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シン・ゴジラを期待しちゃダメ 自己防衛 民間 人間ドラマ 大衆映画だよね『ゴジラ−1.0』


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 出兵していた敷島浩一は日本へ帰還するが、東京は焼け野原と化し、両親は亡くなっていた。人々が日々を懸命に生き抜いていく中、浩一は単身東京で暮らす大石典子に出会う。しかし、これから国を立て直そうとする人々を脅かすように、謎の巨大怪獣が現れて……

ぴあ

感想

 ゴジラ70周年作品であり、ゴジラ国内30作品目というダブルアニバーサリーな作品ということで発表時からとてもワクワクしていたのだが、一抹の不安もあった。それは監督が山崎貴であるということ。『永遠の0』や『ALWAYS』シリーズと素晴らしい作品を生み出した日本を代表するヒットメーカーである一方で、『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』『STAND BY ME ドラえもん』などの爆弾も送り出しているということも事実である。SNS上では賛否が入り乱れ、自分の目で確かめるしかないと劇場へ向かった。
 感想は一言で言うと、今までの不安を杞憂にしてくれた非常に満足度の高い作品だったということ。ゴジラが街を蹂躙する様やゴジラとの戦闘シーンは圧巻でゴジラ出現とともに流れるテーマソングと相まって鳥肌が立った。是非この感覚を劇場で味わってほしい。

迫り来るゴジラに震える

 今作の見どころはなんといっても圧倒的至近距離で描かれるゴジラの迫力である。軍艦高雄を沈める様や銀座で放つ熱線は鳥肌ものでこれだけでも見てもらいたいと思える。
 飛び出した背びれが引っ込むと同時に熱線を吐くというギミックはゴジラの核爆弾のメタファーというイメージを投影した形だという。それにしてもそのギミックがかっこいいのなんのって、また熱線による爆発の後に黒い雨が降るというのも核のイメージを確固のものにしている。
 ゴジラの襲撃によって人々が犠牲になるのだが、踏み潰される際にグチャという音はしながらも血が飛び散る描写はしないようにする恐怖と映画としての安全性のバランスが取れた見せ方になっている。
 最終決戦では映画『バトルシップ』さながらの海洋戦となっており、駆逐艦と戦闘機「震電」の映像は『アルキメデスの大戦』『永遠の0』を思わせるような山崎貴監督にしか作れないようなものとなっている。

シン・ゴジラとの比較

 やはりゴジラの新作が公開されると庵野秀明監督の『シン・ゴジラ』と比較されてしまうのは避けられないだろう。そこで『ゴジラ−1.0』と『シン・ゴジラ』の違いを考えていきたい。
 まず、政府と民間という違いである。『シン・ゴジラ』はゴジラに対する政府の対応や国家の機能という点にフォーカスを当てることでゴジラというフィクションと政府というリアリティのバランスがとても上手くとれていた。一方で『ゴジラ−1.0』は終戦直後の日本という時代背景なのでゴジラに対して政府の対応はもちろん軍事的な対策が困難であるため民間でゴジラに対峙しなければならない。
 そして次にドラマ性である。重複してしまうが『シン・ゴジラ』はゴジラという未曾有の危機に政府がどう立ち向かうかに重きを置いているためにキャラクターのバックボーンや人間ドラマというものが極端に少なく非常に淡々と物語が展開されていく。対して『ゴジラ−1.0』は民間主導ということから、ゴジラが出現している場面以外ではしっかりとドラマが展開されていた。キャラクターのバックボーンだけでなく、家族にフォーカスを当てることが今作の重要なポイントであったと考える。

まとめ

 観る前に感じていた不安を単なる杞憂と思わせてくれる素晴らしい作品だった。間違いなく今年を代表する一本になることは間違いない。山崎貴監督の代表作の要素も感じられてとても楽しめた。SNS上ではドラマパートで大幅減点などの意見を見るが個人的にはそうは思わない。ドラマパートこそ山崎貴監督の得意分野でありゴジラが出現するパートを繋ぐための良い潤滑剤になっていたと感じた。佐々木蔵之介の演技は若干クサかったが。
 少々メタ的だが、『シン・ゴジラ』の後に同じ路線で作ったとしても単なる焼き増しになってしまうので『シン・ゴジラ』を期待する方がお門違いなのではないだろうか、そっちの路線が見たいのならば平成ガメラ三部作を見た方が確実にいい。
 見るかどうかを迷っているのなら見ることをおすすめする。ぜひ劇場の大画面でゴジラの迫力と恐怖を体感してもらいたい。
 最後に、ラストシーンはもしかしてG細胞の伏線なのだろうか、もしそうだとすれば人類総ゴジラ化などと妄想は膨らみ続編も期待してしまう。

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