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セルロースファイバーの効能

セルロースファイバーとは・・・
セルロースファイバーは植物、特に木材から取り出した天然の素材です。
天然の木質繊維の断熱材ですので、木造の構造躯体に最もなじみやすい断熱材です。セルロースファイバーは呼吸(空気、湿気の出し入れ)し、かつ調湿できる稀有な断熱材です。
ビニールハウス(グラスウールのように防湿層を作って、空気も湿気も通さない石油系の断熱材)にせず、かつ、断熱性能を発揮できる数少ない断熱材です。
原料は新聞紙を再利用するものであり石油で作り出すより遥かにエコロジーな素材であるとも言えます。
生産エネルギーもほとんどかからない自然素材(新聞紙=木材)です。

①断熱性能について
熱伝導率0.040kcal/m・h・℃で、グラスウール(16K)やロックウール(40K)とほぼ同等です。
イメージをつきやすくする為に各素材の数値を見てみましょう。
熱伝導率(伝わる熱の量)が0.06kcal/m・h・℃以下を断熱材と呼びます。
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鉄      : 52.00
コンクリート : 2.40
ALCパネル   : 0.17
杉、桧、松  : 0.12
藁畳     : 0.11
硬質ウレタン : 0.024
フェノール  : 0.020
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セルロースより断熱性能が勝る、硬質ウレタン等の場合は熱伝導率から考慮すると、セルロースの充填断熱の約半分の厚さがあってはじめて同等の断熱性能というになります。

②調湿性能とその仕組み
一般的に繊維系断熱材は空気層を確保することで断熱性能を確保しています。しかし空気層の湿度が高まるにつれて断熱性は下がっていきます
その理由は水と空気の断熱性能が大きく異なるからです。水は空気の20倍も熱を伝えやすい物質です。
これに対してセルロースファイバーは木材と同様にセルロースの細胞膜に気体状の水分子としてセルロース分子と結合(結合水)して存在し、飽和点に達しない限り細胞の外に出ることはありません
実際にどのくらい調湿が可能かというと、セルロースファイバー(木材)の繊維飽和点が30%程度です。さらに40坪の住まいで1トン程度のセルロースファイバーが使用されるので、理論上は1000kg×0.3=300kgの水を出し入れができることになります。ただし、セルロースが常に乾いているというわけではないので、気乾状態(空気中に放置した時の状態)では15%程度は元々水を含んでいると考えると、数値上は150kg/棟となります。
ちなみに実験地はその半分以下の1kgで66gなので1000kgで66kgです。

③セルロースファイバーの特徴
・材料の詳細
原料は新聞紙を再利用している分が85%を占めています。
そのほかはホウ酸天然パラフィン(ベビーオイル)です。
・燃えないか
ホウ酸が添加されており火にも強いです。
バーナーで加熱しても表面が炭化するのみで燃えません。
黒煙や悪臭、有害物質などの放出も有りません。
・カビは生えないか
ホウ酸の効能のおかげでカビや害虫(ゴキブリなど)の発生も抑制します。
・防音性能
発泡ウレタンなどの硬い断熱材では室内の反響音も大きく聞こえます。
石油繊維系の断熱材は柔らかい分硬い素材よりも防音性が高いです。
セルロースファイバーは柔らかいことに加え、繊維の中にも細胞がある分、石油系の材料よりも更に防音性を持ちます。音の透過損失は40db程です。
・施工方法
断熱材は施工が一番のポイントとなります。石油系の断熱材は施工性が良
く、大工が施工することが多い材料です(大工の技量により断熱性能も上下します)。発泡系の断熱は専門者によって断熱工事が行われる分、断熱のプロの手によって品質の確保が行われます。セルロースファイバーも材料を熟知した専門者によって工事が行われます。更に使用料のチェックや画像による検査も行われます。断熱材の中でも施工が難しい材料の分、丁寧に扱わなければならない材料であると言えます。
・環境への配慮
各断熱材の製造エネルギーを比較すると、プラスチック系が900~1400kWh/㎥に対しグラスウールが500kWh/㎥程度、セルロースファイバーは14kWh/㎥と極端に少ないのが特徴です。
断熱材を作るのにもこれほどのエネルギー使用量の違いがあります。
・実績について
欧米諸国では断熱材のシェアはセルロースファイバーが35%にも達しております。日本では1978年から国産化が始まり、1982年からは結露を防止する断熱材として重点的に施工され始めておりますが、その施工の難しさからまだまだメジャーな断熱材とはなっておりません。

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