やれば出来んじゃん崇ィ!こういうのもっとちょうだい!ちょうだい!『ミンナのウタ』
感想
『忌怪島』につづき今年2本目の清水崇作品、忌怪島の出来が散々だったことから『ミンナのウタ』の期待度はかなり低かった。さらに、詳細が発表されればされる程にその期待値はどんどん下がっていった。多くのホラーファンがこう感じたことだろう「いや、GENERATIONSって、LDH主演かよ!」と。
こうして鑑賞前からどれだけ酷評してやろうかと自身の性格の悪さを発揮していたのだが、いざ観てみると「悪くない、いやむしろ結構いい」期待値が低い分高評価に感じているだけじゃないのかと感じる人もいるかもしれないが、そんなことはない。Jホラー黄金期を感じてしまったくらいには良くできていると感じた。もちろんGENERATIONSのプロモーションとしての側面は拭い切れないのは事実であるが、そこはそういうものだと割り切るしかない。BGMにGENERATIONS楽曲が使われているのも我慢しましょう。演技自体は特別どうという訳ではなかったのが救いである。
これ観たことあるやつ!
そうです。この作品で用いられているホラー演出の多くは過去の清水崇作品の演出です。といってもそのほとんどは『呪怨』シリーズなんですが。
まずはあの家、どうみても呪怨の家ですやん。中で起こる時空の歪みまでしっかりと再現されている。次に布団の中に潜り込んでるやつ、シャワーを浴びているときに手が出てくるやつ、これらの演出もしっかりと呪怨で用いられており非常にアイコニックな演出であるため皆もピンときたかもしれない。登場する少年の霊の名前も俊雄で呪怨に登場する名前と一致している。
人によっては呪怨の焼き増しかよ、と思われるかもしれないが久々に正統派なJホラーをスクリーンで見ることができるのはホラーファンとしてはかなり嬉しい「これが観たかったんだよ!」と心の中でガッツポーズをする程に。また、金字塔である呪怨の要素が強いことからしっかり怖いということは分かってもらえると思う。
どのシーンのことかは伏せるが一箇所めちゃくちゃ怖かったところがある。正直そこだけ見るためだけに劇場へ行ってもいいくらいにビビった。あれができるならもっとやってくれ清水崇よ。
アナログには魂が宿る
この作品では呪いの歌がこもったカセットテープによって聞いた人が霊に襲われるようになっているのだが、カセットテープというメディアを用いたのは個人的に非常に評価の高いポイントになっている。
タイトルの「アナログには魂が宿る」というのは、同じくホラー映画『リング』シリーズにおける呪いのビデオを例に挙げると、貞子の呪いの念がビデオテープに念写されたことで一連の騒動が起こる。もう一つ例を挙げるとするなら、『ドライブマイカー』の亡き妻の肉声が記録されているカセットテープである。主人公は妻の死に対する後ろめたさをカセットテープを聴くことで誤魔化している。
これらの例から、それは単なる舞台装置としての役割にすぎないと思う人もいるかもしれないが、ビデオテープやカセットテープといった”メディア”には記録媒体という意味以外にも”霊媒”という意味も持つ。このことから魂はメディアに宿り、さらにそれは人間との距離がより近いアナログなものに宿るのである。
まとめ
GENARATIONSのファンムービーという予想を大きく裏切った正統派Jホラー、メンバーが本人として登場していることから生まれる地続きのリアリティも良くできている。ツッコミどころはあるがそれはご愛嬌、劇場のライブ感であえて触れないというのが正しいと思う。GENERATIONSのメンバー以上に活躍していたマキタスポーツはほとんど主役と言っても過言ではない。あともう一度いうが、一箇所本当に怖いシーンがあるので是非ともそのシーンは見てもらいたい。
作品の内容とは関係ないが、恐怖演出の元ネタのほとんどが詰まっている『呪怨 白い老女』を予習または復習がてら見ることをおすすめする。
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