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神戸市東灘区甲南町のラーメン店のこと

春は豚骨ラーメンを食べよう

ぽかぽかと春の兆しを感じるようになりました。
わたくしの住む街にも、穏やかな陽気に包まれる、そんな日が増えてまいりました。

毎度ありがとうございます。
長文になりそうな、書きたい喋りたいという気持ちをグッと押さえ込みまして、今日は短くタイトに綴りたいと思います。

普段スルーされてらっしゃる方も、いえ別にそれはそれで構わないんですが、宜しければどうぞお付き合いください。

みんなラーメンライスだった

豚骨ラーメンの食べ方。

今日はこれについて、手短にお話ししたいと思います。

そうなんですよ、難しいんです。
なにが難しいって、薬味を入れるタイミングでございますよ。そこからしてもう奥が深い。

本場九州の、正式なやり方、これはわたくしの不勉強で存じ上げません。
これから申し上げるのは、わたくしが四半世紀に及ぶ考察の上に辿り着いた、豚骨ラーメンの食べ方、これを特別に披露したいと思います。

わたくし以前は、迷わず券売機の左上に位置しております、「らーめん」あるいは「中華そば」などと書かれた、いわゆる「ノーマルのラーメン」と「半ライス」というスタイルを貫いておりました。
これはかの有名な大瀧詠一さんの歌にも出てまいります。
腹が減ったらラーメンライスと相場は決まっていた、というような歌詞だったと思いますが、ラーメンがまだ安かった頃、お腹を空かせた学生は小銭を持ってラーメンライスを食べに行ったわけであります。

その頃の習慣でございまして、その後もずーっと馬鹿の一つ覚えではございませんが、わたくしは決まってラーメンライスを食べ続けておりました。
お昼時などは半ライスがサービスです!なんてお店もございまして、そんな時は迷わず付けていただく、半ライス一杯分が浮いて得をした、二度美味しいなんて思いをしたりします。

つまり長い間金が無かったんです。笑

それが最近わたくしは、別に金持ちになったわけでは決してございませんが、チャーシュー麺を頼む、あるいはチャーシュー麺にネギや煮卵をトッピングなんてことをやり始めまして、随分と贅沢をする様になりました。

「全部のせ」なんて日もございます。
もうこれは、ですね、心の底では悪魔に魂を売ったような、我ながら実にけしからん事だとは思っているのですが、それでもラーメンには具が沢山のっている方が楽しい、美味しい、ということを、令和の世の中になって初めて認めたわけでございますよ。進歩でございます。

麺のバリエーション

麺でございますが、九州の豚骨ラーメンは基本的に細麺でございまして、茹で方を指定することができます。
硬い順に「粉落とし」「ハリガネ」「バリカタ」「硬め」「普通」「柔らかめ」。

その昔歌手の村田英雄先生がステーキを注文した時、「焼き方はいかがなさいますか?」と店員さんに聞かれて「ガスで。」と先生はお答えになったそうですが、これは余計な話でございます。

先に進みます。

わたくし、最近まで麺の硬さは「硬め」か「バリカタ」でございましたが、最近は「ハリガネ」と言うようにしております。
理由は後ほど説明いたします。

「ハリガネ」の理由

スープの指定が出来るお店では「味濃いめの脂少なめ」などとお願いをさせていただくんですが、九州系のお店だと麺の硬さのみを指定することが多いです。

着丼して、まずはスープを。
続いて麺、そしてスープ。
チャーシュー麺の場合はここでチャーシューを一枚だけ食べてみてもいいでしょう。
何せ全部で5枚ぐらい乗っておりますので、一枚ぐらいはケチらなくても宜しいかと思います。
ノーマルの方はチャーシューはまだ取って置いてください。我慢です。名作映画「たんぽぽ」の大友柳太朗さんなら「あとでね♡」と優しく語りかけていることでございましょう。

替え玉をされる方、麺は全て平らげて替え玉を注文してください。
替え玉をされない方は麺を三分の一程度残した状態で薬味を入れて味変をしましょう。

わたくしは「ニンニク」を入れてスープを。
辛子高菜でさらにスープ。
続いて白胡麻。
この辺りでスープに浸かった海苔でもってお待ちかねの半ライスです。

半ライスは、この時点まで我慢です。
理由はですね、細麺がどんどん、刻一刻と柔らかくなってくる、その配分を逆算した上で、わたくしは「ハリガネ」と申し上げているんです。「硬め」ぐらいだと寿命が持ちません。
薬味で味変するまで麺が柔らかくならないように、年老いても素敵なままでいられるように、若いうちから手を打っておく。
何事にもおいても、計画は大切です。

丼という考え方


海苔でご飯を味わったらチャーシューを何枚かご飯に乗っけましょう。
ネギのトッピングなんかございましたら、そのネギをスープに浸してさらにONです。

既にお気づきの方はいらっしゃると思いますが、これに煮卵を乗せると、ほとんどルーローハンでございますよ、これに辛子高菜を添えて紅生姜なんかもございましたら、もうこれはたまりません。海苔はここで登場させるというアイデアも素晴らしいと思います。

このスペシャル丼を味わいつつ、交互に残りの麺でございます。
ちょうど「ハリガネ」の硬さから普通の硬さぐらいになっている頃でしょうか。この変化も積極的に楽しみたいものです。

最後のチャーシューの番が来たら、ですね、残りのご飯の分量も上手く調整をして、ご飯とチャーシューが同時になくなるぐらいがわたくしには丁度いい心持ちでございます。

よく噛みます。
丸呑みは30代まで。
40代は咀嚼して味わうことを覚えなければなりません。
大腸ポリープですとか胆石ですとか、色々と心配でございますし。

で、最後。
スープが残ります。

ここへ紅生姜、あるいは、お酢。
最後はさっぱりといただいて、ファンファーレを楽しみましょう。
丼を両手で持ち上げてスープを飲み干して、少し大きな声で「ごちそうさまでした」とだけ言う。

「美味しかったです」はここでは言わない。
言ってもいいんですが、飲み干した空っぽの丼が代わりに伝えてくれます。

豚骨ラーメンの思い出

短く書き綴るつもりが、わたくしつい興奮して長くなってしまいました。
神奈川の方には「家系ラーメン」という、これまた美味しい豚骨ラーメンがございまして、こちらはほうれん草がスープに浮かんでおりまして、大変美味でございます。豚骨ラーメン、語り尽くせぬ思いが満載でございます。その話はまた後日、ということにいたしましょう。

大学生の頃に下宿していたアパートの隣に「ばってんラーメン」というお店がございました。
神戸市東灘区甲南町3丁目、忘れもしないラーメン屋さんでございます。
わたくしはその頃夜遊び三昧、放蕩生活を送っておりました。
休みの日、夕方に起きるととにかく腹が減っております、シャワーを浴びて、髪の乾かないままその「ばってんラーメン」に駆け込む、注文するのは、そうです。ラーメンとライス。

ご夫婦だったのかどうか定かではありませんが、お店を切り盛りする大将とおかみさんがいつも温かくて、わたくしの両親と同じぐらいの世代だったですかねえ、お金にほんの少し余裕のある時だけこのような遅い朝飯を食べに行っておりました。大学を辞めて上京するまででございますので、三年間ぐらいお世話になりました。

上京する直前にご挨拶に行きました。
ラーメンとライスを注文して、お世話になった御礼を述べて、その時初めて大将の息子さんも、東京で芸能のお仕事を志されていたというお話も伺いました。
最後に食べた「ばってんラーメン」、生まれて初めての旅立ちの前に、そのスープが沁みること沁みること。
名残惜しさを堪えてお会計を済ませようと思いましたら、ポチ袋がひとつ、わたくしの前に。

という話でございました。
もうこのお店は営業していないそうです。
どこでどうしていらっしゃるのか、それはわたくしには知る術がございません。
お元気でいてくださればいいなと、切に願っております。


最後まで読んでくださりありがとうございます。
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それではまた。


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