たにーん@住まい探検家

一級建築士、インテリアコーディネーター、三児の父。 住まいづくりを仕事にしてます。 設…

たにーん@住まい探検家

一級建築士、インテリアコーディネーター、三児の父。 住まいづくりを仕事にしてます。 設計から工事監督までを大手ハウスメーカーで経験してますが、まだまだ知らないことばかりなので日々住まいの学びを書き留めときます。 皆さんのnoteも覗かせて頂きます。

マガジン

  • 心地良い住まいのカタチを求めて

    私なりに住まいへの考え方やおすすめの建築材料をまとめておきます。

最近の記事

伊礼智の住宅設計作法を読んで

伊礼智さんについて・・・ 沖縄生まれで東京芸術大学大学院を卒業後、丸谷博男+エーアンドエーを経て伊礼智設計室を開設されている、住まい設計を主にする建築家です。 本やネットからの情報で勝手に書きますが、建築の標準化を始めとして住まい手にも作り手にも無駄のない自然な住まいを設計されている方だと思います。 今回も私なりに要点を3つに絞りまとめてみます。 ①ヒアリングは設計の手がかりを探す 以前、ヒアリングについても記事にしましたが、今回紹介する本から共感した部分をまとめさせて頂い

    • 陰翳礼讃を読んで

      陰翳礼讃とは 谷崎潤一郎の名作である東洋人の美意識について考察されている本であり、建築の分野から画家、音楽家の人にまで影響を与えている本です。 私なりに解釈し3つの要点について考えてみました。 ①美は物体そのものではなく、物体が作り出す陰影にこそある。 物体だけが存在していても美しさというものを感じることはできないと思います。これは当たり前のことですが、モノづくりを仕事にしていると忘れてしまいそうな事であり、本の読むと東洋人の価値観であることに気が付きました。 自分が考え出

      • ヒアリングは整理

        住まいのプランにおけるヒアリングとは・・・ ヒアリングとは住まいを建てる理由を聞くことです。 欲しい部屋の条件があるのなら、その条件の裏には生活のイメージがあるはずです。本当の目的を住まい手と一緒に考えることです。 ①数字では会話しない ヒアリングというと、この部屋が〇〇畳で、LDKは〇〇畳は欲しい。断熱性能はUA値〇〇で、耐震等級は3を確保したい。の様に、全体の金額を決めるための条件や、建築会社を定めるための条件を数字を持って判断することが増えているように思います。 実際

        • 安心をカタチにする

          構造安全性の確保とは・・・ 構造体は住まいのシェルターとして、堅牢で、経年変化の少ない、初期強度が持続する、長持ちする構造体が基本です。 【熊本地震から学ぶ】地震に強い家の構造的な対処 ①耐力壁の壁量は建築基準法の1.25倍を基本とし1.5倍を目標とする。 ②偏芯率(重心と剛心のズレ)は0.15以下にする。 ③耐力壁の直下率50%確保を目標とする。 ①耐力壁の壁量について 地震対策として、壁量の安全率をまず確保したいものです。 かと言って壁だらけで暗く風通しの悪い住まいとい

        伊礼智の住宅設計作法を読んで

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        • 心地良い住まいのカタチを求めて
          10本

        記事

          住まいの空気環境

          ①空気の温度と湿度の相関関係 空気は気温が高ければ多くの湿気を含むことができます。 また、温度が下がれば、湿気としてとどめておくことができず水になり、部屋の表面などに結露として現れます。つまり、室内で温度差が大きいと結露に結びつきます。特に空気がこもるような場所は要注意です。従って、北側の部屋、地下室、床下収納、ロフトやトップライト周辺は特に注意が必要です。その為には、空気を動かすことが大切で、その手法の一つが換気です。 特にトップライトが湿気の発生しやすい、水廻りで使用する

          心地よさをカタチにする

          空気の容積は大きく設計すること 容積の大きい空間は、温度、湿度の変化が小さく(空気は断熱材)、酸素の量も多く、熱、匂い、湿度、二酸化炭素などを拡散させ、それらの影響を最小限にします。 ①人は一時間当たりどれだけの空気量が必要なのか。 人間が事務作業程度の活動状態の二酸化炭素(炭酸ガス)発生量は、1人当たり20リットル/時(0.02㎥/h)室内の炭酸ガスの許容濃度を許容濃度は1000ppm屋外の空気のCO2は350ppmなので下記が1人当たりの必要新鮮空気です。 「0.02(

          心地よさをカタチにする

          セルロースファイバーの効能

          セルロースファイバーとは・・・ セルロースファイバーは植物、特に木材から取り出した天然の素材です。 天然の木質繊維の断熱材ですので、木造の構造躯体に最もなじみやすい断熱材です。セルロースファイバーは呼吸(空気、湿気の出し入れ)し、かつ調湿できる稀有な断熱材です。 ビニールハウス(グラスウールのように防湿層を作って、空気も湿気も通さない石油系の断熱材)にせず、かつ、断熱性能を発揮できる数少ない断熱材です。 原料は新聞紙を再利用するものであり石油で作り出すより遥かにエコロジーな素

          セルロースファイバーの効能

          ホウ酸が住まいを守る

          ホウ酸とは・・・ 天然に産出する鉱物で、酸素とホウ素が結合したもので、地球上の土中、海中のいたるところに存在する天然素材です。ホウ素は私たちの体の代謝や骨の健康、脳の機能向上にとっても、植物にとっても大切な必須元素です。 特に野菜や果実の育成には欠かせず、世界中で肥料として使用されおり、その使用料は年間6トンにも及びます。 ①安全性について 人体や哺乳類のように、腎機能のある動物への毒性は、大量摂取しない限り認められておりません。毒性は塩と同じと考えられる程度です。 ホウ酸

          ホウ酸が住まいを守る

          漆喰の効能

          ①同じ自然素材の塗り壁、珪藻土とどこが違うのか どちらも地球からの贈り物ですが、大きな違いはその原料にあります。そのことにより、空気中の二酸化炭素と反応し自力で硬化できる漆喰と添加物の力を借りなければ硬化できないのが珪藻土です。その添加物が自然素材か、化学物質なのかによって安全性が異なります。 ②炭酸カルシウム(石灰石)の特徴 炭酸カルシウム(石灰石)が酸化カルシウムに、そして水酸化カルシウム(消石灰)を経て石灰石に戻るまでの反応式は・・・ CaCO3 → CaO → Ca

          無垢木材の効能

          ①調湿作用 無垢の木には、ある程度まで乾燥すると、周囲の水分を吸放出して自らの水分を保とうとする性質が有ります。例えば周囲の湿度が高い時には空気中の水分を吸収し、空気が乾燥して湿度が低い時には自らの水分を放出することで、常に50%前後の湿度に調節してくれます。これを調湿作用と呼び、木が建材として加工されたのちもしっかりと生きている証拠でもあります。 ②リフレッシュ効果 木の家の玄関に、一歩足を踏み入れると、爽やかな木の香が迎えてくれます。この香りの正体はフィトンチッド。その香

          自然素材の恵み

          住まいは、古より身近にある建築資材で作ってきました。日本は森林国でしたので、木材を切り出して架構を、土をこねて壁を、土を焼いて瓦を、茅を刈ってきては屋根を、そして木を加工して床を作ってまいりました。 それはまさに、全て自然素材で作られておりました。しかし人口が増え、建築戸数が増え、手間のかかる自然素材だけではまかないきれなくなり、加工技術の進歩とあいまって、人口で資材を創り出すようになり、さらにバブル期を経て、早くて、安くて、均一で、見た目がきれいで、手間がかからず、メンテナ

          風の恵みが住まいにもたらすこと

          風通しの良い住まいは何故気持ちが良いと感じるのでしょうか。 人が感じる体感温度は、気温だけではなく、風速や湿度によって変化してしまう極めて曖昧なものです。ちなみに風速が1m/s増すごとに体感温度は1℃下がります。風によって汗が蒸発することによって気化熱を体表から奪うからです。 さらには、人が快適だと感じる空間の環境には湿度が大きく影響しているという事実も有ります。例えば30℃でも木陰で風さえあれば体から出る汗が蒸発してくれることによって涼しく感じます。反対に25℃であっても

          風の恵みが住まいにもたらすこと

          太陽光の恵みが住まいにもたらすこと

          地球が受けている太陽からのエネルギーは莫大なものです。 地球に到達した太陽光線の1時間あたりの総エネルギー量は、20世紀後半での世界中で消費されたエネルギーの1年間分にも匹敵するともいわれているほどの恵みを毎日受けているのです。 数字にすると日本では最大で約1KW/㎡のエネルギーになります。 実際の地球への太陽光線からの影響 また太陽光線のうち、 紫外線(短波長)はオゾン層で90%以上がカットされています。 赤外線(長波長)は大気により4割程度がカットされています。 そう

          太陽光の恵みが住まいにもたらすこと

          ひとり設計事務所の始め方

          実際の仕事の仕方から、節税方法、どのように仕事を獲得するか。さらに独立前の準備の仕方も書かれており、この本が有り能力と準備が有れば独立できてしまうと思います。 私とは目指す方向が違うので、個人的にはマネをする事にはならなそうですが、将来的に読み返すであろう本でした。 ↓書籍のリンクです。もし読んだらコメントください。 https://www.amazon.co.jp/%25E3%2581%25B2%25E3%2581%25A8%25E3%2582%258A%25E8%25A

          ひとり設計事務所の始め方

          プランニングの土台

          プランニングとは・・・ 今のところは住まいの間取りや基本計画を決定していくことであり、敷地の情報やクライアントの要望や費用のバランスを取りながら、クライアントの要望から読み取った建物への希望を寸法に変えてゆくことだと思っています。 そこでプランニングの中でも大切なのが、①土地の有効活用、②プランの魅力、③デザインの美しさ、この三点を支えるのが構造への知識だと思います。 ①土地の有効活用について まず、プランニングは土地を見なければ始まりません。最近ではグーグルマップやグーグ

          プランニングの土台

          日本の木造住宅の構造設計について

          編集 構造とは建物を支える骨組みのこと 現在の木造住宅では昔ながらの梁と柱を組み合わせた構造に、耐力壁と呼ばれる地震に耐えるための壁を取り入れた方法で多くの家が建てられています。特に最近では木造住宅の弱点になる接合部(梁や柱の交差するところ)へ金物を用いて接合させる方法が主流になりつつあります。この金物接合と耐力壁によって、木造の建物は固く地震に耐える様な設計を主に考えられています。 関東圏での住まいづくり 世界でも地震大国の日本において、住まい手として気になるのは1

          日本の木造住宅の構造設計について