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ジャズは怖くない!分かりやすいジャズ、その3

投稿者:さかな先生 (ツイッターで音楽のことつぶやいてます
前々回は、ジャズにも色んな種類があって怖くないジャズもあるよ〜って話、前回はマイルス・デイビスについての話などジャズ初心者でも入りやすい曲も紹介してます↓

それでは今回も、ジャズ初心者が聴くべき曲を早速ご紹介していきます。

上の記事、その1、その2では1990年代、60年代のJAZZをご紹介しました。

もちろんジャズと言えばその時代に名盤と呼ばれるアルバムが多いのも事実です。

ただそれは、サッカーで例えるなら、2022年時点においてペレの試合を見ろ、と言っているようなもの。

そこで今回、21世紀のジャズ作品の数々から、2022年現在のジャズの現状を反映しつつ入門編として比較的親しみやすいと思われる名盤を選び、解説をしようと思います。ジャズを聴いてみたいけれど何から聴いたら良いか解らないという方の参考になれば幸いです。

Robert Glasper Experiment「Black Radio」

卓越したセンスと個性でジャズとヒップホップの垣根を越え続けるロバート・グラスパー。グラミー賞最優秀R&Bアルバム賞を受賞した本作は、ブラックミュージックの歴史と未来を融合した世界へとリスナーを引き込んでいく。エレクトリックピアノ、ベース、ドラムの基本構成に、エリカ・バドゥが歌うスタンダード "Afro Blue" や、ヤシン・ベイが参加する "Black Radio" など、豪華なゲストたちをグラスパーの美しいキーボードとピアノが包み込み、ジャジーでモダンなブラックミュージックの世界が展開される。デヴィッド・ボウイやニルヴァーナの楽曲を心地良いピアノでジャズアレンジしたカバーには原曲とはまた違う独創性があり、多彩なアレンジ力を感じます。

1990年代にはジャズの基本形(4ビートを基本としベースxドラムスxピアノまたはギターというトリオ編成、更にサックスやトランペット等が入るカルテットやクインテット編成で各プレイヤーが順にアドリブを回す)はこれ以上進化しようがないところまで完成度を高めていました。

これに対して新たなジャズの模索という試みも同時進行されてきました。1980年代はジャズにロックやファンクの要素を加えたクロスオーバー/フュージョンが全盛期を迎え、1990年代はR&Bやヒップホップの要素を取り入れたアシッド・ジャズが流行しました。
アシッド・ジャズの流行は2000年代に入り衰退したようにもみえましたが、ジャズとR&B〜ヒップホップとの融合についてはより踏み込んだ追求がなされていました。それを明確に提示した金字塔といえる作品が10年前の2012年にリリースされたロバート・グラスパー「Black Radio」です。

Robert Glasper Experiment名義でリリースされた「Black Radio」シリーズは、ジャズ・ミュージシャン4人によるユニットでありながら曲毎にネオソウル〜ヒップホップ界のゲスト・ヴォーカリストを迎え、ヴォーカルを主役に据えながらジャズ・プレイヤーによるネオソウルを追求した画期的な作品となりました。

ピアノはよくあるバッキングのような奏法はとらず、間奏でアドリブを弾くようなこともせず、従来のジャズ的なアプローチとはまるで違っていて、でも出している音は紛れもなくジャズであって、単にジャズ・ミュージシャンがネオソウルをカバーしたのではない新しいサウンドがそこにはあります。

他にもオリジナル曲に加え、デヴィッド・ボウイやニルヴァーナなど、一見ジャズやネオソウルとはかなり遠い位置にいそうなアーティストの作品をカヴァー曲として採用しているあたり攻めの姿勢を感じさせます。ロック好きたちもこの作品は入りやすいですね。(自分もその口)

「Black Radio」がリリースされた翌年の2013年に続編的な「Black Radio 2」、更に8年半の年月を経て2022年2月に「Black Radio Ⅲ」がリリースされました。この「Ⅲ」は初作から年月を経て更に熟成されたハイブリッドサウンドに仕上がり、2020年のBLM運動でインパクトを呈したKiller Mikeを2曲目『Black Superhero』にゲストMCとして招くなど、ヒップホップ的な強いメッセージ性も内包しています。今から「Black Radio」シリーズを聴こうという方は「Ⅲ」から聴いてみてもよいでしょう。


今や音楽学校で学ぶ難解で近寄りがたい音楽となってしまった現代ジャズですが、元々は酒場で見よう見まねで習得する音楽であり、人々の(特にアフリカにルーツを持つアメリカ人の)隣にある音楽でした。
その点ではR&Bやヒップホップと本来の立ち位置は変わらないはずです。

この「Black Radio」シリーズは斬新なアイデアである一方で、アフリカにルーツを持つ人々の隣にある音楽というジャズの原点に立ち返った作品でもあります。

R&Bやヒップホップを聴く感覚でこのアルバムを聴く、それはグラスパーの願うところであり、今後のジャズのスタイルの一つなのでしょう。

よろしければぜひ、きいてみてくださいね。


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