って参加される場合
・あなたのお支払い:無料

▶応援チケットのご購入:あなたがご購入くださったチケットを、エントリーしていただいた方にプレゼントします
・1枚 5,000円

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