コラム『仏さまになった猫』
我が家で飼っていたオス猫のカンタの奇跡
私が高校生の頃飼っていた猫のカンタはハチワレ模様のオス猫だ。元々、メスのノンタンという猫を飼っていたので、ノンタンが産んだ息子がカンタだった。
父親が外国猫だったのか、カンタは目が青かった。
生まれた時は綿毛のようにふわふわしていて、ぬいぐるみみたいで可愛かった。大人になるとカンタは美しいオス猫になったが、早めに去勢手術をしたため声は甲高い赤ちゃん声のままだった。
カンタは自慢したがりで、捕獲した小動物を必ず家に連れて帰ってくる。そして、私たちに見える場所に置く。
当然それを見た私たちはいつも
「ギャーッ」
となるのだ。
あまり甘えてこず、気まぐれだがすごく愛らしい猫だった。
カンタが起こした奇跡!
ある時、私も幼い頃からよく知っている、家族みたいな近所のおばあちゃんが、祖母のところに遊びに来た。祖母とお茶を飲みながらこんな事を話した。
「昨日たまげた事あったよー。仏壇に団子をお供えしていたら夕方無くなってた!家の中探しても見つからないから、きっと仏さま食べたに違いねえ、ありがてぇこった」
祖母は、へえ不思議なこともあるもんだと話を聞いていた。私もうなずいた。近所のおばあちゃんが帰ってから、カンタが和室の方から、ニャーーッと甲高い声で鳴く。いつもの通り、獲物を捕まえた時と同じだ。
祖母がカンタのところに行って大爆笑している。
我が家では買った記憶のないお団子、猫の歯でカミカミしても開封しきれなかったのかボロボロだった。
そうなのだ、
お団子を食べたのはカンタだった!
夕飯の時間になり、その話で家族全員で爆笑した。
みんなで笑った。
「カンタ、仏さまになったねー」
その一件が家族で猫を飼っていた時の思い出。翌日すぐに近所のおばあちゃんには報告して、お団子は弁償した。玄関も猫が入れないようにきちんと戸締りしとくからなあと笑っていた。
そんな、優しい思い出なんか懐かしい。
猫がもたらすものってたくさんある。暖かい布団のような温もり、ごはんをちょうだいと鳴き続けるおしゃべり、シャンプーすると急に激痩せする情けない姿、小動物を窓から威嚇する声、網戸に刺さる爪、またたびの虜になる姿。すべてかわいくて愛おしい。
かわいい仏さま、今日はなんだか思い出した。
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