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”ペット防災”をSIerの新規事業として考えた

はじめまして。NTTデータのデザイナー集団「Tangity」の武長です。

突然ですが、みなさんは今、誰と暮らしていますか?
みなさんが急用、たとえば残業したり、職場の付き合いで飲みに行ったり、あるいは不慮の事故で電車が止まったり…。そうしたとき、連絡を取りたい相手としてどんな顔が思い浮かぶでしょうか?

子ども、パートナー、ルームメイト…etc

なにか困ったことが起きたとき、ことに社会規模の災害などが起こったときに、私たちが気にかけ、守りたいと思う相手が人間だけとは限りません。

今回は、わたしが一人のBizDevとして初めて事業化にトライし、壁に直面した「ペット防災」にまつわるお話をご紹介したいと思います。

いまこそペット防災!

やや遡って2012年、宮城県の大学に進学したわたしは、震災復興に取り組む地域の大人や同年代の仲間に囲まれた学生生活をおくっていました。そうした出会いのなかで、ペットを連れた避難で震災当時に苦労した方のお話を聞く機会があり、ペットと飼い主の生活が災害によって大きな影響を受けることを、その頃はじめて知りました。

また社会全体でみても、2010年代後半まではペットと防災・避難の関係性を考える機会はまだ少なかったといえます。先の熊本地震では避難所毎のペット「同行」「同伴」の考えかたが正確に伝わらないことで飼育者が混乱したり、長期間の車中泊をおこなったりするケースが報じられるようになり、それ以降ペットを連れて避難することの大変さが世の中が広く知られるようになったともいわれています。

こうしたきっかけからペット防災の重要性を知ったわたしは(この手のテーマには珍しく自らは愛犬家でも愛猫家でもないものの…)社内制度を利用して、ペットと災害を取り巻く問題を解決できるようなビジネスの立ち上げを目指すに至りました。

ありがたいことに、多くの飼い主やペット防災に取り組む企業・支援団体の方々との意見交換の機会に恵まれ、ペット防災事業の意義を強く感じていたわたし。しかしながら、新規事業化を目指すにあたり2つの難題にぶつかりました。

その1:有事の備えはスケールするのか?

熊本地震を経て、環境省が「人とペットの災害対策ガイドライン」を公開するなど、ペット防災に関する基本知識の啓蒙は進みつつあるといえます。一方で、2022年のアイペット損保「ペットのための防災対策に関する調査」によれば「最寄りの避難所がペットを連れて避難できるか」を知らない飼い主が74.6%にのぼるなど、今なお飼い主側の有事への備えは十分でないことも明らかになっています。

このような背景から、身近な避難先がペット同行OKなのかを確認すること、そして同伴が難しい場合、親戚に頼ったり、時にはホテル・民間避難所などを活用して避難先を確保することが、飼い主とペットのために重要であり、そのための情報提供やマッチング機会の創出が必要とされるのではないかと、わたしは考えました。さっそく仮説をまとめてインタビューに回り、

「避難先に関わる課題はどうやらありそうだとわかった…!」
「聞き取り内容をベースに発散した枝葉の課題やアイデアベースの解決策もそぎ落として、いい具合にコンセプトがまとまってきた気がする…!」

意気揚々とビジネスプランをまとめましたが、ここで大きな壁が…。それは「NTTデータで取り組む意義」でした。(今となってみれば当然のことなのですが…)

ペット防災にはたしかに社会的な意義がありそう。しかしこれはトータル2,000億円にも満たない防災情報・サービスの市場よりもさらにニッチな領域です。「なぜSIerのNTTデータがペット事業をやるのか?」「(大企業として狙うに足る)マーケットポテンシャルは十分にあるのか?」と問われると、合理的な回答は難しい…というのが当時の結論でした。

その2:「いつかのために」を今やれるのか?

また、防災の基本的な考え方は「なにか起きたときに備える」ということ。つまり、いまの日常生活のなかでは大きな困りごと(=”ペイン”)を抱えている方が決して多いわけではない、ということも悩ましい点でした。実のところ、本質的にはこれこそが乗り越えるべき最大の壁だと思います。

たとえばインタビューのなかで”かわいい我がワンちゃんのためならいくらでも尽くしたい”と好意的なトーンでご意見をくださるご家族がいらっしゃる一方で、さらに踏み込んで会話を重ねていくと、

「実はそんなに…ピンと来てないのかも。最近、愛犬の肌の調子が悪いので、そっちの方が気になっている。
「災害が起きた場合、むしろ不確実な状況下で慣れない環境に送り出すほうが不安かも。なるべく一緒にいる方法を考えたい

といった本音も聞こえてきたり。手元のアイデアを検証する側としては不都合ながらも、こうしたコメントがひときわ印象に残っています。

「正当に怖がることはむづかしい」寺田寅彦

そして現在…

壁を越えられず、残念ながら事業化には至らなかったペット防災事業。しかし、いまもゆるやかではありますが、一部のインタビュイーの方々とは時折情報交換をしています。とりわけ「防災」というテーマに関心を持つ方の期待や、日々支援に取り組んでいる方々の思いは非常に大きく、ささいなきっかけから検討を始めた私ではありますが、このテーマを形にしたいと、今なお思っています。今回ぶつかった「なぜSIerが…?」「いつかの備えを今意識するには…?」という部分についても、また別の記事でより踏み込んでご紹介できたらと思います。

今回のお話は形になりきっていない、ごくささやかな事例ですが、NTTデータでは新規事業づくりへの挑戦がカジュアルにおこなわれているんだと、実例ベースで知っていただくきっかけになったなら何よりです。実際に社内でも幅広い分野で(より熱量高く、イケてるやり方で)新たなチャレンジに取り組んでいる仲間たちがすでに沢山います。こうした活動に興味のある方にとって、NTTデータはきっとますます魅力的な環境になっていくのではないでしょうか。

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